第31話 幼子の名はリーダリア
「ドルマ様こちらです。」
先行させていた捜索隊が不思議な
その場所は森の開けたところにある直径10mぐらいの、ちょっとした泉のようだ。
「美しい…」
私は思わずつぶやいた。もちろん私には幼女趣味などはない。が、泉に浮かぶ真っ白な整った顔立ち、スラリとした美しい体は、神が作りたもうた造形美と言おうか…美しい肢体であった。この子自身が女神だと言ったら、私たちは無条件で信じてしまったかもしれない。しかし…
「ドルちゃん…この子は…なんというか近寄りがたい…というか私は近寄りたくない…嫌な感じがプンプンします。」
あの気の強い前髪を切り過ぎたエルも、この子から感じる普通とは違う匂いを感じとっているのであろう。
「確かにな、他の者は下がっていろ。俺が接触する。何か拭くものと着させる物を用意してくれ。」
とりあえず泉の中央付近に漂う
その木をここから伸ばして
「ちょ! なんていう扱いをするんですか! …ふつうの
何をそこまで言わなくても…と思わなくもないが、周りを見渡すと他の者達も青ざめた表情をしていた。
「ほんのジョークです。」
あくまでも冗談でしたとアピールしておいた。…まぁみんな全く笑ってなかったけどね。
とにかくエルに怒られてしまったので、今度は木を
「
いくら親しく接してくれと頼んだのは自分だからといって…前髪切るぞ!はひどいのではないないだろうか…あっ、前髪どころか髪の毛無かったわ俺!
しょうがないので、本当は濡れるのがいやだったのだが…そのまま泉の中に入り、
「どうやら呼吸はしているようだ。寝ているのか、気絶しているのかは定かではないが…さてと。」
これからどうするか…とりあえず今日の捜索はこれまでとして、この
「やっぱり、この子を起こした方がいいな。」
そう思いたった私は、近くに落ちている木を使って…
「やめ〜い! 木を使うな!
なにいいいいいい〜なぜ私が女の人にモテないと知っているのだ…。だいたい六階位といえば実力と権威を兼ね備えた人格者だ、普通はもてて、もててもしょうがないぐらいモテまくるはずなのに…全くモテない。っていうか
「結婚してもいないから逃げられてないわ! ぐっすん、ちなみにエルは…」
「あっ私はモテてモテて困っちゃうぐらい、より取り見取りでした。その中から選りすぐった精鋭と3ヶ月前に結婚した新婚ホヤホヤです。」
「エルはこれから私にちゃんと敬語を使うように! そしてドルちゃんなどと気安く呼ぶのを禁ずる! これは最重要伝達事項だ!」
「そういとこ~、そういうとこだよ~ドルちゃん!」
私たちが
「ううん…なんじゃ、うるさいのう…」
「お前達は誰じゃ?」
「私はドルマと申します。あなた様のお名前を伺っても?」
「ふん、脆弱な人間風情に名乗る名前はないわい。」
なかなかふてぶてしい態度をとる
「あなた様は見るからに気品があり、それでいてかなりの力量を有していらっしゃる実力者とお見受けします。ぜひとも私どもにお名前を教えていただけないでしょうか。」
「ふん、我にそんな見え透いたお世辞を言いおって。そんな事で情にほだされて気持ちよく名前を言うと思うな! 我の事はリーダリア様と呼ぶのじゃ。」
…リーダリア様は気持ちよくなられたようだ。
「リーダリア…わかりました。これからはリーダリア様と呼ばさせていただきます。私の事はエルとお呼びください。」
「そうか分かったエル。それで、そこのムサ苦しい髭禿げマッチョは誰じゃ。」
「はい、このムサ苦しい髭禿げマッチョはドルマと言い六階位の力を持つ者です。ヒゲハゲマッチョとお呼びください。」
「勝手にあだ名で呼ばすなよ! ドルマの方がヒゲハゲマッチョより呼びやすいだろう!」
「ほう、ハゲチョは六階位か…ハゲチョがこの中では階位が一番上のようじゃが…ハゲチョやるではないか、ハゲチョのくせに。だが、まだまだ六階位なんぞ赤子のようなものじゃ。怠るなよハゲチョ!」
「ヒゲハゲマッチョを略してハゲチョという新たなる称号をいただき大変光栄でございます、リーダリア様。」
「いや、お前が勝手に称号を喜んで承るなよエル! 本人は全然光栄でも何でもないんですけど~」
「それでリーダリア様はなぜこの泉に?」
エルが私のツッコミを完全無視して、単刀直入にリーダリア様に聞いた。
「何、この先の村に用事があったのじゃ?」
「!!!」
この先の村…キーフ村の事か。まさか…村人200人を殺したのは…
リーダリア様の言葉を聞いた途端に周りがピリつく。
「ほう、なんじゃ殺気まで放つ者がおるようじゃが…我に実力行使を働くつもりではあるまいな。脆弱な虫けらのくせに…クフフフフ。」
その言葉を聞き皆が一斉に臨戦態勢を取るが…エルが皆を手で制す。
「リーダリア様、無礼お許しください。しかしそのキーフ村はつい先日村人200人が一斉に消えてしまうという事件があったばかりなのです。今現在も調査中なのですが原因が分かっておりません。ぜひともリーダリア様のキーフ村の用事というのを教えていただけないでしょうか。」
まだリーダリア様が村人200人を殺したと決まったわけではない。我々の勝手な思い込みをエルが制してくれたが…エルが皆を制した時の手の形は合図になっていた。それは…
“しばし待て。確証を得られれば一斉に攻撃をかける”の合図だった。
正直リーダリア様には我々が束になっても勝てないであろう。だからと言って村人達を皆殺しにした相手を、自分達が負けるからと言って、ハイそうですかと見逃すわけにはいかないのだ。
もちろんリーダリア様の存在を知らせるための伝令は、ガイゼル様の元へ今走っていった。これで私たちがここで全滅しても無駄死ににはなるまい。
まだ新婚なのにエルはここで死ぬ覚悟を感じる。しかしここは俺の命をかけてでも、彼女だけは逃がしてやらねば。
そしてしばらくの沈黙後、エルの質問にリーダリア様が答えた。
「…キーフ村というのかあの村は…村人が200人死んだのか、クフフフフのフ。」
リーダリアは我々を茶化すように口角を上げて笑った。
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