第40話 内なる咎
「セイ、お前の今までの事を我に話してみるのじゃ。覚えている事だけでも良いから、分かる範囲でお前の内なる
そう言ったリーダリアは見た目の6歳児ではなく、1000年生きた、人を超越した者の得も言われぬ貫禄があった。
僕は全てを語った。
日本人としてこことは違う世界で生きた男の記憶がある事、そして死んだ記憶がないのに、意識体として過ごした暗闇の中での年月の事。
その暗闇の中で感じた謎の物質を自由自在に操れるようになり“命素”と名付けた事。
そしてこの世界へと飛ばされ、捨て子としてこの村で6歳まで過ごした時に前世の記憶が蘇り、暗闇の中での経験を活かしてこの世界でも“命素”を体現した事。
その後、現在までにあった出来事を身振り手振りのジャスチャーで、時には笑い、時には怒ったり、時には手話や腹話術、影絵を駆使したりしてリーダリアに伝えた。
ちなみ“命素”を得た後に白い空間へ
僕の一つ一つの話にリーダリア時にはうなづき、時には相槌を打ちを、そして時には淑女のように居眠りなんかしたりして真摯に聞いてくれた。
僕は全ての思いの丈を話し終わった後、なぜか…涙が頬を伝って流れた。
この世界に生を受けて初めて泣いたと思う。
リーダリアに話終わった時に何か、何か体の中に残っていた固い芯がポキリと折れたような感覚がした。この感覚は喜びなのか、悲しみなのかは分からないが、とにかく涙が溢れ出てしまったのだ。
今までに村の人たちからは幼い時から子供っぽくない、大人びた子供だと言われ続けた僕が…生まれて初めて年相応、8歳児のように声をあげて泣いてしまったのだ。
今まで意識はしていなかったつもりだったのだが、日本人の
その思いをリーダリアに話した事によって
「ああ、やっぱり僕は転生したんだな…。僕はこの世界の住人になったんだな。」
と再認識…確認作業のようなものだったのだろう。
リーダリアはそんな僕の話を全部聞いてくれた。
何も言わずにただただ、僕の話しを聞いてくれたのだ。
世迷い言だと一笑に付したりなどせずに、僕の目をまっすぐに見てうなづいて受け入れてくれたのだ。
彼女のとても澄んだ黄金色に輝く眼に僕は今までの負の部分、そう彼女が言った“
僕はリーダリアに抱えられながら大声で泣き疲れた後、また眠ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
我はセイを抱きしめた。
別にセイの事が愛しいなどという、たわけた理由などで抱きしめたわけではないのじゃ。
初めてセイを見たとき取るに足らない軟弱な下等生物の子供ぐらいにしか思わなかった。
しかし、そもそも我は不思議な力の所在を感じてセイの元へとたどり着いたのじゃ。初めはこの不思議な力の元はひょっとしてヴィルマ様ではないかという淡い気持ちがあったのじゃが…たどり着いた先には貧弱な子供。困惑したのも無理はないのじゃ。
この目の前の子供からは何も感じなかった。我が感じた不思議な力とは一体…気のせいだったのかと思いもしたのじゃが、とりあえず目の前の無力な子供に興味を持ったので話しかけてやったのじゃが…とても子供とは思えない会話の内容…一番初めに感じた違和感じゃ。
話を続けるとその違和感はどんどん我の中で大きくなっていった。目の前の子供が発する言葉はこの世界の言霊ではないものも含んでいたからじゃ。
何者じゃ?
我はどんどんセイに興味をかき立てられた。
壊れるならばそれまでと、無色透明な魔力の塊をセイに突き刺すも…届かぬ…だと?
それならばと、殺傷能力の低い小さな無色透明の魔力の塊をセイに攻撃するも…それも全部避けられ無傷じゃ。
ここは半殺し覚悟で「第一魔法式“
さすがの我もこれにはカチンときた。
我の力の一端を見せて減らず口を黙らせてやろうと仕掛けたのにも関わらず、こっちが黙らせられたのでは屈辱じゃ。しょうがない、ここでセイとはお別れになるかもしれないが、もし死んだとしても冥土の土産に我の力を見られればセイも本望じゃろう。
そんな気持ちを乗せて放った「第二魔法式“
………………………
………………………
……なぜじゃ? 発動しないじゃと。
逆にこっちが黙らさせられてしまった。
しかし不思議と屈辱のようなものは全然感じなかったのじゃ。こんな下等生物である脆弱な人間ごときにこの我が…遣り込められるとは思いもしなかったのにも関わらずじゃ。
くはははははははは
心のそこから笑ったのは何年ぶりじゃろうか、いや何百年ぶりか。
まさかヴィルマ様が我々の前から姿を消して以来、こんなに愉快な気持ちになる事があるだなんて、思いもしなかったわい。
その後セイの持っていた味の薄いクソまずいたくさんのキューブと、極上のたった1つの五階位のキューブを頂いて腹が膨れた我は寝てしまった。
翌朝目が覚めて、セイに“命素”の秘密を聞き忘れた事を思い出し、川で
思った通りセイはこの世の者ではなかった。
内に秘めた全ての咎を吐き出して大声で泣き、年相応の表情を見せたセイを我は抱きしめた。
別にセイの事が愛しいなどというたわけた理由などで抱きしめたわけではないのじゃ。
これはこの世の者でないセイをこの
願わくばこの純真無垢な魂がこの先の苦難を乗り越えられますように…
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