第22話 地区大会初戦 ンドバシュ回じゃないよ!
試合当日の最適な起床時間には諸説ある。試合開始9時間前が良いとか6時間だとかいや4時間だ、はたまた12時間前起床がベストだとか様々だ。なので俺は体感的に調子が良かった6時間前起床を行っている。
つまり9時頃に試合開始なら3時頃に起床するわけだ……これに最適な睡眠時間を考慮すると、説明は割愛するが大体19時頃寝なきゃならない計算になる。
……寝れるわきゃーない、健康な男子高校生を舐めんな。夜ふかしは出来るけど早寝なんかできるか。
ということで現在21時17分、最適な起床時間はできるだけ守るようにしている俺としては、流石にそろそろ寝なきゃいけない時間帯。しかしそんな時間帯だとしてもやらなきゃいけない闘いがここにある。
『だから、明日の朝は普通に来て良いよ』
『いえしかし、そんな時間に起きられますか?』
『起きれる起きれないの問題以前に、そんな時間に夜道を歩かせられるか!』
『でしたら、今からそちらに伺って泊まらせていただいてから、羅怜央くんを起こすというのはどうでしょうか?』
『なんでそうなる!最悪いつも通りの時間には起きられるから大丈夫だ』
『いえしかし心配です。以前も二度寝してましたし』
『大丈夫だから。それにそろそろ寝ないとなんだわ。だからこの不毛なやり取り終わろうや?』
『分かりました。明日もいつも通りの時間に行きますね?』
『ああすまんな、気を使ってくれたのに』
『いえいえ、私が勝手にやろうとしたことです』
『じゃあ寝るわ。おやすみー』
『おやすみなさい』
メッセージを終了しアプリを閉じる。念のためアラームの設定を再確認、よし問題なしちゃんと3時にセットされてるな。
しかしまさか起こしに来ようとするとは……今までの試合が午後開始の試合ばかりだったので、こんなやり取りは初めてだったけど……疲れる。
「まぁいいや……寝よ」
おやすみなさい……グー……
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi……
「うどんじゃねーよ!!」
夢を見て跳ね起きたらアラームが鳴っていた……うむしっかりと起きれた。どんなもんだい。
眠気を覚ますためにシャワーを浴びて、ついでに歯磨きもやってしまおう。
完全に目も覚めたし、さてなにしようとコーヒーを嗜みながら思案にくれる。
自然今日の相手の事を考えてしまう。今日の相手は去年当たったところだ、そりゃあ去年と今年ではチームは違うがそんなに強いという噂は聞かない。まあ順当に勝てるだろう。
やっぱり問題なのは決勝戦で当たる予定のアルファポリス学園だな、去年も勝てなかったし今年のチームも評価が高い。
負ける気はしないけど、俺だって不安はある……3品と15石の穴を埋める人材が育っていない。
相手はなんたって連続で全国二位になる学校だ、この穴は突いてくるだろう。
その時俺はカバー出来るものか……
気がつけば日も昇って朝になっていた。玄関の方でガチャガチャッと扉のカギを解錠する音がして、制服姿の華音がリビングに入ってきた。なんで制服?
「羅怜央くんおはようございます」
「おはよう華音、てかなんで制服?」
俺の記憶が確かならば一般的には今日は休日のはずなのになんで?
「応援に行くのに制服じゃなくても良いんですか?」
「いやまあ制服で来るもんなんだろうけど……てか朝イチの試合だし結構遠い会場なんだが来る気か?」
「はい、昨日から元々そのつもりでお話してましたし、私も観に行きたいですし。行っちゃ駄目ですか?」
観戦していいか確認してくる華音、うーんぶっちゃけ応援に来てくれるのはありがたい。
「氷姫」の応援は部員のモチベ向上に絶大な効果があるのは前回で立証されてる。
「迷惑でなければ来てくれるのはありがたい。皆張り切って頑張るだろうし」
「みなさんですか……羅怜央くんは張り切ってくれませんか?」
「ん?もちろん張り切るが?」
だって皆張り切るから、俺も併せるために張り切らなきゃいかんとです。
「だったら……嬉しいです」
「氷姫」は手を合わせてはにかみながら嬉しそうに囁いた。
時間を見たら集合時間までギリギリになっていた。
「時間やべーからもう行くわ。試合会場って分かるか?」
「はい、沙織ちゃんと一緒に行きますので大丈夫ですよ」
「安達さんも来るのか。なら仁も張り切るだろ……それもウザいな」
「くすくす、頼もしいんじゃないですか?」
「あいつは程々に張り切るくらいで丁度いいよ。じゃあまじヤバイからもう行くな」
「はい、いってらっしゃい。また後ほど」
華音に送り出されながら駅に向かって歩き出した。
今回は他県まで移動しなければならないため、学校最寄りの駅前に集合して集団行動になる。
「よーし全員揃ったな?では出発するぞ!集団行動だから周囲の方々に迷惑かけんなよ!」
「うーい」
ほぼ毎日会っているはずなのに、久しぶりにあった気がする刈り上げゴリラの号令一下、ゾロゾロ男子高校生の集団が歩き出した。
「勝ち上がるのは良いけど、この集団行動だけは何とかならないかな?結構恥ずかしいから……」
「学校もバスくらい用意しやがれってんだ」
「ウチ等県下でも強豪校だと思うんだけどなー」
学校のわが部に対する扱いの悪さを仁とふたりして批難していると、
「すまんな……俺からも言ってはみたんだがな……」
刈り上げゴリラがすまなそうにこちらへ寄ってくる。
「コーチのせいじゃないですよ!それで学校側はなんて言ってるんですか?」
「三回戦まで残ったらバスを出してくれるそうだ」
ゴリラいやコーチがニヤッと笑いながら確約してくれた。
「ナイスコーチ、楽勝!」
「次の会場は近くだから実質次の遠征はバスでだな!」
「喜べ一年どもコーチのおかげで次からはバスだ!」
「あざーす!」
「やかましい!!周囲の方々の迷惑だろうが!!」
ゴリラが騒ぐ俺等を諌めて一番でかい声を出してた。うるせーよ。
会場に到着して陣地も確保、試合の準備を始める。
「よーし準備出来たらアップ始めろー。すぐ試合だぞー」
「うーす!」
仁が全体の指揮を執っている。俺も素直に言うこと聞くかー。
「仁くーん」
ん?女子の声が聞こえる?
