第13話 くそったれ

授業の終わりを告げるチャイムが学校中に響き渡る。

優良生徒でない僕は午後の授業をほとんど寝てすごすというなめくさったことをしていたが頼まれた事は忘れていなかった。

フジマキノボルがどんな状態にあるのかを遠くから観察するということ。

彼をどんな人物かを僕は知らないが人から頼まれた事だ。

まぁ、気張らずにやればいいかという気持ちでいた。

休み時間、ほんの短い時間だけ僕はフジマキノボルを観察していた。

授業中はフジマキノボルに変化はなく、こうしてみると真面目な生徒に見えた。

しかし、休み時間中、彼を観察しているとトイレに立つ意外は椅子に座り机の前で過ごしていた。

彼に話しかける、クラスメイトはおらず授業が終わるまで一人でいた。

僕はなんだか同類をみた気がした。

勝手な考えかもしれないが親しい友達がおらす一人で過ごすところとかが自分に似ているなと。

いまでこそ稲葉という友人がいるが彼女がいなければいまでこそ一人だ。

孤独を愛するから孤独なのではなく孤独にならざるをえなかったからの孤独。

それはわからないが僕はそんなことをたった二十分たらずで考えた。

勝手な共感と憶測。

意味はないけれど。

そして放課後がきたため本題に移らなければ。

フジマキノボルを見ると帰り支度をし、うつ向いたまま席を立つ。

僕は彼が教室から出る少し前に席を立ち、自然を装いながら彼の後をつけようとした。

作戦は上手くいったのか彼の後をついていく。

彼はとぼとぼと歩いていく。

僕は彼に近つき過ぎず、距離が開かない、程よい距離感で後をつけていく。

教室は校舎の三階にあるのだが、そこからフジマキは階段をおり下駄箱まで向かっていく。

特に変わった様子もなく、彼は下駄箱につくと靴を履き替え校舎から出ようとする。

なんだ、稲葉の言ってたことはでまかせかと思ったときだった。

「よう、フジマキ」

独特の勘に触るようなイントネーションで彼を呼んだのは、髪を派手な色に染めた男子生徒。

僕は直感でコイツが竹内だと思った。

それに竹内と思われる男子生徒の後ろには連れなのか同級生らしき人物が二人。

見るからに型にはまっている感じの三人だなと僕は感想を抱いた。

人づきあいの苦手な僕からすれば関わりたくない種類の人間だ。

まぁ、フジマキノボル、彼にとってもだろうが。

竹内とおぼしき人物はフジマキに近づくと彼の肩に片方の手をまわす。

「フジマキ。今日もたのむぜ」

竹内は見ただけで嫌悪感を抱くような笑い方をする。

取り巻きも同じように笑う。

フジマキはうつむくだけでそのままじっとしていた。

何も反論せずただ口を結ぶ。

そのまま竹内と取り巻きはフジマキをつれ下駄箱で靴を履き替えると出口とは違う方向へ向かい、歩いていく。

僕はバレないように距離を開け後をつけていく。

この時点で嫌な予感はしていたが想像していた通りになる。

彼らは学校の隅にある人気の少ない武道館の裏手へと向かっていった。

彼らが角を曲がり、武道館の裏手に姿を消すのをみて近づいていく。

我ながら最悪の覗き見だ。

人として最悪で最低だろう。

しかし、僕が踏み込んだところでどうにもならない。

できるだけ感情を殺し、足を進める。

僕はゆっくりと壁づたいに近づき、曲がり角のところで少し顔を出す。

視線を向けた先には竹内と取り巻きがフジマキ一人を複数で囲んでいるという状況。

「気持ち悪いんだよ。テメェ、ウジウジしててよ」

竹内は笑いながらフジマキを罵倒し、腹や胸にパンチを入れていた。

フジマキは痛みに顔を歪め、踞る。

そこに竹内はフジマキの髪の毛を掴み、無理やり顔を挙げさせる。

追い討ちをかけるように取り巻きが一人ずつフジマキに暴行を加えていく。

その間も彼は痛みでうめき声を出すが何も喋らない。

竹内はストレスを吐き出すかのようにフジマキに暴行を加える。

流石に見ていて気分が悪くなるし、僕の主義に反する。

僕はバカだと思いながらも行動に移すことに決めた。

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