第13話 容姿

 私は宿屋街に向って歩いている。

 途中、市場や屋台がありたくさんの人々で賑わっている。


 夕方になり宿屋が決まった人が多いのか客引きも少ない。

 しかし困ったわ。

 初めてきた街だからどんな宿屋なのかもわからない。

 すると私は誰かに袖を引かれた。

「ねえ、おねえちゃん。宿を探しているの?」

 見るとそこには五歳くらいの女の子が居た。


「えぇ、そうよ。でもいい宿が分からなくて…」

「うちにおいでよ、うちなら朝晩の食事付きで三千円だよ」

「まあ、可愛い客引きさんね。ではお願いしようかしら」

「やった~!!さあ、中へどうぞ」

 そう言われ店の中に入る。


「おとうさん、おかあさん。お客さんを連れて来たよ」

 すると奥から男性と女性が出てくる。

「まあエビータ。無理に連れて来たのではないよね?」

 そう男性が答える。

 エビータと言うのか、この女の子の名前は…。


「違うよ。おねえちゃんが宿を探している、っていうから」

「そうです。しっかりしたお嬢さんですね」

「これは、これは。いらっしゃいませ。泊りなら食事が朝晩付いて三千円です」

 泊まってみないとわからないから取りあえず…。

「では一泊で…」

「一泊なの?」

 エビータちゃんが目を潤ませてこちらを見ている。

 恐るべし五歳児の可愛さ。


「では二泊でお願いします」

「ありがとうございます。俺はここの宿屋の主人でリカルド、妻のロザンナと娘のエビータだ」

「私はレナです。よろしくお願いいたします」

「まあ、礼儀正しいのですね」

 ロザンナさんが驚いた顔をしている。

「料金は前払いになるよ」

 そう言われ私は料金を支払う。


「夕食は五時の大聖堂の鐘が鳴ってから、朝食は六時の鐘に合わせて食べれます。夕食はもう少しで食べれますからお待ちください」

「わかりました」

「一人旅ですか?」

「えぇ、まあ、」

「女性の一人旅とは珍しい。おっと余計なことを…。部屋は階段を上がった奥になります」

 私は鍵を受け取り二階に上がって行く。

「おねえちゃん、泊ってくれてありがとう」

 エビータちゃんが愛らしく微笑む。


 部屋の中に入ると木のテーブル、椅子、ベッドとタンスがある。

 ワンルームの広さね。

 しかし部屋には鏡が無い。

 もしかすると鏡は高級なのかもしれない。


 お金もパウロさんから頂いた200万があれば一年は暮らしていける。

 それに魔物の素材がいくらになるのか知らないけど後から入る。


 廊下を見渡すと身だしなみを確認するための、壁掛けの金属板を磨いた鏡があった。

 見てみると身長162cmくらいで、黒髪・黒い瞳、東洋系顔の自分が写っていた。

 日本人は若く見えるていうからね。

 だからみんな子供に接するような言い方をしてたんだなと、改めてわかった。


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