第30話 試射

 私はストレージから全長1mはある、スナイパーライフルМ110改を取り出した。

 木目のストック、銃身の黒い鉄の色。


「おぉ、なんと美しい」

 公爵が歓喜の声をあげる。

「これはなんですの?」

 ヘーゼル公女も興味深そうに聞いてくる。

「これは狙撃銃といいます」

「狙撃銃??」

「えぇ、そうです。遠距離から目標を撃つ銃のことです」

「撃つ?銃とはなんだね」

 あぁ、そこからなのね。

「まず銃は筒状のこの銃身から鉄の弾を発射する道具です」


 侍女や兵士達も集まって来た。

「そしてこの銃は7km先の目標を撃ち抜くことが可能です」


「おぉ!!そんな距離から攻撃を与えることができるのか?!」

「そんな遠くからなんて…。それが本当ならとても卑怯な武器ですね、おじい様」

 グサッ!!

「まあ、正々堂々が貴族の信条だが、時には生き残ることを優先することもある。死んでしまったら元も子もないからね」

「何が何でも生き残ることが、大事と言われるのですね」

「そういう時も、あるということさ」


「では試し撃ちをしてみます」

 私がそう言うと侍女や兵士達も近寄って来た。


 まずは五十発用のマガジンを付けてと…。

 カチッ!!

「行きます。大きな音がしますから、両耳を塞いでいてください!!」

 私がそう言うとみんな両手で耳を塞ぎだした。

「では行きます!!」


 バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!

  バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!

   バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!

  バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!

 バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!


 薬きょうが飛び、秒速15発のマシンガンが火を噴く!!

 そしてあっという間に弾を撃ち尽くす。


 辺り一面の木々は無残に倒れ威力の強さを物語ってた。

「これは…凄い」

 公爵はあまりのことに呆然としている。

 侍女や兵士達は目を輝かせている。


「こ、これはおじい様。立派な自然破壊です!!」

 ヘーゼル公女が呟く…。


 グサッ!!




 では今度は遠くに狙いを付けの狙撃ね。

 私はストレージの中で空き缶を創った。

 銃の練習と言えば空き缶でしょ?


 少し離れた場所に空き缶を何本か立てた。

 ますは距離を取り1本ずつね。

 スコープで狙いを付け撃つ!!


 バッ!!


 初弾は右にそれた。

 少し癖があるのね。

 ではやや右を狙って、と。


 バッ!!

 カンッ!!


 お~、当たったわ!!


 見ていた公爵やヘーゼル公女、侍女達も手を叩いている。


 缶との距離を開け遠くでも当たるように練習をした。

 М110改の弾が右に飛ぶ癖も修正をした。


「これは本当に凄い武器だ。いいや、これはレナさんのスキルなのか」

「本当ですわ、おじい様。こんなに遠くから攻撃されたら防げませんわ。本当に卑怯ですわ」


 グサッ!!


「しかも正々堂々と戦わないなんて。これでは太刀打ちできません」


 グサッ!!

  グサッ!!


「いくら凄いスキルを持っていても、卑怯で臆病者では…」


 グサッ!!

  グサッ!!

   グサッ!!


 言葉のナイフが突き刺さる。



 さて弾用の収納した剣の鋼もそろそろ、無くなってきたわ。

 少し節約しないと。


 どこかで鉄や鋼が手に入らないかしら?

 剣を購入して潰すには高すぎるし。

 そうだわ!!


「マドック公爵、お願いがあります」

「なんだね?私に出来ことであれば」

「今回の報酬は鉄や鋼でほしいのです」

「それは良いが、どうしてだい?」

「このМ110改の弾にするからです」

「なんだ、弾はスキルで無限に出てくるものだと思っていたよ」

「いえ、そうではありません」

「わかった、出来る限り都合しよう。それと…」


 マドック公爵は何か言いたそうな顔をしていた。

 えぇ、わかってますよ。

 男の人は銃が好きですから。

 ロマンですよね、わかります。

 そのスナイパーライフルを撃たせてほしいと、先ほどから目が訴えています。


 でも駄目です。

 これは私のです。


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