第52話 冒険者レナ

「そういわれても…」

 私はギルマスの質問にしどろもどろになる。


「いいかい、君のいっていることは小規模なスタンピードなんだ。本当ならさらに拡大し、都市を飲み込んでもおかしくない話なんだよ」

(※スタンピード:魔物の集団が同じ方向へ群れをなして進む現象)


 さっきから私のことを『君、君』て連発しているけど、今どき『君』呼ばわりする人がいるなんて。

 昔の学園ドラマか?!


「聞いていますか、レナさん」

「あ、はい。聞いています」

「そこで相談ですが、今回の依頼は検証が必要になります」

「検証?」

「はい、依頼完了のサインをもらっただけでは終わらないということです」

「では、どうしろと?」

「もう一度、村にいきレナさんのいうことを検証をしたいのです」

「はあ~」

「もちろん、スタンピードを鎮圧したのですからギルドから別途、報酬をお支払いいたしますから」

「わかりました」

「それから確認が取れたあとの話ですが、レナさんの行った功績はSランクレベルです。私と王都にいき王の御前で認めて頂きはじめてSランクになることができます」

「あっ、別に私は今のままでも…」

「そうはいきませんよ。業績がある者を認めないのはギルドの沽券こけんに関わりますから。任せてください」

 いえ、そういう意味では…。


「それでは早急ですが明日、現場にいき検証しましょう」

 はい?今日、戻ってきたばかりですけど…。


「馬を出しますのでそれで向かいましょう。レナさんは馬に乗れますか?」

「いいえ、乗ったことがありません」

「では私が検証するので後ろに乗せていきましょう。では明朝、ギルドでお待ちしていますから」

 そういわれ仕方なく私は了承する。


 私はギルドをでて歩きながら考える。

 もうこの街からでた方が良いわね。

 なんだか面倒なことになりそうだから。

 王都にいくのもいいわね?

 それとも田舎の村に引っ込むのもありね。


 ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 ★ギルドマスター、ヘルミンの思惑

 翌朝になった。

 だがレナさんは冒険者ギルドにこなかった。

 城門の門番に聞いて回ったがそれらしい人が朝、出て行ったという。


 なにが気に入らなかったのか?


 証言に偽りがあったのか?

 それともSランクに上がるのが迷惑だったのか?

 そんなことはあるはずがない。

 人は誰でも上を目指すものだから。


 数日後、仕方なく私は部下2人を連れバビト村に向った。

 村長に話しを聞くと間違いなく殲滅しているらしい。

 ゴブリンの巣だったと思われる場所を聞きそこに向かう。


 するとどうだ?!!

 地面は抉れ山だったと思えるところは更地になっている。

 いや、ちがう。

 真横に大きな深い溝ができ、あちこちに大穴が開き陥没かんぼつをしている。

 これでは魔物の残骸さえ見つけられそうもない。



 私は唖然とした。

 これは爆裂魔法か?

 たしか彼女はこんな上位の破壊魔法は使えない、と聞いていたが…。


 連れてきた部下の1人が私にいう。

「ギルマス。至急、彼女を追いましょう」

「いや、やめておこう」

「どうしてですか?ここまでのことができる冒険者を手放すのは惜しいです」

「では聞くが、こんなことができる冒険者を君は拘束できると思っているのかい?」

「そ、それは…」

「さあ、街に戻ろうか」


 それ以降、冒険者レナの名を聞くことは冒険者ギルドではなかった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 応援頂いてありがとうございます。

 物語はこれにて完結です。


 次回からは世界観を変えて書いていけたらと思います。

 ありがとうございました。

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完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です- ジェルミ(Germi) @utamayu2014

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