第44話
「おやぁ、失恋でもしたのかな? いやその顔は自身の大切な人間が”ノー・ネーム”にでもなった……、そんな顔をしているね」
僕はふり向きながら、チタンブレードを真横に切りつけた。
固い金属のような物に刃が当たったように感じた。
「図星か」
「南雲!」
僕は振りかえった先にいた南雲に叫んだ。
「やぁ」
南雲はまるで夜道にあっただけと言う顔をしながら、言った。
その表情に僕は自分の中のさらなる怒りを握ったチタンブレードに乗せる。
チタンブレードをすぐに構え直し、南雲の顔に向かって、突き立てる。
南雲はニヤリとしながらそれを受け止める。
刃が、ガツっという音を立てるが、南雲には効いていない。
「無駄だとこの前も言ったはずだけど」
南雲はチタンブレードの刃をつかむと、足を振り上げた。
僕は反応できずに、それをもろに食らってしまった。
気が付いたときには肩に衝撃がはしり、痛みと共に地面を転がっていた。
「おやおや」
南雲は僕をみて首を振った。
僕は立ち上がりチタンブレードを構え、南雲に向かい、斬りかかる。
南雲はかわすことなく手でチタンブレードの刃先をつかんだ。
「で、何がしたいんだ?」
「お前が、あの病院を……、稲葉を」
僕は言葉が浮かばなかった。
目の前の得体の知れない何かを殺すことだけ考えていた。
動かないチタンブレードの向こう側に対象の顔があるが、上手くやることができない。
「ああ、あの女子学生は稲葉というのか……」
南雲は薄ら笑いを浮かべながら、言った。
「何がおかしい」
「いや、彼女はけなげだだなと思ったよ」
「けなげ?」
「そうさ。 彼女の母親は事故に遭い、過去に関する記憶が無くなっていたようだ。彼女はそんな家族を助けるためにいろいろと未成年にしては危ない橋も渡っていたみたいだね。彼女にしてみたら苦痛だったんではないかな? それも今日できっと解放される」
南雲は笑った。
僕は全身の毛が逆立つような感覚がした。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
僕はチタンブレードを振りかぶり、南雲に向かい、再度斬りかかる。
「無駄といったはずだよ」
「知ったことか!」
僕はチタンブレードを振り下ろす。
今度は指先で止められる。
「無駄と……」
僕はチタンブレードを逆手に持ち替えて、瞬時に南雲の顔に向かい、ハイキックを叩き入れた。
「うるさい、黙れ」
南雲は吹き飛び、地面を転がる。
僕は地面を転がり、その場に倒れる南雲を追いかけ、間合いを詰めると彼に向かい、チタンブレードを振り下ろす。
しかし、刃は通らず、彼は刃を手で握る。
「無駄だと言っただろう」
彼はチタンブレードの刃先を握り、立ちあがる。
僕はチタンブレードの柄に力を入れるが、どうしても、刃が通らない。
「君は本当に無駄なことをするね」
南雲はニヤリと笑う。
僕は思いっきり柄を握ったまま、彼の脇腹に、向かい、蹴りを入れる。
南雲は僕の足をつかむとそのまま身体をひねった。
マズイと思ったときには遅く、身体が空中に浮いていた。
「お返しだ」
声が聞こえたと同時に、僕の目の前に南雲が出現していた。
南雲は僕の腹に向かい、蹴りを放つ。
「ぐっ……」
僕は衝撃を感じながら、そのまま、地面に叩きつけられた。
「いってぇ」
ベストを付けていなければ、確実に死んでいた。
南雲は僕の上に足をのせて立っていた。
「どうやら君は本当に滑稽な人間になりたいらしいな」
彼は僕を見ながら、ニヤニヤしながら言った。「このまま殺してしまおう」
南雲は足を上げた。
そのときだった。
南雲の顔が後ろに下がった。
「クロ、離れて!」
僕の耳に入ってきたのはイリスの声だった。
「イリス……」
僕は彼女の名前を呟きつつ、南雲からすぐに間合いを取った。
体勢を立て直し、イリスの方を見ると、彼女はアサルトライフルを構えていた。
「イリス……、助かった」
「礼は後の方が良い」
イリスが短く、言うと、僕はチタンブレードを構えた。
「だから無駄なことをするな……」
南雲は僕らの方をみた。
「君らが、ここで、私に構っている間に、あの生き物は街を蹂躙するぞ」
彼の後ろで、稲葉を取り込んだ巨大な何かはどこかへ向かって進んでいた。
「知ってるさ。だから、そこをどいて貰う」
僕はチタンブレードを鞘に仕舞い、背中にしょった、新型のチタンブレードを取り出した。「やる気があるね。 だが、私にはそれは効かないよ」
「けれど、やってみないとわからない」
僕は新型チタンブレードに薬をセットした。
カシュッという音と共に、中の薬が減っていくのが分かる。
イリスがさきにアサルトライフルの引き金をひき、南雲に攻撃をしかけた。
しかし、彼の皮膚を貫通することはなく、そのまま弾かれる。
僕は間合いを取りつつ、チタンブレードを切りつける。
南雲はかわすことなく、手で、受け止める。
「無駄だよ」
チタンブレードを握ると、握ったまま、腕をふった。
僕は振られるまま、身体が宙に浮かぶ。
けれど、さすがに同じ手は喰わない。
