第23話 文化祭?なにそれ、美味しいの?


「去年もそうだったが地区大会は日程がハード過ぎる!高ン連は喧嘩売ってんのか?」


 二週間で決勝までやってしまおうとする辺り、高校ンドバシュ連盟(通称 高ン連)が文化祭とか考慮に入れてない様子がありありと見てとれる。

 

 実際、去年と同じく勝ち進んでいる俺達ンドバシュ部の出店は無し、当然のようにクラスの出し物も不参加。当日は三回戦と日程が被って文化祭を楽しむことも出来ずと、青春を無駄遣いしてる気がしてしまう。


 周囲はそんな俺たちのことなどお構いなしに青春を謳歌してやがる。こないだ遊びに来てくれた福北先輩は、


「今年の文化祭は一年生のとき以来、久し振りにカノジョと楽しめるよ!」


と自慢だけして帰って行かれた……


そして我らが勝利の女神「氷姫」は、


「ごめんなさい、クラスの出店をどうしても手伝わなければならないんです。本当にごめんなさい」


 部員ではないので当たり前に文化祭に参加、三回戦の応援は来られなくなった。ちなみにメイド喫茶だそうだ。

 

 メイド服姿の「氷姫」を見ることが出来ない怒りを力に変えて、三回戦は記録に残る圧勝劇を周囲に見せつけた。虚しい……


「部活的にはここまでびっくりするくらいトントン拍子だな。部活的にはな」


「部活的には次勝てば全国大会だからね、間違いなく順調だよな。部活的にはね」


「「文化祭出たかったな……」」





〜 広宮 華音 Side 〜



 文化祭と羅怜央くんの三回戦が日程被りをするなんて、高ン連は一体何を考えているのですか。


 おかげでクラスの方のお手伝いが忙しくて、三回戦を観に行けなかったじゃないですか!しかも文化祭を羅怜央くんと回る計画が潰れてしまいました!!ここは高ン連に抗議の電話をするべきでしょうか?


 そのうえ文化祭の準備のために、今週は羅怜央くんのおウチのバイトに全く行けていません。


「今週は羅怜央のところには行かないこと!文化祭に集中しなさい、そして文化祭を楽しみなさい!」


 と幾乃さんにも言われてしまいました。未来のお義母さまにそう言われてしまえば逆らうことなど出来ません。


 実際のところあまり乗り気ではなかった文化祭ですが、参加してしまうとそれはそれで楽しいものでした。

 普段あまりクラスの皆と絡まないため、こういう機会に交流を深めるのは有意義です。お義母さまもこういう事を仰りたかったのでしょう。


 これを機に封印していたンドバシュ布教活動を、復活させるのも良いかもしれませんね。


 そういえば、我がクラスのメイド喫茶に亜里沙ちゃんと沙織ちゃんが来てくれました。

 最初顔を合わせた時は、亜里沙ちゃんが人見知りを発動させて険悪な雰囲気になりました。

 しかし、沙織ちゃんが脅威のコミュニケーション能力で、あの亜里沙ちゃんと仲良くなることに成功したのです。

 店を出る頃にはとても仲良くなって文化祭をふたりで回ったそうです。今度三人で遊びに行くのも良いですね。


 もちろん文化祭の空気に当てられた困った方々もたくさんいらっしゃいました。主にナンパとかナンパとか告白とかですね。

 クラスのお店で接客をしていると、連絡先教えろとかその格好で一緒に回ろうとか写真を撮らせろとか、ひっきりなしに声をかけられました。


 普段ナンパなどそれほどされた経験が無いため、面食らってしまいました。やはり文化祭の空気のせいですかね。

 

 ナンパより困ってしまったのが、準備期間で一緒に過ごすことが増えたクラスの男子からの告白です。

 一度お断りしたことのある方もいらっしゃいましたが、文化祭の準備という独特の空気に当てられたのか、もう一度チャンスがあるのではと玉砕覚悟で特攻されてくる方が後を絶ちませんでした。


