第19話

見えてきた武道館の入り口に数体の《ノー・ネーム》がいた。

多分、中にも《ノー・ネーム》がいるのだろう銃の発砲音が連続して聞こえた。

『イリス。大丈夫か?』

『大丈夫。クロ、今、どこ?』

『武道館の入り口だ。《ノー・ネーム》が数体いる。片付ける』

僕はイリスに通信で告げると、《ノー・ネーム》の列へと駆ける。

確実に一体をすぐに仕留めなければ自分が危うい。僕はチタンブレードを抜き、最初の一体目の足を狙い真横に一閃する。

不意をつかれ体勢を崩した、一体目は身体ごと倒れる。僕はふりかぶったチタンブレードをそのまま倒れる一体目に向かい、刃先を突き立てる。「ギャッ」と短い声をあげ絶命する。

一体目の声に反応し、残った奴らも反応する。

《ノー・ネーム》達は僕という獲物をみつけ声をあげながら此方に向かってくる。

拡張現実が《ノー・ネーム》の数を告げる。目の前の数は約五体。

僕は流石に不利だと思い、バックステップしながらポケットに入っていたスタングレネードを取りだし、ピンを抜き、迫る《ノー・ネーム》達の前に投げつけた。

爆発する前に拡張現実を操作し、光を遮断するモードにする。

次の瞬間には強大な破裂音と閃光が走る。

音はマイクロイヤフォンをつけているため少し、音が遮断されるがこちらも被害を受けることになる。

すぐに拡張現実を通常に変え、視界を正常に戻す。

《ノー・ネーム》達は閃光と音にやられその場でもがいていた。

直ぐ様、近くの一体から斬っていく。

《ノー・ネーム》達、一体ずつ斬っていくがそれぞれ悲鳴をあげながら地に伏していく。五分と立たない内に五体を殲滅した。

死後硬直を起こしているのか、死骸とかした《ノー・ネーム》はビクンと腕が動く。

僕はすぐに武道館のなかへと向かう。

《ノー・ネーム》が何体か死骸がかさなっいた。

「イリス」

中へ入るとイリスと同行した隊員二名は生存していた。

彼らの後ろには見覚えのある教員が何人かいた。

どうやら民間人を守りながら闘っていたらしい。

「クロ」

イリスは心配している声で僕に近づく。

「イリス、大丈夫だった?」

「大丈夫だったよ。クロは?」

「問題ない。ただ一つ報告がある。黒いマントの男にあった」

イリス、二人もかなり驚いていた。

「男は?」

隊員二名の内、一人が聞く。

「消えた」

僕はある程度、隊員たちとイリスに事情を説明した。

三人は僕の話を聞いた後、増原教官へと連絡をとっていた。

事態が収集されたように思えていたがまだ僕は嫌な胸騒ぎがしていた。

そのときだった。

民間人で顔をみたことのある教員が一人、こちらによってくる。

「すいません」

「なんですか?」

声をかけられ反応する。

僕はゴーグルをつけているため生徒とわからないのだろうか、教員は控えめな感じで寄ってきた。

「来てない生徒が何人か、まだいるんです」「本当ですか。何人ほどまだ来てないんですか?」

「四人ほど」

僕はそれを聞いた瞬間、走り出していた。

後ろで仲間が呼び止めるのが聞こえていたが反応せず足を動かす。

武道館から出ると、すぐに拡張現実を展開させ、民間人の反応がないか探ってみる。

しかし、拡張現実には何も反応せず、ただ地図の表示だけが虚しく目の前に映る。

「どうしたの、クロ?」

マイクロイヤフォンからイリスの声が聞こえた。

「何があったの、クロ。いきなり飛び出して」

「イリス。まだ民間人が残っているみたいだ。それに一人は知り合いだ」

「でもクロ、拡張現実には何も反応がないよ」

「わかっているよ」

僕は語気を強め返答する。

どうして反応がない?

人間でも拡張現実に映るはずなのに四人とも反応がない。

どういうことだ。

焦りが出てきた。

その時だった。

目の前の地図に、赤い点滅が表示された。

武道館から西がわ、校舎の前にあるグラウンドの辺りに一つ点滅していた。

赤い点滅。

これは《ノー・ネーム》の反応。

僕は直ぐ様、グラウンドの方へ駆ける。

「クロ」

マイクロイヤフォンからイリスの声。

「グラウンドの方に《ノー・ネーム》の反応がある」

「わかってる。今、向かっている」

グラウンドが見えてくると辺りは暗すぎて、何があるのかさえわからない。

僕は拡張現実の暗視モードに変換。

視界がグリーンになり、一気に見えなかったものが見えるようになる。

僕は辺りを見回し、反応があった場所を探す。

拡張現実の地図では点滅しているが一向に姿が見えない。

グラウンドのほうにもいない。

何処だ?

瞬間、拡張現実が《ノー・ネーム》の接近を示す、警告反応が出ていた。

警告反応によれば僕の真後ろにいることになる。

僕は直ぐ様振り替える。

しかし、そこには何もいない。

そのときだった。

「黒田くん……」

声が今まで見ていた方向からし僕は振り向く。

すると真っ暗の中に一人の人物が立っていた。

その人物はフジマキノボルだった

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