第23話 板バネ

 この馬車の乗り心地は最悪だわ!!


 路面からの凸凹がそのまま伝わってくる。

 しかも土むき出しで路面も悪いから最悪。


 よくこんなの我慢できるわね。

 元居た世界の快適さに慣れた私はどうしても比較してしまう。


 私はそう思いどうにかならないものなのか考えた。

 すると忘れていた【スキル】に、世界の予備知識というのがあったことを思い出した。

 そこで色々と調べ良いことを思い付いた。


「こ、これだわ!!」


 私は思わず大きな声を出してしまった。


「いったいどうしたのかね、レナさん」

「すみません、つい。でも馬車の乗り心地が物凄く悪くて…」

「まあ、馬車はこういう物と思っているが」

「いいえ、私には我慢できません。このままではあまりの痛さに、お尻が割れてしまいます!!」

「ぷっ、レナさん。お尻はもう割れていると思うがね」

 それを聞いたヘーゼル公女がクスクス笑っている。


「あっ、いえ、そうではなくて。馬車の乗り心地が悪いので、乗り心地がよくなるように改造したいのですが宜しいでしょうか?」

「君は木工加工の技術を持っているのかね?」

「えぇ、まあ…」

「では街から帰ってから、やってもらえれば助かる」

「あ、いえ、今やらないと意味がないのです!!」

「だが、こんなところでなにができるのかね」

「できます。馬車を止めてください」

「わかった。おい、馬車を止めてくれ」

 公爵は馬車の中から御者ぎょしゃに声を掛けた。


 少し広い馬車を道の脇に止め、馬車から降りて頂いた。

「いったい何をするのかね?」

「公爵様。まあ、私を信じてください」

 そう私は言うと馬車二台をストレージに収納する。

「なっ?!」

 それを見ていた人達は口を開けて驚いている。


 私は【スキル】世界の予備知識で車の『板バネ』を見つけた。

 複雑なサスペンションは無理だけどこれなら…。

 収納してある木々で『不変』で強化すれば間に合うわ。

 まずは強度を出すために、創生魔法を使い木々を加工し形成していく。

 そしてストレージの中で馬車を改造していく。


 これが解体屋さんなら、どんなに手間がかからないことだろう。

 頭の中で想像すれば良いのだから。



 ふぅ~、やっと終わったわ。

 そして私は馬車二台をストレージから出した。


〈〈〈〈〈 ドンッ!! 〉〉〉〉〉


 するとそれを見ていた人達が、一斉に飛び上がる。


 う~ん!!

『お約束』は世界に通じる…。


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