第18話 嫉妬 ✕ ジェラシー
「おつかれさまです!今日も凄かったです根都先輩!」
「はいよ、サンキュー。おつかれー」
「おい羅怜央、明日はミーティングだけだからってサボるなよ?」
「うるせぇ分ってんよ銀髪ヤロー」
「辛辣ぅー」
うちの部は遠征とかの長距離移動時以外は試合会場に現地集合・現地解散のため、試合終了後はダウンと簡単なミーティング後すぐ解散となる。そこら辺の刈り上げゴリラの管理は良い意味でゆるくてありがたい。
とはいえ顧問の刈り上げゴリラとキャプテンの仁は、俺には分からない用事が有るようで学校まで行かなきゃいけないようだ。大変だな……やっぱり役職とかなるもんじゃないなー、仁に押し付けて正解だった。
「では帰りましょうか?根都くん」
この間刺した釘が思いの外刺さってくれたようで、仁など事情を知っている人以外の前では名前呼びを控えるようになった。が、その分並んで歩くときの距離感が半歩近付いた気がする。
「今日も勝てて良かったですね。羅怜央くん?」
しかも、皆から離れた途端に名前呼びに戻すんだよなぁ。
「ああそうだな。ここだけの話、今絶好調で負ける気が全くしないけどな」
「くすっ、油断大敵ですよ、好事魔多しって言いますし気をつけて下さいね」
ありゃ釘刺されちゃったな。次は準決勝、ここまで残れば地区大会に行ける。ウチの地区からは二校全国へ行けるから、地区大会は決勝まで残れば良い。去年は県・地区共に準決勝まで勝ち進んだもののそこで力尽きた。今年は全国までノンストップで行ってやる。そして今はホントに負ける気がしない。確かに油断大敵だな……
「せいぜい気を付けるさ。それで買い物行くんだよな?」
「はい、みっともなくもお米が本当にギリギリでして。試合終わりですが荷物持ちお願いしますね」
「はいよ、おまかせ下さい。奥さま」
「お・く・さ・ま!奥さまですか!なかなかの破壊力です!羅怜央くんの奥さま……いい響きですね。しまった録音!録音するのを忘れてました。羅怜央くんもう一回言ってくれませんかね?」
おぅしまったスイッチを押してしまったようだ。再起動・再起動っと。
「華音また心の声が「違いますよ?何のことですか?」あぁ再起動ありがとう」
「コホン……それと、お夕飯のおかずの材料も買って帰りましょうか」
「今日の晩メシなんだ?」
「実は実家にお肉が大量に送られてきまして……もし良かったら消費を手伝ってもらえないかと、母からも言付かっております」
なんか嬉しい申し出と不穏な言葉がセットで飛び出してきたが、不穏な言葉の方は今回も安定のスルーだ。
突っ込んだらやぶ蛇になりそうな気がするんだよ。なんかドロ沼に嵌まってる気もするけど、大丈夫だ対応は間違っていないはずだ。
それより申し出の方だ。おふくろのやつが、今のうちから遣り繰りを覚えるいい機会だと、仕送りを最低限にしてケチってやがる。なのでひとり暮らしを始めてからそんなに贅沢は出来ていない。
最近は華音が来てくれるようになって、上手く遣り繰りしてくれているようで余剰分をプールしてくれている。この間見せてもらって、あの仕送り額でどうやって余剰を出せるのかと戦慄した。
つまり最近はそんなに肉を食う機会が無い。育ち盛りの高校生男子としては死活問題である。
そこにもたらされたかすみさんの申し出。それはもっけの幸い、渡りに舟、地獄に仏である。
ふたつ返事で有り難く申し出を受けることにした。その返事を受けて晩メシはすき焼きに決まった。焼肉用の肉もあるがそれは別の機会にとなった。
「羅怜央くんは春菊大丈夫な人ですか?」
「大丈夫大丈夫、なんなら好きまであるから」
「それは良かったです。私も春菊好きなので、もしお嫌いなら困ってしまうところでした」
「そうだ、ついでだから具材の好き嫌いやら、これは入れる入れないやらの擦り合わせしとこーぜ」
〜 広宮 華音 Side 〜
まさか羅怜央くんのお家では、すき焼きに玉ねぎを入れるとは。すき焼きの奥の深さと懐の深さを感じてしまいます。
何より羅怜央くんのお家でのレシピです、最大限採り入れる事を考慮しなければなりません。まぁイメージしてみると悪いイメージは湧かないので、未体験で慣れてないから口に合わないということにはならないのではと思います。
それ以外にはお互いに味の嗜好が似ていることもあり、スムーズに擦り合わせができました。
しかし、こうやってひとつひとつ好みや苦手なものを擦り合わせていって、ひとつの家族になっていくのですね。……キャー!言っちゃいました!家族、つまり夫婦ですね!あぁだめよ気が早いわよ華音、外堀は少しずつ埋めていってはいますが、まだまだ先は長いのです。浮かれず気を引き締めて行かなければいけません。ですが、今はいいでしょう。……玉ねぎを投入することを主張するときの羅怜央くんの顔、キャー!もう鼻血が出るかと思いました!可愛過ぎです……あっ思いだしたらヨダレが……じゅるり。
コホン……羅怜央くんは
普段の食事をコンビニ弁当やお弁当屋さんのものなどで済まそうとすると確かに足りません。しかし、自炊をしたりスーパーの割引弁当を狙ったりすれば、かなり余裕のある設定になってるように見受けます。
本当に
さぁお夕飯の献立も決まりましたし、羅怜央くんの好みも一つ知る事が出来ました。お買い物を済ませてしまいましょう。
「それで羅怜央くん、そもそも関東風と関西風どっちにしますか?」
「そりゃあもちろん……関」
〜 根都 羅怜央 Side 〜
買った荷物を両手に持ってスーパーを後にする。
中身はお米10kg✕2、味噌✕2、醤油1リットル✕2である。女の子が持って帰れる重さではないとは思う。思うがこっちの腕もプルプルいってる、レジ袋が手のひらに食い込んできて痛いし。
「米は分かるけどさぁ、味噌と醤油って今日買う必要あったか?」
「買う必要はありませんでしたけど、丁度いいですしまとめて買っちゃおうかなーと。やっぱり男の子ですね頼り甲斐ありますよ」
澄まし顔で悪びれずに言ってのけやがった。華音も他の具材を両手に抱えてるからあまり強くは言えない。
「体の良い荷物持ちだろが!」
「そうとも言いますね。でも頼りにしてるのは本当ですよ?だから頑張ってくださいね」
「くそ!仁が居ればすき焼きで釣って全部持たせるのに!」
「あっそうですね、新くんも呼びますか?」
えっ?なんて恐ろしい事を言ってんだ?
