第20話 思案

 私は冒険者ギルドに来ている。

 受付のリンダさんに呼ばれて行くと、指名依頼が入っていると言う。


「私にですか?」

「えぇ、そうです。詳細はギルドマスターから説明させて頂きます」

「そんなに大袈裟な依頼なのですか?」

「私にはわかりかねます。さあ、どうぞ二階へ」

 そうリンダさんに言われ二階のギルドマスターの部屋に案内された。


 トン、トン、


 リンダさんはドアをノックした。


「誰だ?」

「リンダです。レナさんをお連れ致しました」

「そうか、通しておくれ」


 そう言われ部屋に入ると、ギルマスのライアンさんがソファーに座っている。

「やあ、時間を取らせて悪いね。まあ、座ってくれ」

 そう言われ私はライアンさんの正面に座る。


 相変わらず筋肉マッチョのスキンヘッド。

 暑苦しい顔をしている。

 心の声は封印しておき話を始めようかな。


「私に指名依頼と聞きましたが、どんなことでしょう?」

「それは荷物運びさ」

「荷物運び?」

「依頼人はここの領主のマドック公爵だ」

「領主様がなぜ私に…」

「まず孫娘が隣街の舞踏会に呼ばれ、その荷物を運ぶのが依頼だ」

 そこでライアンさんは一息おいた。


「君の収納魔法はすでに、ギルド内では有名になっている」

「え?そうなのですか?」

「当然だ。あれだけの数の魔物を収納できるマジック・バッグは無いのだ。それを収納魔法を習得している者は聞いたことがない」


「それからまだある、君の戦闘力だ。サーベルウルフを倒した戦闘力が領主様は欲しいのさ」

「欲しいと言われても…」

「国である以上、有能な戦士が欲しい。それも貴重な収納魔法が使えるなら尚更だ」

「そう言うものでしょうか?」

「もちろんさ。戦闘力もあり何台も馬車が必要になる物資も、君が一人いれば済むのだ。こんな貴重な人材は無い」


 あぁ、終わった…。

 静かに暮らしたかったのに。


「君が公爵に準ずるなら爵位を与えてくれるだろう。君は興味があるかい?」

「いえ、まったく」

「そう言うと思ったよ。君がそう思っても公爵は諦めないだろう。だから一度は顔を合わせ、君を知ってもらった方が良いと思うよ」

「私自身がなびかないと言うことを、直接会って示せと言うことですね」

「そうだ」

「マドック公爵は、どんな方なのでしょうか?」

「そうだな。40歳前半の小柄で平民や冒険者を見下すこともない、貴族にしては気の良い方だ」

 私はただうなずいて聞いている。


「息子夫婦に孫がおり10歳の長女と8歳の長男の二人だ」

「そのお二人の舞踏会ですか?」

「いいや違う。舞踏会に行くのは長女のみだそうだ」

「では私は荷物を収納し、道中は馬車に揺られていればいいのでしょうか?」

「まあ、そういうことになるな。護衛も要求したら君は断るだろう?」

「もちろんです!!」


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