第34話
ヒトという生き物はアドレナリンという興奮状態のとき、痛みを忘れさせてくれる物質が身体のなかで出るらしい。
もしそれが本当なら、ずっと出ててほしかったな。
僕はそんなことを考えながら、ベットに横になっていた。
なんで横になっているかって?
簡単な話、怪我をしているからだ。
帰り道に南雲と“ノー・ネーム”に襲われ、胸のあたりは肋骨にヒビが入り、ほかに多数の打撲。
それに加えて、“ノー・ネーム”に噛まれたところがひどく傷が深かったため、入院になった。
傷自体は本来であれば一か月ほどかかるものであったが、そこが“リザーブ”のいいところで、ナノマシンを体内に宿している分、治りが通常より早い。
ある意味、もろ刃の剣だが、こういうときに役に立つことはいい。
僕はそんなことを考えながら窓の外をみた。
何回か、実戦でケガすることはあったが、ここまでではなかった。
まさに不思議としか言いようがないなと僕は思った。
空は快晴で本当にすがすがしいほどだった。
とりあえず講義は休めるし、寝ていられる。
僕は目を閉じる。
先日のイリスとのお茶とでもいうのかあのひとときが幸せとでもいうか、彼女の姿が、浮かぶ。
なんだか不思議な感じだった。
彼女のプライベートな部分を僕は見たことがなかったがゆえに、かなり新鮮だったことは間違いない。
僕はあのときに呑んだコーヒーを思い出し、また飲みたいなと思った。
ふと黒いものを連想したからなのか、あの男、南雲を思い出してしまった。
なんだか腹が立ってきたがまぁ、今はとりあえず忘れよう。
僕は身体を横にして、なんとか忘れられるなら、忘れてしまおうとした。
そのとき、ドアの向こうからノック音が聞こえた。
だれだろうか?
僕は目をつぶりながら、答えた。
「空いてますよ」
僕が答えると、ドアが、開き誰かが入ってきた。
僕は目を開けて、入ってきた人物を見ようと身体を起こした。
「寝てましたか?」
僕の予想に反して、目の前にいたのは娘の方の南雲博士だった。
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