「駄目だあいつにタダで食わせる肉はない。てか、あいつ呼んだら肉が無くなる」
「またそんなこと言って、お肉はいっぱい有りますからお裾分けしませんか?」
「えー労働なしは悔しいな。呼ぶの次回にして一仕事させようぜ!」
「くすくす、そんなことばっかり言って、じゃあ焼き肉のときにお呼びしましょう。」
俺の名案にくすくす笑いながらも呆れていると、何かを思いついたように、
「それでしたら沙織ちゃんも呼んで、四人で焼き肉パーティーでもしませんか?」
小首を傾げて提案してくる。前に会ったのが二週間前と結構経っている、
「そういえば、その後安達さんとは会ったりした?」
「いえ……メッセージのやり取りはしてますが、なかなか会えてはいないですね」
それなら会ったりしたいだろう。せっかく仲良くなれた子だ、こういう機会に会っておいたほうがいいだろう。
「そうだな、俺もあの日会ったっきり会ってないしこの機会に呼ぶのも良いかな。俺からも仁に言っておくから、華音からも安達さんに声掛けしてもらっていいかな?」
華音にも声掛けをお願いしたら、驚いた顔をしてこちらを凝視したあと、
「どういうことでしょう?これはどう解釈したら良いのですか?まるで羅怜央くんが沙織ちゃんに会いたがっているように聞こえたのですが、そういう解釈で良いのですか?なんですか介錯してほしいのですか?フッフッフ私のものにならないのならいっそ介錯しちゃいましょうか?肉だけに憎たらしいですねなんちゃって……」
あれー?またスイッチ入れたみたいだけど、なんかいつもより闇を感じる。
「華音どうした。なんかいつもより怖いぞってあれ、全部言えた?」
いつものインターセプトが入らない?
〜 広宮 華音 Side 〜
「そうだな、俺もあの日会ったっきり会ってないしこの機会に呼ぶのも良いかな…………────────
えっ?えっと……これはどういうことでしょう?
「どういうことでしょう?これはどう解釈したら良いのですか?まるで羅怜央くんが沙織ちゃんに会いたがっているように聞こえたのですが、そういう解釈で良いのですか?なんですか介錯してほしいのですか?フッフッフ私のものにならないのならいっそ介錯しちゃいましょうか?肉だけに憎たらしいですねなんちゃって……」
やっぱり可愛らしい女の子の方が好きなのかしら?
私を見ないそんな瞳は要らないわよね?クスクスクス
ふぁっ!いけない!ふぅ……フッフッフ危なかったこれは小粋なジョークも出るってもんです。危なくフォー○の暗黒面に落ちるところでした。
「華音どうした。なんかいつもより怖いぞってあれ、全部言えた?」
羅怜央くんも私の闇を感じ取ったみたいで、恐怖に慄いてるようですね。
「何でもありませんよ?羅怜央くんも荷物重たいでしょう?さぁ先を急ぎましょう」
彼を安心させるためににっこりとほほ笑んで帰宅を促します。が、羅怜央くんはナニカに怯えるように顔を強張らせて「ハイハヤクカエリマショウ」と震えながら返してきました。
変ですね?確かに去年の私でしたら抗う術もなくフォ○スの暗黒面に堕ちていたかもしれませんが……伊達や粋狂でカノジョ持ちの男の子に、半年以上も恋をしていた訳ではありません。このくらいの闇、簡単に飲み込んで見せますよ?
「沙織ちゃんを呼ぶのはお任せ下さいな。なので羅怜央くんも新くんの方お任せしますね?」
「はいお任せ下さい。だから○さないで下さい。てか怖ぇーよマジで」
羅怜央くんのお宅に到着するまで私は終始朗らかな笑顔でいましたが、何故か羅怜央くんはずっと怯えていました。
羅怜央くんのバカ……
◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
華音さんが危なく○ォースの暗黒面に堕ちるところでした。
もし墜ちてたらタグにヤンデレが付いていました。
羅怜央くん危なかったですね。
フ○ースと共にあらんことを……
ちなみに作者は随分昔に観たきりでS・Wの内容は覚えていません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます