第7話 どっち?

 夕方近くになり陽が陰り始めた頃、城壁が見えて来た。


「やっと着きましたな」

「あれがタラスの街ですね、パウロさん」

「えぇ、後もう少しですから」


 すると城門の辺りにたくさんの人が集まり、盾や剣を持ち慌ただしい気配がする。


「パウロさんではないですか?!」

 顔見知りなのか城門にいた兵士に声を掛けられる。

「あぁ、やっと帰って来れました」

「ダイアウルフに襲われ亡くなられたと聞きましたが…」

「誰が言ったのでしょうか?」

「生き残った公冒険者4人が街に戻り知らせてくれました」

 兵士が指差す先には冒険者と思われる男4人が立っていた。

「いいえ、違います。彼らは護衛を放棄して逃げたのです」

「な、なんですと!!」


「おい、そいつらを捕らえろ!!私は冒険者ギルドのギルドマスター、ライアンだ」

 側に居たいかつい顔の男の人が大声を出す。

「わっ!パウロさん、よくぞご無事で…。放せ!!放してくれ」

「職務放棄は重罪だ。引き立てろ!!」

「ライアンさん、違うんです!!」

「まさか、生きているなんて…」

「これは誤解だ~」

 4人の冒険者は口々に何かを言い引き立てられていった。


 ライアンと名乗った男が近づいてくる。

 40歳位で筋肉マッチョ、スキンヘッド、ランニングのような服を着て太い腕を自慢げに出している。

 夜道で出会いたくはないタイプだわ。

「改めまして、私は冒険者ギルドのマスター、ライアンだ。この度はギルドの者が迷惑をかけた」

 そう言うと軽く頭を下げた。


「しかしよくご無事で。今、人を集め討伐隊を編成しているところだ」

「あ~、それはもう必要ないかと…」

「必要ないとは?どう言うことだ」

「実はすでに討伐済みなのです…」

「おぉ、では連れている2名の冒険者が討伐したのだな」

「あ、いえ、俺達は…」

 サルバさんがそれを否定する。


「では誰が?」

「ここにいるレナさんです」

 そう言うとサルバさんは私を手招きした。

「このお嬢さんが?」

「そうです」

 まあ、お嬢さんだなんて。

「冒険者なのか?そうは見えないが」

「レナさんはこれから、冒険者登録をする方です」

「これから?ではどのギルドには属していないと」

「えぇ、そうです」

 私はサルバさんに代わりそう答える。


「しかしどうやって。証拠はあるかね?素材は持ち帰っているかい?」

「では出しますね」

「出す?」

 私は城門近くの空いているスペースにダイアウルフを出した。


「こ、これは…。驚いた…」

 突然、何もない空間からダイアウルフ出したことに驚いているのか、ダイアウルフに驚いているのか?

 どっち?


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