第28話 男女ふたりで遊びに行ったらデートですか?


 かすみさんの柔らかさといい匂いにドキドキした翌日。かすみさんの娘の華音とデートに行く。

 文字に起こすと最低男だな……まあ実際にはかすみさんの愉悦に振り回されて、華音と日頃のお礼に遊園地へ遊びに行くだけなんだよなぁ


 午前8時50分……華音との待ち合わせ10分前、駅のベンチでボーっと道行く人を眺めながら待ち人の到着を待つ。


『駅で待ち合わせをやってみたいです』


 華音のリクエストで家から繰り出すのではなく、自宅最寄りの駅での待ち合わせとなった。


「すみませんお待たせしました!」


 普段からは珍しいジーパン姿にボアジャケットを着こみ、黒のスニーカーに黒のベレー帽を合わせたコーディネート。新鮮な印象の華音が小走りで駆けてくる。


「別に俺も今来たところだ。それに、遅刻ってわけでもないんだから気にすんな」


 お決まりの言葉で返す。実際元カノのいよなとデートの待ち合わせをしたときは、だいたい10分は待つのがデフォだった。それと比べると早い早い、時間内に来るだけ好感が持てる。というか華音が遅刻とか考えられない。


「くすっ、一度やってみたかったやり取りですね」


「実際やってみてどうよ?」


「なにかくすぐったいですね。こうドラマをやっているような?」


「そのうち慣れるだろうさ」


「そのうちですか、つまり何度も待ち合わせをする仲になるという事ですねわかります。つぎは私が待つシチュエーションもいいですね『ごめん待ったか?』『いいえ今来たところですよ?』『嘘つけこんなに手が冷えてるじゃないか』『あっ』みたいな?キャー!いい!いいですよそのシチュエーションいただきです!」


おおう、久しぶりに暴走してらっしゃる、


「おーい華音ー、かえ「何ですか?」帰ってきたな」


なんか定番のやり取りになってきたな……



「華音はあの遊園地って行ったことあるのか?」


 今日遊びに行く遊園地は、ここいら辺の中高生の男女が遊びに行く際の定番のデートコースになっている。

 実はいよなとの初デートがここだった。


「小学生のときに当時のお友達と家族で行って以来ですね。中学進学以降は男子とはなかなか遊ばなかったので……」


 そんな「氷姫」が男連れで行くわけだ。暴動起こらねーかな?大丈夫か?


 まあ近頃はウチの学校の生徒を中心に、華音と俺はワンセットで括られるようになったきた。

 あのヌメッとした殺意ある視線……(刺すような視線なんて生温い。ホントの殺意は纏わり付く)を向けられることが減ってきたのは、単純に精神衛生上ありがたいことだ。


 だけど逆に女子を中心に生暖かい視線が降り注がれるようになった。

 女子連中にとっては「氷姫」の恋バナは美味しいお話のネタみたいだ。一部の女生徒は「お姉さまがー(泣)」と悲嘆に暮れてるそうだが……


「なら随分久し振りになんだな」


「はい、ですのでとても楽しみだったんですよ?」


「じゃあいっぱい楽しませるさ、任せとけ」




 現在9時53分、遊園地前にはお母さんが抑えておかなければ、走り出してしまいそうなほど元気いっぱいのガキンチョを連れた家族連れ。

 クリスマスまでに連れて来た女の子に告白かまして、ハッピーなクリスマスを迎えようと目論む男と、何かを期待してるっぽい女の子。

 グループ交際でひとり抜け駆けしてやろうと牽制し合うヤロー共と、そんなヤロー共の金で純粋に遊園地を楽しもうとしてキャッキャッしている女子連中。

 あと普通のカップルもそんな愛憎劇を尻目にシレッと一定数いる。


「もうすぐ開園時間だけど、何から乗るよ?いきなりジェットコースター行っとく?」


ちょっと煽り気味に言ってみると、


「そうですね……行っときましょうか!」


言うんじゃなかった……


 この遊園地の一番の売りは、走破全長:2425メートル 最高高度:92メートル 最高時速:233キロ とすべてが世界トップレベルのジェットコースター「ニバンセンジ」で、今乗ってるのがそれである。しかも最後尾という一番スピード感を感じることが出来る席……へん!怖くねーわい!ホントだぞ!


