第16話 どうでも……


人間の人生って面白いことに何か一つ変化があると別のところでも変化が表れる。

そしたら立て続けに変化が現れ、休む間もないうちに見ていたものさえ変わっていき、残るものはわずかになっていく。

残されたわずかなものはただ存在し、忘れさられる。

それが事実で真実。

なんてことを考えつつ《ダスト》の建物の中を歩いていく。

バカみたいに広く感じるがそれはしょうがない。

《ノー・ネーム》に関する研究室や《リザーブ》を兵士として育てる為の練兵場も併設している為だ。

僕は増原教官のいる部屋へと向かっていた。ちなみに悪いことをしたわけではない。

だからお説教を聞きにいくわけでもない。

今回はあの黒いマントの男の件についてだ。あの黒いマントの男は突然、人が《ノー・ネーム》になるという件の参考人としてなりうる人物。

なにかしら関与しているのは事実で、偶然か必然か、黒いマントの男は二十年前に死んだナノマシンの開発者にしてナノブレイクを起こした張本人、南雲博士の若い頃にそっくりらしい。

彼が一体、何者でなぜ、《ノー・ネーム》が出現する場所にいるのか。

僕が考えてもしょうがないことなのだが、任務に関係あることだから考えなければ先に進めない。

とにかく彼を捕まえて話を聞かなければどうにもならないということだ。

僕は歩いていく。

後ろにはイリスがくっついてきていた。

増原教官がいる部屋が見えてきた。

うわー、あの厳つい顔みたくないと思いながらも足を進める。

部屋の前につき、一息つく。

そして扉の横にあるカメラ付きのチャイムを押す。

「黒田訓練兵、及び閂イリス訓練兵到着いたしました」

すると数秒後、ドアが開く。

僕とイリスは二人、一緒に入る。

「「失礼します」」

中に入ると増原教官は自分の机につき、資料を手にしていた。

僕らは増原教官の前に立つと教官は口を開いた。

「ご苦労。さっそくだが本題に入りたい」

増原教官はいつも厳つい顔で威圧感があるのに目を細め更に威圧がます。

「今日、来てもらった理由は他でもない。先日、話した黒いマントの男についてだ」

増原教官は淡々と言う。

すると増原教官は机の引き出しから一枚の封筒を取りだし、僕らの前においた。

僕はそれを手に取りイリスと一緒にしげしげと見る。

封筒はなんらへんてつもないもので差出人の名前がかかれていない。

「開けて見てみろ」

増原教官はジッと手紙を睨む。

僕は言われた通り、中身を取りだし、手紙を開いてみた。

今どき手紙など誰がだすのだろうか?

僕は疑問に思いつつ、手紙を開いた。

内容はこんなだった。

『今宵、○○時●●分。×××市に立ち寄らせて頂く。その際に《ダスト》の皆さんに会えることを楽しみにしています。』

「これは?」

僕は手紙から顔をあげ増原教官に向き直る。「多分、黒いマントの男からだ」

「「………………?」」

「今朝、君とは他に黒いマントの男を調査していた隊員が●●市の河川敷で死体となって発見された。その隊員の胸ポケットに入っていたものだ。推測だが彼は黒いマントの男に殺害されたと考える」

増原教官は僕らの前に殺害された隊員の顔写真と殺害され骸となった写真をだした。

見るも無残とはこのことを言うのだろう。

僕は写真を見つめながらそう思った。

「手紙にも書かれている通り彼はこの街に来ている」

「来ている?」

「黒いマントの男は約三時間前にすぐ近くの県境で確認されている。どこに潜伏しているかはまだ検討はつかないがこの街に来ていることは明確だろう」

増原教官は表情を変えないでじっと此方を見据えたまま言った。

あの謎の男が来ている……。

僕には実感が沸かないし、何故、あの男はこの街によったのか?

この街はなんのへんてつもない場所だ。

“ノー・ネーム”が出現することもあるがそれ意外は何もない。

政治や経済の主要都市を狙うなら分かるが、この街にくる動機が分からない。

「この男について他の隊員が捜索にあたっている。変化があればすぐに連絡する。二人はすぐ任務につけるように待機だ」

「「はい」」

ふたりとも敬礼をし返事をした。

今回はどうなるのか?

あの男が発見されれば事態が動くが何もなければ僕らの出番はないと思っていた。

本当にそう思ったときだった。

増原教官のデスクに設置された電話が突然、なった。

「もしもし。私だがどうした?」

増原教官は表情を変えず、受話器の向こう側の相手と会話をしていた。

ずっと、厳つい顔で無表情は疲れないのかと僕は思いつつ、休めの状態で事をみていた。増原教官は静かに受話器を置くと普段から険しい目をさらに険しくし僕らを捉える。

そして口を開いた。

「《ノー・ネーム》の出現が確認された。場所は───」

増原教官が口にした場所は意外なところでそこは僕の知っている場所だった。


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