第35話
僕は驚き、身体を勢いよく起こした。
「い、いえ、起きてました……」
「それなら、よかったです。起こしたかと思いましたよ」
南雲博士はにこやかに答えながらベットに近づく。
「ここに座ってもいいでしょうか?」
「どうぞ……」
南雲博士は近くの椅子に腰を掛けた。
博士は自身の荷物を置き、口を開いた。
「けがの具合はどうですか?」
「え……、ああ、あんまり気にはならないですが、不思議な感じです」
「そうでしたか。担当医にお話しを聞いたところ、足にかけては大変だったみたいで」
南雲博士は僕の足を見ながら、言った。
やはり話が早いのか、増原教官よりも来るのが早いし、心配してくれるとは本当に人のことを考えているかたなんだなと思った。
「でも不思議といたくないんですよ。 歩けないですけど」
僕は苦笑いを浮かべながら言った。
南雲博士はくすっと微笑むといった。
「聞いたところ、筋繊維も断ち切られてはいなかったそうですし、回復も、早いみたいで」
「回復が早いのはいいんですけど、長く休みたいところですよ」
僕が冗談を言うと、南雲博士は少しだけ神妙な顔というか、少し悲しそうな表情をしていた。
「ええと、何か癇に障ることでも……?」
僕は恐る恐る問いかけた。
「いえ、申し訳ないです。 本当に……」
博士は顔を俯かせながら、言った。
「な、なんで博士が謝るんですか?」
僕は焦ってしまった。
急に、テンションが変わったから驚きすぎちゃったよ。
「私の……、私の父のせいで、いろいろな方に迷惑を……」
南雲博士はさらに顔を俯かせた。
僕は言葉が出てこなかった。
多分、目の前の博士は相当、苦労したんだろうなと勝手に想像してしまった。
自身の家族のせいで何か悩まされることがあったということに。
ある意味、悪党の家族とか散々言われたこともあるのかもしれない。
それだけあの男がやったことの影響力は図りしれない。
僕はそんなことを考えながら、目の前の南雲博士をみた。
なんだかズーンとなっている感じだからこの雰囲気を変えないとと思い口を開いた。
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