第14話 報酬

 夕方になり大聖堂の鐘が鳴った。

 一階の食堂に降りて行くと何組も人が居た。

 その日の夕食は野菜スープと硬いパンだった。

 異世界定番の食事ね。


 夜は灯りに使う油が高いので部屋は月明かりのみ。

 特に何もすることがなく、横になっていたらいつの間にか寝て居た。

 気がつくと朝うお朝だ。


 私は朝食を摂り部屋で時間を潰した。

 冒険者ギルドへ行くにしろ、混んでいる時間帯は避けたいから。


 宿泊の人が旅立ったころ私は宿をでた。

 ロザンナさんに聞くと、今の時刻は多分八時ごろだと思うと言っていたから。

 空いているといいな。

 冒険者ギルドの中に入ると、人はまばらだった。

 よかった。


 掲示板には新しい案件は無くなり、残っているのは難易度が高そうな物ばかり。

 まあ私は薬草採取だけやろうと思っているから常時、依頼が出ているからいいわ。

 持っているのは薬草、上級薬草、火炎草、魔力草、毒消し草、麻痺解除草などだ。

 この世界に来た時に薬草を鑑定で調べ、採取しておいたからこれを出せばいい。


 受付を見ると丁度、リンダがいた。

「おはようございます、リンダさん。これをお願いします」

 私は薬草採取や他の採取の依頼書を出し、台一杯にストレージから薬草を出した。

「まあレナさん。朝からこんなに。査定をしますからお待ちくださいね」

 そう言われ私は待合室の椅子に座り待つ。

 するとリンダさんがやってきた。


「レナさん、ギルドマスターが呼んでいます。案内しますからどうぞこちらに」

 そう言われ二階の応接室に案内された。


「やあ、ダイアウルフの買取り金額が出たよ。それから公爵にもこの件は伝えておいた。一度会いたいとおっしゃっていたが、レナさんが嫌がると思ってやんわり断っておいたよ」

 あぁ、よかった。

「それは助かります」

「その代わり公爵からも今回の報奨金を預かっている」

「はあ、ありがとうございます」

「素材買取は300万。報奨金は街をすくってくれたと言うことで500万だ」

 パウロさんから頂いた200万と合わせれば一千万。

 五年は遊んで暮らせるわ。

 でもいつかはお金は尽きる。

 真面目に働かないとね。


「レナさんは貴族とかに興味はあるのかね?」

「いえ、ありません」

「そうか、それはよかった」

「それがなにか?」

「いいや、なんでもないんだ。これからも冒険者ギルドをよろしく頼む」

「わかりました」

 私はそう言いながら部屋を後にした。



「レナさんお待たせいたしました。薬草の買取り額です。状態も良く鮮度も良かったので、少し高く買い取らせて頂きますね」

 売却した薬草は丁度60本で渡された金額は六千円だった。

 1本100円か。

「しかしよくこれだけの本数を採取できましたね。採取だけで食べていけますね」

 そうか、それもありですね。

 そう思いながら私は冒険者ギルドを後にした。


 ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 私は冒険者ギルドのマスター、ライアンだ。

 公爵は強い冒険者を取り込もうと、しきりにレナさんに会いたがっていた。

 女性でも家を継いで伯爵になる事例もあるからだ。


 ギルドとしては冒険者を取られるのは困る。

 しかしレナさんが爵位に興味がなくてよかった。


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