第42話 白い部屋の子供?
白い部屋の住人。
僕が意識体としてまっ暗闇の中で長い間
“命素”により本当にどうしてかわからないのだが…唐突に導かれた先が真っ白な何もない空間だった。
その時に現れた人ならざる存在。神ではないと本人は言っていたのだが…
その時に会ったのが、見た目が小学生のようで右目は髪で隠れているが、左目がちょっと目つきの悪い子供?だったのだ。
確か…あの時彼は(性別も謎だが容姿が少年ぽいので)僕の事を矮小な存在だと言って歯牙にもかけない様子だったような…ああなんか、いろいろと思い出したら段々腹が立ってきた!
こんなにも可愛い僕を、見るからに初々しい完熟フレッシュな僕を! 取るに足らないその他大勢のちっぽけな存在だと一蹴して、こいつに訳も分からずに消されたんだった。
ムキーーーーーッ!
よし、ここはわざわざ僕のテリトリーにヅカヅカと土足で上がり込んできて、この恐怖の館のような部屋へと閉じ込めた事に対する苦情を言ってやらなければ気が済まない!
よし! ガツンと強く言ってやる!
「へへっ、この矮小な存在なわたくしめに、
もみ手をしながら思いっきりへりくだってやったぜ、へへっ。
……………………
……無視してるやん。
……ガツンと言ってやったのに、僕無視されてるやん。
こっちが思いっきりへり下ってやったのに、どうやら奴は全然聞いていなかったみたいだ。
奴はアスナル様の体を使って、何かもぞもぞとやっているようだった。しばらくその様子を見ながら待っていたら、
《グッぐがああ、あ、あーあー、これでよしと。》
今までアスナル様の口の中からスピーカーのように機械的な声が流れていただけなのだが…ちゃんと口の動きに合わせて声が発せられるようになったみたいだ。
そしてアスナル様の体の可動範囲を確認するように、関節を曲げたりして準備運動のようなことをしている。しばらく軽く動かした後、僕に向き合った。
《ああ、こちらの世界に多少順応出来てきたようだ。この貧弱な体もやっと動かせる。》
顔はアスナル様のままで、声が少年のように高い声なので違和感がすごい…安田大サーカスのクロちゃんを初めて見た時のような違和感だ。ものすごく気味が悪いな…(個人的な感想です)
《もうコイツらは必要ないな。》
そう言うとタナンさんと他2人の人はバタッとその場で倒れた。
たぶん、4人の中で波長が合う人を探していてアスナル様が選ばれたから、他の人は必要なくなったのだろうと思う。
だけど…神のように、すぐに体を自由に乗っ取って操ったり、こちらの世界で自由奔放に好き勝手出来るわけじゃないんだなと、分かって少し安堵した。
だって神に等しいのだとしたら、こちらには対抗しようがないじゃないか。さっきからコイツの言葉を聞いていると…少なからず僕に対して敵意を感じるような気がするのだが…僕には全く身に覚えがない。
どちらかというと僕のほうが恨みを持つ側じゃないのか? だって白い部屋でないがしろにされて、討ち払われて今に至るのだから。
まぁずっと暗闇に囚われていた僕を解放して転生させてくれたのがコイツなら感謝しかないのでここで五体投地しても良いぐらい喜びを表現してやってもいいのだけれど…コイツにそんな力があるとは思えない。
なんて事をコイツと対峙しながら考えていたら、向こうから声をかけてきた。
《やっと見つけたぞ。手間をかけさせやがって。》
「僕としては隠れていたつもりはないんですけどね。」
《…確かにお前からは何年も意図的に、私の目を盗めるような知性が感じられないな…他の要因? それとも協力者か?》
「いや、僕めちゃめちゃ賢いからね。マジでマジで! 毎回タナンさんをイノシシの罠にかけたり、偶然やドジっ子を装ってタナンさんをイノシシの前に突き出したりしてたんだからね!」
《…そのタナンとやらはどんな奴かは知らんが、そいつにどんな陰湿な恨みを持ってたんだよ。》
「いや、恨みは全くないんだけど…リアクションがおもしろくて、つい。」
《ついって…まぁそんな話はどうでもいい! 貴様はこの世界ではセイと言ったか。》
「いえ、違います。僕の名前はダイナミック・セバスチャン五郎、略してセイです。」
ブン
「おおっと、いきなり何をするんですか! 暴力反対!」
《何言ってるのか分からんが、おちょくられているのは分かるぞ。》
あっぶなー、まさか予備動作なくイキナリ打ち込んでくるとは…さすがアスナル様の体だ。乗っ取られているとはいえ身体能力が高い。これがタナンさんだったら反対にクロスカウンターを食らわすところだったんだけどね。
《ふん、セイとやら、前に言っていた“命素”とやらだったか? この世界でもその力はつかえるのか?》
「もうすでに体全体を“命素”で纏っています。よかったら僕の体を殴ってみてください」
ブン
ブンブン
ブンブンブン
《…殴ってみろと言っておいてなぜ避ける?》
「ただ黙って殴られるとは言ってませんけど…だって当たったら痛そう…バキキ! 痛いっ!」
人が喋っている途中なのに目にも止まらぬ速さで顔面を強打された。もちろん顔も“命素”で覆っているから本当は全然痛くないんですけど、つい条件反射で。
《…痛いと言っておきながら、実際は痛くはなさそうだな…ただ単に打たれ強いだけなのか?っなっと。》
ボワッ
キンッ
ピッ
鬼か! 間髪入れずに火魔法、氷魔法、光魔法を顔面に向けて照射してきやがった。
まぁ、全部“命素”で難なく防いでやったんでうけどね…ドヤ顏で。どや〜〜!
《…その顏めっちゃムカつくんですけど。》
「生まれつきですよ、この顏は。でもみんなは可愛いね、セイ君は可愛いねってよく言ってくれます。」
《そのよく言ってくれる人たちというのは、セイの脳内妄想でない事を祈るよ。ふむ…確かに防いでいるな。しかし…やっぱり全く“命素”とやらを感じる事が出来ない。》
そう言ってアスナル様の顏で考えている様子だった。
………………
…長考だ。もうすでに30秒も黙っている。寝ているんじゃないかと疑ってもみたが…何やらブツブツと僕には聞こえない独り言を言っている。しょうがないから僕から声をかける。
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