第15話
彼は本当に独りぼっちなのかもしれない。
家族がいて学校にいるがそれで他人とちゃんと関われていると言えるのだろうか?
彼を救おうなどど大それたことは思わない。けれど困っている彼を見捨てることもできないんだ。
次の日、僕はフジマキノボルに関しての経緯を稲葉に話した。
ただある程度着色をし、竹内をのしたこと、フジマキノボルと話したことを伏せた。
「なるほどね。アンタから聞いた話だと流石に竹内に一度、言わなきゃだめね」
稲葉は呆れたように言った。
「後アンタに聞きたいんだけど……」
稲葉は眼光が鋭くなる。
「ん、な、なんだい?」
「アンタがフジマキのこと見てたって言ってたじゃない。聞きたいんだけど同じ日に、竹内たちが知らない奴に襲われてけがしてんのよ。アノ時、見てないかなと思ったんだけど」
僕はドキリとした。
「普段からあういうことしてるからしょうがないんだけどさ。フジマキ見てたときに変なことなかった?」
めちゃくちゃ冷や汗が出てきた。
「な、なかったよ。多分、僕が帰った後じゃないかな……。ハハ……」
僕は表情筋が固まった状態で渇いた笑いをした。
「ふぅん……。アンタも知らないわけね。でも実はアンタが犯人だったりして?」
「そ、そんなわけないじゃないか。見てご覧よ。僕みたいなひょろい奴が人を倒せるように見えるかい?」
稲葉は僕のことをじっくりと下から上まで観察する。
「だよね。アンタ、人を倒せそうな顔してないしね。疑いすぎか」
稲葉は自己完結した。
疑いが晴れたが流石に自分で自分のことをひ弱と表現すると心がちょっぴり痛いのはなぜだろうか。
確かにひ弱であることに違いはない。
ただ毎日のように身体を使っている筈なのだけれど。
こればかりはなんともいえない。
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