僕はすぐに空中で姿勢を整え、地面に着地する。
そのすきにイリスがライフルで撃つがあまり効果が無い。
彼女は苦虫をつぶしたように眉間に皺をよせる。
南雲が、彼女にむかって歩いてく。
「イリス……!」
僕は思いっきり、かけて南雲にチタンブレードを切りつけた。
刃先は彼の耳元で止まる。
「私にはうるさいハエのようにしか思えない」
南雲は勢い良く、身体を翻しながら、足を上げた。
蹴りが来ると反応としてガードをした瞬間に、腕に、勢い良く衝撃が襲う。
「がっ……」
ガードした腕が折れるかと思うほどの衝撃だった。
「クロ……!」
イリスが叫ぶと、南雲は素速い動きで、イリスにちかづいた。
「人の心配をしている暇があるのかい?」
南雲はそういいながら、イリスに蹴りを放つ。「くっ……」
イリスは後ろに吹き飛び、地面を転がる。
「イリス!」
僕はすぐにシビれる腕をがまんしながら、南雲にチタンブレードを振りかぶる。
南雲はチタンブレードをしゃがんでかわし、身体を翻し、回し蹴りを放つ。
僕はすぐに腕を曲げて、ガードの体勢に入る。衝撃が、腕だけでなく身体全体に伝わる。
アームガードなどが無ければ、完全に折れているほどの威力。
こんなやつをどうやって倒したら。
僕は頭で考えつつ、すぐにチタンブレードを彼の顔に向かい、突き出す。
簡単に、いなされ腕を掴まれ、そのまま腕の力だけで、南雲は僕を地面に背中から叩きつけた。
「グッ……」
息が漏れる。
けれど僕も負けじとすぐに南雲の足に蹴りを入れる。
腕が離れ、僕はすぐに彼から間合いを取った。視界の端でイリスが動き、アサルトライフルとは別の物を手にしていた。
それがグレネードランチャーと気が付いたときに彼女は構え居た。
「クロ、離れて!」
彼女が叫ぶと同時に僕はすぐに真横に、ジャンプしていた。
イリスはグレネードランチャーの引き金を引いた。
球が発射され、南雲に当たり爆発した。
短い閃光と破裂音がし、南雲の足下に火の粉が散乱する。
僕は爆風をうけつつ顔を守りながら、地面を転がる。
「はぁぁ」
僕のちかくに熱風と破片が降り注いだ。
状態を起こし南雲の方に向きなると身体が煙で覆われていた。
「無駄だといったはずだが」
煙から出てきたのはダメージを追っていない
南雲の顔だった。
マジかよと僕はおもったが、はっと気がついた。
彼の頬に少しだけ、傷がついていた。
まさかなと思ったが、すぐに南雲の顔についた傷は治っていた。
けれどやらないよりはマシだと考えた。
僕はもう一度、南雲に斬りかかる。
「本当に何がしたいんだ?」
南雲はうんざいりした顔で言った。
僕は関係無く、そのまま斬りかかる。
チタンブレード改の刃が彼の皮膚を貫通することなく、そこで止まる。
南雲ははぁと溜息をつくと僕の横腹に、蹴りを加えられた。
「ぐっ……」
僕はそのまま横に吹き飛んだ。
「クロ!」
イリスが叫ぶ。
「君らは本当に学ばないな」
南雲はイリスに向かい、歩き出す。
僕は地面を転がりつつ、勢いで、身体を起こした。
僕は叫んだ。
「イリス、グレネードを使え!」
「えっ!?」
イリスは驚きつつも、すぐに後ろにかけだし距離を取ると南雲に向かい、グレネードランチャーを向けッ引き金をひいた。
グレネードの弾が南雲に当たり、爆風と破片が近くまで飛んでくる。
煙の中、南雲が立って居るのが分かる。
僕はすかさず、駆け、南雲の首筋にチタンブレード改を振りかざす。
チタンブレード改の刃が首元で止まる。
「あがきが悪いな」
彼はそういいながら、皮膚はまるで映画を見ているかのように、治癒していく。
やけどで焦げていた顔と皮膚はすぐに元通りになる。
僕はすぐにチタンブレード改を下げ、距離を取る。
「イリス!」
僕が叫ぶと共に、イリスがグレネードを発射する。
グレネードが南雲の顔に当たり、爆発。
僕は爆風が止むと共に、駆け出し、チタンブレード改の刃を南雲の首に突き立てる。
やはり堅い。
それでもやらないとあの進行している怪物は止められない。
僕はすぐに彼から距離を取る。
彼の腕が僕をつかもうと、煙の中から、現れる。
しかし、それは空をきる。
僕が十分距離を取ると共に、イリスが、グレネードを発射する。
爆発し、再度南雲の顔はみえなくなる。
僕はイリスのそばにかけよる。
「イリス」
「クロ」
「グレネードの弾は後、何発ある?」
イリスに問うと彼女は応えた。
「後、五発」
「五発か……」
「正直、厳しい?」
「ああ、でもなんとかしてみせる」
僕とイリスの目の前では南雲がすごい速さで回復していく。
「君らは無駄なことしかしないな」
南雲は首をコキコキとならしながら言った。
「無駄かどうかはやらなきゃわかんないだろ」
僕はチタンブレード改を構えっていった。
「本当にむだなことだ。君らが私と戯れている間にあの悲しい人々は街を破壊するぞ」
南雲は後ろの巨体をみていった。
「通す気も無いくせに!」
僕はチタンブレード改を構えかけだした。
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