第44話 宿泊

「じゃあ、ここでお別れね」

「色々とお世話になりましたレナさん」

「レナおねえちゃん、またね」

「そうね、また会えたらいいね」

「このキックボードはお返しいたします」

「いいですよ。そのままお持ちください」

「しかし先ほどのお話ではとても高価だと思いますが」

「大丈夫です。記念に差し上げますから」

「ほ、本当ですか?ありがとうございます。助かりました」

「さようなら~」

 私は手を振り2人と別れる。



「さあ、お別れは済みましたかな。では参りましょうか?」

 今生の別れか?囚人か私は?

「商人ギルドはですね。ここから…」

「すみません。一度宿屋をとってから、落ち着いてからでいいでしょうか?」

「おぉ、そうでした。私としたことがつい焦ってしまいまして。ではどうでしょう、私が親しくしている宿屋がありますので今夜はそこでお泊り下さい」

「ありがとうございます。助かります」

「契約の件ですが明日の朝、宿屋に迎えに参りますのでよろしくお願いします」

「わ、わかりました」

 なんだかグイグイくるわね。

 恋愛免疫があまりない私にとっては押されると弱いわ~。

「ではまた明日お会い致しましょう!!」

 そうサンドロさんはニカッと笑い、歯を光らせ帰って行った。

 やれ、やれ、


 その日の夜の夕食は肉料理でとても美味しかった。

 さすが高級宿屋。

 でも宿泊費は自己負担。

 どんどん話が進むので宿泊費を出してもらえるのかと思ったら自腹でした…。

 冒険者だと言っているのに、そんなに羽振りよく見えたのかしら?




 ゴォ~ン!!ゴォ~ン!!

 朝、大聖堂の6時の鐘が鳴る。


 私は朝食を食べに食堂に降りた。

 お客はお金持ちそうな年配の人が多く、私が降りて行くと物珍しそうに見られた。

 まあ、冒険者の格好で、まして女1人だからね。


 この世界の朝は早い。

 陽が上ればもう仕事だ。

 雨が降ったらお店や外仕事の人は、仕事にならない人がほとんだ。

 まして旅人なら早く宿を出て少しでも目的地に進もうとする。


 食事を食べ終わり、迎えがくるのを待合室で待っている。

「おはようございます!レナ様。昨夜はよくお休みになれましたか?」

「はい、サンドロさん。ぐっすりと眠れました」

「それはよかった。では出発の準備はよろしいでしょうか?」

「いつでもできますよ」

「では、まいりましょうか?」

 外に出てみると迎えの馬車はきていなかった。

 商人ギルドまで歩きなのね…。


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