第46話
かわさないということはかなりの自信があったのだろうと思うが、すでに彼の身体は攻撃の効かない身体ではないことを証明していた。「…………!?」
彼は驚きつつも、距離を取ると、すぐに、右手を伸ばしてきた。
僕は右手をかわし、彼の腕にチタンブレード改を振り下ろした。
右腕の前腕にあたり、刃が通りかけるが、硬くとおらない。
南雲は僕に向かい、蹴り放っていた。
蹴りを食らい、横に再度、吹き飛んだ。
痛みで視界が歪むなか、爆発音が聞こえた。
僕は地面を転がるが、すぐに立ちあがる。
南雲のあたりが煙に包まれていた。
僕はイリスの方をみた。
イリスはグレネードをもう一度、放っていた。南雲の身体が炎にまかれていた。
彼はかわすことなく攻撃を受け続けている。
炎が収まり彼の表面の組織がまた再生しようとしていた。
僕はその隙を逃さずに斬りかかった。
チタンブレード改の刃を今度は胴体に向ける。しかし、彼は右手で僕の攻撃を受け止めた。
燃えさかり、顔が火傷のようになっていたが、逆再生を見ているかのように彼の顔が元通りになると僕をジロリとみた。
「やってくれたね」
彼は右手で攻撃をとめつつ、自身の左腕をちらりとみた。
「初めてだよ」
南雲はそう、短くいうとチタンブレード改の刃を握り、そのまま、横に振った。
僕は振られるままに、投げ飛ばされそうになるが、僕はチタンブレード改を引くように動き、南雲から離れ、すかさず、踏み込んだ。
今度は彼の右脚めがけて、チタンブレード改を振り下ろした。
刃は貫通することなく、弾かれた。
南雲は掌を僕の身体に打ち込だ。
「かっ」
変ないきがもれ、再度、後退する。
それでも僕は足に力をいれ、彼の間合いに踏み込み、再度、足に斬りかかる。
南雲は予想済だったが、僕の攻撃をかわさない。
僕は軸手の左手に力を入れて、一気に、斬りつけた。
次の瞬間にはチタンブレード改は硬い物に当たる感覚がし、刃が、皮膚の部分を貫通していた。
南雲も足を一瞥し、すぐに僕と視線を合わせる。
僕はすかさず、右手でガードをする。
予想通り、南雲は右手で僕に攻撃をしかけてきた。
後退するが、すぐにバックステップで下がる。すぐさま、イリスが、グレネードを放つ。
南雲に当たり、爆発が起こる。
爆風から守っていた腕をおろし、直ぐさま、南雲の右脚に、向かいチタンブレード改を振り下ろす。
彼は再生している最中だったが、反応したが遅かった。
チタンブレード改は彼の足を捕らえ、切りおとした。
彼は再生をしながら、バランスを崩した。
僕はすかさず彼の右腕にチタンブレード改を振り下ろした。
やはり、効かない。
それでもすぐに、斬りつけた。
再生速度が落ちていたのか右腕が、吹き飛んだ。
南雲は地面に、仰向けに倒れ、焼けていた顔は元通りになった。
僕はチタンブレード改を逆手に持ち、彼の胸に向かい、つきたてトリガーをひいた。
彼を殺すために作られた薬が刀身を伝わり、南雲の身体に入っていく。
「やられたね・・・・・・」
南雲は笑っていた。
僕は彼を見下ろしていた。
「さぁ、殺せ。 君が名も無い人たちを斬ってきたように」
南雲は呼吸が荒くなっていたが、余裕にしながらこちらを欺くように笑っていた。
「…………」
僕はただ彼を見つめていた。
「どうした? 私を殺すように命じられているんだろう?」
南雲はさぞおかしいと言わんばかりに笑う。
イリスが走ってきて、銃口を南雲に向ける。
「クロ……」
イリスは僕を見つめる。
わかってるよ。
けれどそうじゃない。
僕は深呼吸をし、無線に向かい言った。
「南雲博士、約束を破ります……」
僕はチタンブレード改を彼の身体から、抜いた。
「何をしている。 殺さなくていいのか? その薬を使って私を殺すんだろう?」
南雲はどこか懇願しているような、困っているようにも聞こえる言葉で言った。
僕は彼に応えた。
「ここでアンタを殺せばアンタの思うつぼだ」
「なぜそう思う?」
「アンタを殺すために薬を使ったら稲葉を助けられない」
僕はチタンブレード改を鞘に仕舞う。
「…………」
南雲は何も応えなかった。
すでにそれが答えだった。
「黒田訓練兵、イリス訓練兵の姿を確認」
気がつくとすでに「ダスト」の他の隊員が辺りを囲っていた。
南雲に向かい、銃口を向け、警戒態勢に入っていた。
『黒田訓練兵』
南雲に向かい、銃口を向け、警戒態勢に入っていた。
『黒田訓練兵』
無線に増原教官の声が響く。
「何でしょう?」
『君がしたことはわかっているな?』
今更この情況下でいうかよと僕は思った。
「わかってます。南雲の殺害の命に背いたこと、現場の持ち場を離れたことです」
『それについては問題ない。 新しい任務を命じる。これから、あの巨大な未確認の”ノー・ネーム”を排除しろ』
無線の向こう側では淡淡としていたが増原教官の声には少しだけ熱が籠もっていた。
「イエスサー」
僕は短く答え、駆け出す。
拡張現実が、動く巨大な塊までの距離を算出してくれる。
距離にして一キロもない。
僕は背中に、チタンブレード改を背負いながら、足を動かす。
算出された距離とルートに従って僕は走った。稲葉、彼女の顔が思い浮かぶ。
きっと、こんな世界でも彼女はきっと何かを願っていた。
だから彼女は何か、悲しげな顔をしていたんじゃないだろうか。
何かからにげる為に。
僕はひたすら、巨大な何かに向かい走った。
巨大な何かとの距離が縮まるにつれてすでに他の隊員も銃撃をしていた。
そしてもう一つ、気がついたことが合った。
巨大な”ノー・ネーム”の体中には顔があり、そして腕や、足などの身体の一部がそこかしこについていた。
それらは一つとなり、うごめいていた。
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