声の方に振り向くと、そこには制服姿の華音と安達さんが手を振っていた。
周囲がザワッとざわめく、
「「氷姫」と……誰だあの美少女?」
「なんか今キャ……主将のこと呼んでたぞ?」
「じゃあ仁のカノジョ?」
「「「嘘だ!!!!」」」
「見た目だけの残念仁にあんなに可愛いいカノジョが居るわけ無い!!」
「根都先輩だけじゃなく主将まで勝ち組なんて許せない!コノウラミハラサデオクベキカ……」
「言いたい放題言いやがって!俺にもカノジョくらい居るわ!!」
「ちょっと待て!俺は違うぞ?華……広宮はそんなんじゃない!」
「根都先輩は黙ってて下さい!「氷姫」のあの笑顔、あれみて違うとか信じられるか!馬鹿ヤロー!俺も狙ってたのにー」
「お前らやかましいわ!!さっさとアップしやがれ!新と根都、お前らあの二人をコイツラから引き離してこい!!」
荒ぶるゴリラの命令で仁と二人、華音と安達さんのところへ向かう。
「来てくれたんだありがとうな」
仁が安達さんと華音に礼を言う。
「来るって言ったじゃーん!カッコいいとこ見せてよ?」
「私も来ると言っておきましたし……新くんも羅怜央くんをもり立ててくださいね?」
俺からも礼を言っといた方がいいな……
「よく来てくれたね。安達さんも華音も、応援よろしく頼むな」
「根都くんもなんかすごいプレーを期待してるね!」
「とにかく怪我なく無事に戻って来てくださいね」
華音の謎の嫁ムーブと安達さんのフワッとした応援を受けて、なんかリラックス出来た。
「じゃあ俺等もアップしなきゃだから、観客席に行っててね」
仁が二人を誘導すると安達さんが「はーい」と華音を引き連れて観客席へ向かう。
さて勝利の女神がふたりも居るんだ、負けるわけには行かないよな!
〜 広宮 華音 Side 〜
沙織ちゃんは去年は観戦できず今年は今日が初観戦ですが、中学時代は結構頻繁に観に来ていたそうでンドバシュのルール等は知っているそうです。
ただ、高校では初観戦になるため羅怜央くんのプレーを初めて見ます。
「えちょっ?なにあれ?根都くんってあんなプレーするの?」
「相手があんなにグデンポギ仕掛けてるのに意にも介してない。うわっどこに目を付けてんの?あれを捌くの?」
「ウソ、なにあのゲドルパ……てか仁くん楽しそう」
羅怜央くんのプレーに驚きを隠せないようでした。
「羅怜央くん、すごかったでしょ?」
「いやー仁くんからいろいろ聞いてたけど、仁くんの言うことだから話半分に聞いてたんだ。でも、実際見るとすごいね。あれは仁くんも惚れるわ……」
沙織ちゃんも羅怜央くんのプレーに感動したみたいです。
「いやー期待以上に凄いもの見せてもらったよー、あれは「皇帝」に引けを取らないねー」
「くすくす、そうですね引けを取リませんよね」
試合の余韻に浸りながら家路につきました。誰かと試合の感想を言い合えるのも良いものですね。
帰ったら美味しい料理で羅怜央くんを労いましょう。
だから早く帰ってきて下さい。
◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
決勝戦を五行で終わらせるのに、睡眠と移動でほぼ一話を使い切る……これがごっつぁんゴールクオリティー。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
良ければ☆や❤、フォローもいただけるとさらに嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます