第41話 不穏な気配

 目が覚めた僕は裸だった。


 リーダリアに思いの丈をぶちかました僕は泣き疲れて寝てしまっていたようだ。


 太陽がもう僕の真上まで昇っていた。日差しが眩しくて目が覚めたようだ…一緒に居たはずのリーダリアの姿はなかった。一体どこに…って起きたら素っ裸じゃないか! 


 一晩中素っ裸で寝かされていたのか僕は? 何でリーダリアは僕に服をかけてくれておいてくれなかったの…あれ? よく見ると僕の股間には葉っぱが添えられていた。



 ……………小さい葉っぱが申し訳なさ程度に添えられていた。


 葉っぱがちょこんと僕の性器の上に添えられているのは、素っ裸でいるよりも恥ずかしい。小さい葉っぱなのはリーダリアの優しさなのか?


 …そんな優しさなんぞいらん!


 どうせなら大きい葉っぱでいいじゃないか! 大は小を兼ねるということわざを懇々と2時間は説教してやりたい気分だ。


 朝から(もう昼だけど)服を着ながら、たかが葉っぱ一枚の事で憤慨していると、茂みからいつもイノシシ狩りをしているタナンさんと他2名のメンバーと遭遇した。


 僕を見るなりみんなは驚いた顔をした後、だだっと駆け寄ってきた。


 「セイ!無事だったのかお前、探したんだぞ!」

 「嫌だな〜タナンさん、大げさですよ。確かに昨日は村に帰ってませんでしたけど、たった1日戻らなかっただけで。」


 「何言ってるんだセイ! お前は1週間も村に帰ってきてなかたんだぞ!」

 「………は?」


 「お前が帰ってこなかった3日目から村は大騒ぎになって、村人全員で森に入って3日3晩捜索したのに見つからなかったんだ。」

 「………え? ちょっと何言ってるのか分からないんですけど。」


 「まぁ無事で良かったよ、さぁ一緒に帰ろうセイ。みんな待ってるからよ。」

 「しかし、おかしいな…この辺りは何度も探したんだけどな。」

 「まさに神隠しだな。」


 タナンさん達が僕の無事を確認して喜んでくれた。


 …本当なのだろうか? 僕の感覚でいけば、リダーリアと会って秘密基地で一晩過ごして朝方に体を洗いに川へいき、そこでリーダリアに僕の事を全部ぶちまけて寝てしまったから、まだその日の昼間だとばかり思っていたのに…という事は一週間も葉っぱ一枚で寝てたって事?


 連れられて帰る途中も自分は半信半疑だったのだが…


 タナンさん達と一緒に村に帰った時にも、村人達は本当に村総出と言っていいぐらいに出迎えてくれ、僕の帰宅を喜んでくれた。聞くとアスナル様も心配してわざわざこの村に滞在しているという。今からアスナル様の元へと戻った挨拶をしに行くのだが…


 僕は正直、家に入ったと同時にアスナル様が「ドッキリ大成功!」っていう看板を持って現れて村人全員で大爆笑になるんじゃないかと身構えていたのだが(どんだけ疑いぶかいんだ僕は)


 「セイ、心配したのだぞ。だが、無事で何よりだ。」

 そう言ってアスナル様は笑顔をみせてくれた。心の底から本当に喜んでくれているようだった。ここで初めて僕は本当に1週間も帰ってきてなかったんだなと実感したのであった。


 あと、ドッキリじゃなくて良かったと安堵したのであった(どんだけ疑いぶかいんだ僕は)。


 そのあと広間でアスナル様とタナンさん達とで、僕がいない一週間について何をしていたのかと心配して色々聞かれたりもしたのだが、とりあえず秘密基地で1日だけ寝てしまていたのだが、一週間も寝ていた記憶がなくて何がなんだか僕にもわからないと答えておいた。


 全て“謎の出来事”で押し通しておいた。まぁ本当に謎なんだけど…


 「そうか、セイ自身も覚えていないというのだからしょうがない。だがこれからはせめて行き先をxamdgjirwi@fas…」


 「えっ?」


 「そうだぞセイ、せめて俺にだけでも行き先をsagadiajifw/@[-oo0ggr…」


 「えっ?」


 「xadlao/k/yi;@@eopqkofmirer…」

 「334efetu645%&Yi8pkopll…」

 「6&’()0LP*『』…」


 えっえっアスナル様、タナンさん、その他大勢のみなさん、どうしちゃったんだ? みんなが一斉に僕の聞き取れない言葉をかわし始めた。

 

 いや、話しているという感じではなく、ん〜形容しがたいのだが…バグっている感じというのがピッタリだろうか。一人一人の顔見たら、目が虚ろで顔に表情がない。各々が勝手に訳のわからない事を発しているような状態だ。こわっ、正直めっちゃ怖い。


 「これは一体…何が起こったんだ。」


 僕はみんなから離れ、この異様な状況から逃げ出そうと部屋の扉に手をかけると…


 「あ、開かない。扉が開かないぞ。お〜い誰か、誰かいませんか?開けてください! スーニさん、サニャさん聞こえますか? 開けてください!」


 確か隣の部屋にはいつも子供達の面倒を見てくれる肝っ玉母さんのスーニさんや、遊び相手のちょっと年上のお姉さんサニャさんが居たはず。


 ドンドンドン。僕は扉を無造作に叩いて叫ぶが何の反応もない。10畳ぐらいの部屋にアスナル様を含む大人4人と僕の5人で閉じ込めらられてしまったようだ。


 扉を叩くのを諦め、みんなに囲まれてちょっと怖いが…その場に座った。すると今まで雑音だった声が次第に…


 「…ガッ…ミ、ミツケタゾ。」

 

 えっ見つけたぞって聞こえたけど…それは目が虚ろなアスナル様から聞こえたが、その声はアスナル様の声ではなかった。


 「コンナところ二隠れてイルトハな…」


 アスナル様の口は動いていない。ただ一方的にスピーカーのように口から聞こえているだけなのか。


 「ようやく見つけることができたぜ。」


 その声は子供のような高い声だ…どこかで聞いた覚えが…僕がセイとして産まれる前?だったか…



 「確か、日本人の聖人まさととか言っていたか? 小さな存在よ。」

 

 白い部屋の住人だった。

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