「しかしこの最初の恐怖心を煽るカタカタ音とスピードの遅さ来るものがあるなー」


「そうですねーワクワクしますね!」


「……そうね」


おうふ、本気でわくわくしてらっしゃる……


はい、先頭がもうすぐ最高高度に到達しますよー。

はい、到達しましたよー。

はい、スピードが乗り……うきゃーー!




「俺、生きてる?」


「楽しかったですねー♪」


 本当に楽しそうで何より……

 いよなもそうだったけど、女子って絶叫マシン好きだよなー。三回連続で乗せられたときは吐くかと思ったわ……

 

 その後、ブランコがクルクル回って遠心力で真横になる乗り物や、コーヒーカップがクルクル回って酔うのや、お馬さんがクルクル回るのに乗りました。なんかこいつクルクル回るの好きだな……


 ひと通りクルクル回るやつを堪能して満足したのかちょっと休憩。華音をベンチに残してお花摘みに。

 こういうときラブコメだと連れがナンパされるんだよなー。

 まあそんなベタなことも早々起きな……はぁ、起きてるよ……ラブコメさん仕事しすぎだよ……


「カノジョ可愛いね!俺等と遊ばない?」


 嘘……だろ?今どきそんな口説き文句使うやつが、この令和の日本に居るのか?見ろ、お仲間も引いてるぞ?


「連れがいますので結構です」


「その子も一緒に遊べばいーじゃん!」


嫌がらてるって気づけや、


「なに?おにぃさん、俺とも遊んでくれんの?」


 割って入って華音を背中に庇いながらおにぃさんに話しかける。


「なんだてめぇは」


「この子の連れだよ。おにぃさんも、もういいでしょ?」


「ちっ男連れかよ。てめぇ覚えてやがれ!行くぞてめぇら」


 ……マジか?ここまで昭和テンプレかますやつが居るのか?サイン貰っとこうかな……お仲間さんも呆気にとられてるわ。


「悪いな華音、気が回らなかった。そりゃあナンパもあるわなぁ」





〜 広宮 華音 Side 〜



 キャー!漫画みたいな展開です!あの昭和テンプレの方、グッジョブです!

 しかし、昭和テンプレの方を褒めはしましたが、やはり男性数人に囲まれるのは女性としては怖いものです。

 そこで颯爽と現れてスマートに助けに入る羅怜央くん!ついついキュンとしてしまいました。


「いえ、怖かったですから助けてくれて嬉しいです」


 照れてる羅怜央くんもさっきとはギャップがあって可愛いですね。


 さて、ハプニングはありましたが羅怜央くんがスマートに解決してくれて事なきを得ましたし、そろそろお昼ご飯にいたしましょう。

 本当ならお弁当を作ってきたかったのですが、調べたところお弁当の持ち込みは禁止されているようでして泣く泣く諦めました。


「お弁当は作れなかったのは残念ですが、フードコートも初めてなのでちょっと楽しみです」


「俺は華音の弁当食べたかったけどなー。まあ決まりなら仕方ないわな」


 私のお弁当が食べたかったなんて嬉しいこと言ってくれます。そうだ、お昼に羅怜央くんの分のお弁当も用意して学校で食べていただきましょう!


「そうですか……では今度お弁当を作りますね!」


「今度ってそれ学校?さすがにまずくねーか……」


「楽しみにしてくださいね♪」


 美味しいお弁当を作りましょう!


 フードコートのお食事は、まぁ……普通?でした。

 気を取り直して食後のコーヒーをいただきながら午前のことを話題にちょっとお喋りです。


「しかし、華音があんなに絶叫マシン好きだとはなー」


「あのスピード感がたまりませんよね!」


「ははは……」


 羅怜央くんも楽しそうに笑ってますからお昼からも絶叫系を中心に回りましょう。


 さぁ楽しみましょう!




◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


ふたりの初デートです。

ラブコメさんがお仕事して昭和テンプレくんを召喚しました。なんか書いてて楽しかったですね(笑)


そしてなんと次回に続いてしまいます。


次回も読んでいただけると嬉しいです。

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