第22話 馬車
ラルフの街へ出発したのは良いけど、私は公爵が居る馬車に乗っている。
なぜこうなった?
時は遡る。
マドック公爵の屋敷に到着した私は門番に名を名乗り敷地の中に入った。
すでに出発の準備は整っているようで私は公爵に挨拶をした。
「やあ、君がレナさんかい。今回は宜しく頼むよ」
気さくな人柄なのかマドック公爵は私に話しかけてくる。
そして家族をなぜか一通り紹介された。
私が馬車二台分はありそうな荷物をストレージに次々に収納していくと、おぉ~!という歓声が上がった。
よほど珍しいのかしら?
今回向かう馬車は二台ある。
一台が公爵、ヘーゼル公女、執事のカドマスさんと侍女一人。
もう一台が侍女5人と私だ。
だけど馬車に乗る段階で違和感に気づいた。
なぜか私が侍女の代わりに公爵側の馬車に乗ることになっている。
????
どこに乗っても同じだろう、と言われ断ることもできず乗ることにした。
私とカドマスさんが同じ席に並び、向かいの席は公爵とヘーゼル公女だ。
重たい空気の中、ヘーゼル公女が私に話しかけてきた。
「レナさんは冒険者になられて、どのくらいですか?」
好奇心旺盛な目をクリクリ輝かせている。
「ヘーゼル公女様、冒険者に登録したのは最近です」
「え?そうなのですか。おじい様が依頼するくらいなのでベテランの方かと」
「まあ、色々ありまして」
「これ、ヘーゼル。あれこれ聞いてはいけないよ」
「だっておじい様…」
「いえ、しかしなぜ私が同じ馬車なのでしょうか?」
「孫のヘーゼルが冒険者に興味があって話を聞きたいと言うのさ」
「たいしたお話はできませんよ」
「構わんさ」
そう公爵に言われヘーゼル公女と私は道中、他愛のない話をしていく。
公爵はその会話を楽しそうに聞いている。
公女様の話によれば今回は社交界デビューの顔見世だとか。
貴族は12歳になると結婚が可能になるそうだわ。
相手が見つけられない場合は学院に入学し、勉学を極める貴婦人を目指すそうだ。
普段、家から出ない貴族は外部の人と関わり合うことがない。
だから学院は相手を見つける良い機会にもなると言うことらしい。
護衛の騎士は徒歩なので、途中何度も休憩を挟み馬車は進んで行く。
まあ、馬車の乗り具合も最悪で路面の凸凹がそのまま伝わってくる。
あ~、もう我慢できない!!
「公爵様、お願いがあります」
「なんだね、レナさん」
「私には馬車の乗り心地が最悪で、お尻が割れてしまいそうです!!」
「何を言っているのだね、もう割れているだろう?」
それを聞いたヘーゼル公女はクスクス笑っている。
なにかないかしら?
このまま何時間もなんて無理だわ。
そうだわ!
私は忘れていた。
【スキル】世界の予備知識というのがあったわ。
そこで色々と調べてみた。
「こ、これだわ!!」
私は思わず大きな声を出してしまった。
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読んで頂いてありがとうございます。
あっという間の1年でした。
また来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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