 クラスの空気を悪くするわけには行かないので、断る際も断り方に苦慮してしまいました。



今日久し振りに羅怜央くんに逢えます。

早く逢いたいです……






〜 根都 羅怜央 Side 〜



 仁も帰宅して、華音が久し振りに来るまでの時間コーヒーを嗜みながボーっと過ごす。

 今日は文化祭の打ち上げがあるそうで、そちらに参加してからウチに来るそうだ。


 ウチのクラスも当然打ち上げは行われるが出し物に参加してない俺たちが出られるわけもなく、仁とふたりで愚痴って一日を過ごした。


 もう一杯淹れようかな?と考えていたとき扉の開く音がして華音が入ってきた。

 

「お久しぶり、淋しくなかったかしら?」


 上着をリビングの一角に掛けて久しぶりの声を聞かせてくれる。てかクールモードだな。


「ヘンそんな事無かったわい、それで文化祭は楽しめたか?」


「ええ、おかげさまで楽しい文化祭だったわ。羅怜央くんも試合お疲れさま」


「ああ、しかしこの日程は教育的にどうなんだ?高ン連に文句言ってやろうかな?」


「クスクス、その時は私も援護するわよ?」


「それは心強いな、さてコーヒー淹れるけど飲むよな?」


「ええ、いただこうかしら」


「なら淹れてくるわ」


 なんだ?久し振りに華音に会って声を聞いたら、心がウキウキしてる気がする?久し振りだからだな。大した意味はない……


 コーヒーを飲みながらお互いの近況を報告し合う。と言ってもこっちは基本ンドバシュしかしてないから、

ほとんど華音の話を聞くだけだ。


「お店に出ているとナンパばかりされてしまうので閉口してしまいました」

「やたらメイド服を着たままで文化祭を一緒に回ろうと誘われまして……男の子ってメイド服好きですね」

「亜里沙ちゃんと沙織ちゃんが仲良くなったんです。それで今度三人で遊びに行こうってなりました」


 ときに煩わしそうにまたは呆れながら、ときに嬉しそうに文化祭であったことを報告する華音。

 その話に相槌を打ちながら、ふとした思い付きを提案してみる。


「来週で秋の大会も終わるし、今までの礼も兼ねてどっか遊びに行かないか?」


その効果は覿面だった。


「ええぇーこれはどういう意味ですか?これはまごうことなきデートへのお誘いに間違いありませんよね?

だとしたら普段の登下校デートやお買い物デートみたいな妄想とは違うまさに初デートになりますよ!まさかの空耳とかではないですよね?空耳ではないとするとついについに羅怜央くんのデレ期が来たということですか?いえ華音慌てちゃだめもしかしたらほんとにただのお出かけのお誘いのつもりで他意はないのかも知れませんだとしてもこれは大きな前進です神さまありがとうございますこのチャンスを活かしてみせます!デュワー」


おおっと、いつにもまして強烈だな。早口過ぎて聞き取れないがこれは喜んでくれてるのか?


「無理に付き合うことはないぞ?嫌な「行きます!!」ってそうか」


「えへへ、羅怜央くんとお出かけです」


 嬉しそうに、にへらーと笑う華音。

 それを見てあーこれはしっかり楽しませなきゃ駄目なやつだな……と気合を入れた。どこ連れて行こう?






〜 下司野 茶楽雄 Side 〜



「ゼエゼエゼエ……ハアハア……くそ!情けねぇな。しばらくサボってたから身体が大分鈍っちまってる……これは取り戻すだけで大仕事だぞ……」


 転校してからの自堕落な生活のせいで、鈍ってしまった身体を少しでも全盛期に戻そうといじめ抜く。最低限、試合をこなせる体力を取り戻す。とりあえず話しはそこからだ……

 

 自分がどうしたいのか、プライドや面子を捨てることが出来るのか、まだ自分の中で答えは出てないが土台は造っておいて損はない。


「あと2キロ追加で走り込みだ、その後ウェートだな……ぜってー間に合わせてやる!」






◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


羅怜央くんと華音さんがついにデートします。

少し物語が動きますかね?書くのが私なのでもしかしたら動かないかもしれません……


茶楽雄くんは走り込んでいます。健康志向ですね!


次回も読んでいただけると嬉しいです。

















良ければ☆や❤、フォローもいただけるとさらに嬉しいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る