第45話
「ははは」
南雲は笑い、僕の方を見ると、いきなり、彼がもの凄い速さで僕との間合いを詰めてきた。彼は僕に、向かって腕を伸ばす。
僕はバックステップで彼の攻撃をかわす。
しかし、南雲は止まることなく、間合いを詰める。
「君は本当は怖いんじゃないのか」
南雲は言いながら、間合いを詰めてきた。
「……」
「君は死ぬこと、この世界から居なくなることを」
南雲は笑い僕の服をつかむ。
僕は歯を食いしばり、チタンブレード改をつばぜり合いのようにかまえた。
「……うるさい!」
僕はチタンブレード改を持つ手に力を入れた。「図星かい。自分の名前を誰にも知られることなく、世界から排除されることを」
南雲は僕の目を見ながら、言った。
「だから……、何だ!」
僕は叫んだ。
「お前はただ世界を荒らしてるだけじゃないか! 稲葉はその犠牲に……」
「彼女も、君と同じなのではないかな? 彼女も自分の名前を知られることなく死んでいく。 それに恐れをなしていたのではないかな」
「黙れ!」
声を出して、叫んだ。
もう頭の中が熱くなっていた。
僕は叫び、チタンブレード改を振った。
南雲は笑い、蹴りを繰り出してきた。
蹴りを食らい、吹き飛ぶ。
吹き飛んで、地面に身体が打ち付けられる。
けれど、すぐに起き上がる。
「なぜそこまで立ちあがる?」
南雲は半笑いで問いかけてきた。
「イリス!」
僕は叫ぶ。
イリスが声に反応し、グレネードを撃った。
半笑いの南雲の顔に当たり、彼の上半身が燃える。
僕は再度、走り、南雲にチタンブレード改を斬りつけた。
やはり、刃が通らないのが分かった。
けれど、僕はチタンブレード改を持つ手の力を込めた。
「そうか……。君らは本当に恐れているのと同時に、どこかで希望を抱いてしまっているんだな」
再生が終わった南雲は表情を変えることなく、半笑いの状態で、完全に回復をした。
チタンブレード改は彼の首元だが、通っていなかった。
「うるさい!」
「図星かい? 勝手に希望を抱いて、現実を見ようとはしない愚かなやつらだ」
南雲の顔が笑い顔から怒りの顔に変わった。
「・・・・・・・・・・・・!?」
僕は驚いた。
その瞬間、南雲の腕が伸び、僕の身体に触れた。
その瞬間、僕は勢い良く、後ろに吹き飛ばされていた。
僕は受け身を取ろうと意識したときだった。
南雲は空中に浮かんでいる僕にむけて跳び蹴りをはなった。
気がついたときには衝撃が胸にあり、呼吸が止まる。
「かっ……」
さらに後ろにとばされ、僕は地面に叩きつけられた。
痛みが全身を走る。
けれどここで寝ている場合ではない。
僕はすぐに痛みを堪えて立ち上がる。
視界には怒りの表情をしながら今度はイリスの方に歩き出していた。
「イリス!」
僕は叫びながら、駆け出そうとしたが痛みに足が止まってしまう。
イリスに向かい、南雲は一気に間合いを詰めると彼女に蹴りを喰わせる。
イリスは人間の蹴りとは思えない威力に、横に吹き飛んだ。
僕は歯を食いしばり、叫んだ。
「あああああああ」
そのままチタンブレード改を強く握り、僕は駆け出した。
南雲との距離を一気に詰める。
チタンブレード改を振り下ろすが、南雲は手で受け止める。
そして、手をもの凄い速さで僕の首に伸ばした。
「無駄なことをするなといったはずだ」
南雲の顔は怒りで染まっていた。
何に、大して起こっているのか分からないが、僕は首をつかむ手をふりほどこうとするが、できない。
南雲はそのまま僕の首を握りしめたまま、僕を持ち上げた。
首が絞まり息が出来なくなる。
「…………!」
僕は必死で南雲の腕をふりほどこうとするができない。
「無駄な期待を持つから世界が汚れる。 全て無くなれば何もなくなる」
僕は彼が何を言いたいのかさっぱりわからないが、兎に角この状況を変えないとヤバいと思ったときだった。
僕の首をしめていた南雲の腕が離れた。
僕は解放され、地面に、倒れる。
「はぁあああ」
空気が灰に戻り、変な息が漏れる。
「……!?」
僕は何が起こったのかわからず、顔を上げた。そこには不思議そうな顔をしていた、南雲がいた。
僕はすぐに、周囲を見渡した。
すると、イリスと共に、『ダスト』の隊員数名がライフルをこちらにかまえていた。
拡張現実に、数名のバイタルサインが表示される。
南雲はそちらに顔を向け、怒ったまま、そちらへと歩き出した。
僕はすぐに駆け出し、南雲から距離を取った。次の瞬間には「撃て」と一人の隊員が叫ぶのが分かった。
叫びが終わると同時に、一斉に数名の隊員が南雲に向かい、弾丸の雨を振らせる。
