第12話 パウロ商会

 私はパウロさんと二人で並んで歩き商会に向っている。

 助けたお礼をもらえるそうだ。

 ありがたいわ。

「着きました。ここです」

 見ると平屋のお店で穀物だろうか、軒先にたくさんの商品が置かれていた。

 ちょっとしたコンビニ位の広さね。


「まあ、あなた帰って来たのね」

 店先にはパウロさんと同じ40歳くらいの女性が立っていた。

「ただいま、バーブラ。今帰ったよ」

「お帰りなさい、あなた。あれ?馬車はどうなされたのですか?」

「あぁ、そうだった」

「親父、お帰り。遅かったな」

「心配したよ」

 奥から20~25歳位の男性が二人出て来た。

「色々あってな。心配をかけた」

「ではレナさん、こちらに馬車を出して頂けますか?」

「わかりました」

 そう言うと私はストレージから馬車を出した。


〈〈〈〈〈 ドンッ!! 〉〉〉〉〉


「こ、これは…。親父いったいどう言うことなんだ?」

「エイハブ、実は色々あってね」

「その女性は…、まさか愛人か…、親父だけは金におぼれないと思っていたのに」

「なにをいっているんだエイハブ。レナさんに失礼だろう」

「しかも若くて可愛い…」

 なんだ?


「レナさん紹介します。妻のバーブラと長男のエイハブ、次男のネビルです」

「こんにちは、初めまして。レナです」

「ほれ、お前達も挨拶をしなさい」


 互いに挨拶をかわしパウロさんが、三人に事情を話した。

「そんなことが…」

「ダイアウルフなんて上位の獰猛な魔物だろう。よく無事で」

「まあ、よくご無事で…」

「しかしレナさんに出会えて命拾いしたよ。それに収納魔法がこれほど便利とは。先ほどまで荷物のことなんて忘れていましたよ」

 誤解が解け和やかな雰囲気になった。

 家族が居て心配してくれる、なんだか羨ましいな。

 私にはもう家族は居ない。

 生前の記憶もよく覚えていないし…。

 未練が無いようにということかしら。


「さあ、立ち話もなんですから応接間へどうぞ」

 そう言われ奥の部屋に案内される。

「なんだ、お前達は仕事を続けなさい」

 そのまま着いて来ようとした息子二人と奥さんは、すごすごと仕事に戻って行く。


「さあ、どうぞお掛けください。お見苦しいところをお見せいたしました」

「いいえ、いきなり若い女を家に連れてきたら、家族の方も変に思われるでしょう」

「私も信用がないですな。ではちょっとお待ち頂けますか」

 そう言うとパウロさんは部屋を出て行った。

 しばらくして部屋に戻ってきた。


「お待たせいたしました。お受け取り下さい」

 そう言うと袋をさし出した。

「これは…」

「助けて頂いたお礼です。あいにく今、我が家ではこれしかご用意できません。足りないと言うのでしたら、後日またお金が出来たら差し上げますから」

「おいくらですか」

「200万です」

 200万と言えば一般市民が普通に働いて一年以上の年収だわ。

 急遽、集めるのは大変だったでしょう。


「いえ、これで十分です。魔物の素材を売ったお金も後から入りますから」

「そう言って頂けると助かります。今夜の宿屋ですがお勧めはありますか?」

「そうですね、実際に泊ったことが無いので何とも言えませんが。店を出てしばらく行くと宿屋街があります。三千円あれば朝晩の食事が付くでしょう」

「そうですか、良さそうなところを探してみます」

「落ち着いたら、遊びに来てください。商売の話もしたいので」

「わかりました、ありがとうございました。ではまた来ます」


 そう言って私は商会を後にした。


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