第5話 街へ

「あぁ、これは私の剣ですから」

 石の剣を収納するとパウロさん達三人の驚く声がハモった。


「しかし、どうやって?姿が見えませんでしたが…」

 パウロさんが質問をしてくる。

「私は剣技は出来ないし剣も重たくて持てません」

「でしょうな、その細い体では」

「その代わり収納魔法があります」

「収納魔法ですか?聞いたことがありませんが」


「私のスキルで物を収納したり、逆に指定したところに排出することが出来るのです。ダイアウルフが口を開けたところに上空から剣を落としただけです」

「ほう、それは凄い。しかしあまりそのことは言わない方がいいでしょう」

「どうしてですか?」

「スキルはその人固有のものです。まして収納魔法となれば、喉から手が出るほど欲しい人材だからです」

「なぜですか?」

「例えば運送です。今回の私の様に買い付けに行きその荷物を収納すれば護衛も少なく雇えこんなに便利なことはありません。容量があれば軍事にも使えます」

「そういうものですか」

「古代遺跡で発掘されるマジック・バッグという物もありますが、せいぜい貴重品を入れる程度しか入りません。それでも高価な物なのです」

「わかりました。狙われると言うことですね」

「その通りです。馬車一台分入るだけで一生遊んで暮らせるでしょう」

 転移の際にエリアス様が『鑑定と異世界言語、ストレージも付けておきます。これだけでもうまくやれば生活できるはずです』と言っていたっけ。


「それにレナさんのやり方では倒しても、相手によると信じてくれないかもしれません」

「どうしてですか?」

「レナさん自身が倒すところを見ていないからです」

 あぁ、そうか。

 影からこっそり覗いてる、だから誰がやったのかは証明できないと言うことね。


「特に魔物討伐は冒険者にとっては生活の糧となりお金になります」

 分け前で揉めると言うことね。

 まあ、それは私が一人の時に倒せば問題ないわ。


「あぁ、それから街はここから近いのでしょうか?」

「そうですね、このまま歩いて行けば夕方には着くでしょう。しかし馬もやられてしまいましたから、我々三人で馬車引きながらだと明日になるでしょう」

「それなら私も街に行こうと思うので収納しますよ」

「本当ですか?助かります」

「まあ、信用してくれればですけど」

「勿論、信用しています。例え取られたとしても、ここで命を落としていた可能性がありますから構いません」

「では収納しますね」

 私はそう言うと馬車を収納した。


「この馬とダイアウルフはどうしますか?」

「馬はそのままにして置けば、魔物や魔獣が片づけてくれるでしょう。しかしダイアウルフは冒険者ギルドで素材を買取ってもらえるので、持って行った方が良いでしょう」

 おぉ、冒険者ギルドだって!!

 ファンタジーが現実に…。


 ダイアウルフを収納し私達は歩き出す。

 命を救ってくれたお礼に、ダイアウルフの素材は私にくれるそうだ。

 有難い、持ち合わせがないから助かります。


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