そこにイリスは、グレネードランチャーを向け発射していた。
金属が金属に跳ね返される音と爆発音が、響く。
僕は走り、南雲の横に、避難する。
爆発し、粉塵が舞い、当たりがみえなくなる。僕はただ黙って、その光景を見る。
「打ち方やめ!」
一人の隊員が声を放つと銃声がやんだ。
粉塵だけが舞い、静けさが戻る。
粉塵のなかから、南雲が出てきた。
顔には傷一つついていなかった。
「化け物め」
隊員が言うと、腕をあげる。
他の隊員もライフルの引き金に指をかける。
しかし、僕は違和感を感じ、よく見てみた。
南雲の腕の再生速度が落ちているのか、火傷したように一部がただれていた。
南雲は顔を怒りに歪ませたまま、言った。
「無駄だと言ったはずだ」
それと同時に南雲は駆け出す。
隊員は腕を振り下ろす。
一斉に再度、銃弾の雨が降り注ぐ。
しかし、南雲は退くことなく、駆ける。
銃弾が、跳ね返される。
南雲は隊員に、近づき、手刀で隊員のライフルを破壊する。
不味いと僕は感じ、チタンブレード改をかまえて走った。
その間に、隊員達が倒されていく。
陣形が崩れ、全員、南雲に、ライフルを向けていた。
しかし、南雲は気にかけることなく倒していく。
「南雲ぉおぉぉぉ」
僕は隊員達の間を縫い、彼に斬りかかる。
南雲が右腕でチタンブレード改をガードする。ガードされ、クソと思ったが、当たった感覚が違っていた。
瞬間てきに目にしたのは、チタンブレード改の刃がすこしだけ、腕に食い込んでいた。
驚く僕を他所に、彼はぎろりとこちらを睨む。「……」
怒りで満ちた顔は何も言わずに、僕に蹴りを放つ。
僕はすぐに、チタンブレード改の柄でガードする。
威力は比べものにならないほどで。身体が、吹き飛んだ。
「ぐぁあああ」
僕は吹き飛び、真横に吹き飛び、地面に叩き付けられる。
けれど、すぐに立ち上がる。
チタンブレード改の柄じゃなければ、死んでいた。
僕はチタンブレード改をかまえ、走った。
南雲は叫んだ。
「いい加減にしろ! 君らは死ぬ運命なんだ」
南雲は他の生きていた隊員に向かい蹴りを放つ。
隊員の一人は脇腹に食らい、身体が変な方向に曲がっていた。
もう一人は手刀で、首を貫かれていた。
「諦めろ!」
怒りで、声は震えていた。
イリスはそこにグレネードを打ち込む。
南雲はグレネードの弾を掴み、握りつぶす。
爆発とともに、破片が飛ぶ。
近くの瀕死で倒れていた隊員は絶命していた。粉塵がとまえると共に、僕はグレネードの破片で燃えている南雲に斬りかかる。
南雲は今度は左腕でガードをした。
やはり、見間違えではなかった。
彼の腕にダメージが残っていた。
僕は止まったチタンブレード改をしっかりと握る。
「君も、死ぬ運命だ」
南雲は叫んだ。
「うるせぇ」
僕は握ったチタンブレード改を思いっきり自分の方に、ひきながら腰を落とした。
僕は南雲の方をみていた。
チタンブレード改が彼の腕に傷を深く負わせていたのが分かった。
南雲は自身の身体に深くダメージを負ったことに驚いていた。
僕はすかさず、二回目の攻撃に踏み切る。
そのまま、チタンブレード改を返し、振り上げる。
南雲は右の掌で、ガードをする。
チタンブレード改の攻撃が止められたが、僕は再生する前に攻撃をしかけなければ、そう思い、僕はそのまま身体をひねり、うしろ回し蹴りをいれ、南雲から距離を取る。
「イリス!」
僕は叫ぶ。
反応し、イリスはグレネードランチャーをすかさず放つ。
僕は真横に、転がり、爆発を防ぐために、腕で、顔をガードする。
南雲に、着弾したのか爆発が起こる。
僕は数秒して顔をあげた。
煙のなかから、南雲の姿が見える。
彼の顔は傷を負っていないが先ほど攻撃を加えた、左腕の傷は再生が追い付いていなかった。
他の部分は再生は追い付いていた。南雲は自身の左腕をみて、怒りの表情を崩さず、こちらに視線を移した。
僕はすかさず、走り、南雲に斬りかかる。
南雲はその場から動かず、僕の攻撃を受け止めた。
「やるね」
怒りの顔をしたまま、彼は右手でチタンブレード改を受け止める。
左腕をチラリとみる。
先ほど、斬った彼の腕は再生をしようとしているが、再生速度が確実に遅れていた。
僕は息を吐き、一瞬、彼から間合いを取ると、そのまま、左腕に向けて、チタンブレード改を振った。
彼はかわすことなく僕の攻撃を受けた。
チタンブレード改は彼の左腕をとらえ、切り落とした。
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