第4話 レベルUP

 ダイアウルフを私は倒した。

 石の剣は魔物の体をつらぬきそのまま大地に突き刺さっていた。


 するとどこからか聞き慣れた音が聞こえた。

玲奈れなはレベルUPしました』

 ほう、やったわ!!

 レベルが5に上がっているわ。

『HP、MP、その他ステータスも上がった』

 なに、そのざっくりとしたアナウンスは?

玲奈れなはスキル、スナイパーを覚えた』

 これは良いわ、ストーンバレットの命中度が上がるわ。

 次は知識が欲しいわね。


 そんな事を考えていると何やら声がした。

「大丈夫ですか、パウロさん」

「これはいったい?」


 そこには商人風の男と護衛の内の一人が立ちすくんでいた。

 もう一人の護衛はダイアウルフの攻撃を受け倒れている。

「しっかりしろ、サルバ!!」

「うぅ、う~」

 攻撃を受けた護衛はサルバさんと言うらしい。


「ポーションだ!!早く飲め」

「う~、げほ、げほ」

 傷が深くポーションを飲むこともできないらしい。

 傷口にポーションをかけているけど効果が弱いようだわ。

 このままでは…。


「しっかりしろ、気を確かに持つんだ」

 それを見ているパウロさんは神妙な顔をしている。


 そんな状況を私は数十メートル先の木の陰から見ていた。

 こっそり。


 そろそろいいかしら。

 私はそう思い街道に出てパウロさん達の方に向かう。


「大丈夫…ではないですね」

 私はそう声を掛けた。


 誰もいないと思っていた街道に出て来た私に、パウロさん達は驚いている。

 早くしないと。

 私は倒れているサルバさんに近付き、ストレージからポーションを取り出す。

「駄目だ、ポーションはもう試した。もう間に合わないんだ」

「やってみなければわかりません」

 私はそう言うとストレージからポーションを取り出した。

 バシャ、バシャ、バシャ、

 サルバさんの傷にポーションをかけていく。


 するとどうだろう。

 ダイアウルフに受けた傷が消えて行くではないか…。

 凄い!!異世界スキル。


「う、う~ん」

 気がついたようね。

「飲んでください、ポーションです」

 そう言うと私はポーションの入れ物をサルバさんの口に近付ける。

 ゴク、ゴク、ゴク、

 ポーションを飲んだサルバさんの顔は赤みがさしてきた。



「これは凄い。俺の名はロドルフだ。相棒のサルバの命を助けてくれてお礼を言うぜ。でもこんな凄いポーションをもらっても、どう返していいのか分からない」

 ロドルフさんは三十代半ばの筋肉質。

 サルバさんは三十代前半で2人共剣士の様だ。


「それは気にしなくていいですよ。元手はタダですから」

「ただ?」

「自分で作ったのです」

「ご自身で作ったと…。申し遅れました。私は商人のパウロと言います」

「私は村野むらの玲奈れなと言います」

「なんと、家名持ちの方ですか。これは失礼いたしました」

「あっ、いえ、私は貴族ではありませんよ」

「そうですか。言葉使いと言い、てっきり高貴な生まれの方かと」

「レナと呼んでください」

「わかりました、レナ様」

「様もいりませんから」

「では、レナさんで。しかしあのダイアウルフは驚きましたな。いきなり襲ってきたと思ったら馬をやられ、他の護衛も逃げ出しまして。しかし不思議なものです。このままではと思っていたところ、あの雷のような剣が飛んできてダイアウルフを倒してくれました。これも女神様のお導きでしょう」

 そういうとパウロさんはお祈りのポーズをした。


 あぁ、そうだった。

 剣を回収しないと。

 私は左手をかざしストレージに石の剣を収納した。

 剣の支えが無くなったダイアウルフの遺体は、そのまま音を立てて横に倒れた。


 するとパウロさん達は驚いた顔をしている。

「レナさん、今のは…」

「あぁ、これは私の剣ですから」


「「「 えぇ?! 」」」


 パウロさん達三人の驚く声がハモった。


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