第13話 ザナドを弄ぶ
僕は夕食を食べた後に外に出て空を見上げた。今日は満月のようだ。視認性が高い為、村人達に見つからないように辺りを警戒しながら森へと入る。まずはここから一番近いザナドが居たらしき跡の方へと行ってみる。
しばらく道なりに歩いて目的地へと着いた。だいぶ歩いたな。そこから目印を辿っていく。はいはいはいはい、ん〜あの茂みの…下? ひょっとしてザナドは地面に穴を掘って隠れているのか? これは見つけにくいわ〜。 残虐非道なのに穴掘って偽装とか器用だな…ちょっとギャップ萌えの萌え抜きだわ〜。
えっ、どうして土の中に潜んでいるがあっさり分かったのかって? 答えは簡単“命素”だ。前に僕がザナドに弄ばれた時に、目印をつけておいたんだ。僕にしか見えない、もちろんザナドにも見えない目印を。三階位の実力を試すためのリトマス紙として…僕の人生の踏み台になってもらうためにね。
とりあえず、ちょっとイタズラをしてやるか。このまま物量で押しつぶして殺す事もできるのだけど、それだと三階位の強さが計れないし、悪いヤツには苦しんで苦しんで死んでほしいからね。
…僕は転生前はこんなに嗜虐的な性格じゃなかったと思うんだけど…いや、これが僕の本性だったのかもしれない。ザナドに気づかれないように急いで周りに穴を掘ってその土をザナドが隠れている土の上に被せていった。だいたい50cmぐらい上に盛ってやった。
ところどころ空けてある空気穴を避けて上に盛っておいたよ。この空気穴を全部塞ぐとか、空気穴から火を投げ込むとか色々考えたけれども…力技で盛った土を突き破って這い出てくるところが見てみたくなったのだ。
しばらく離れた場所から観察していたら…おっ、土が動く気配がする。もうそろそろ出てこようとしているのかな。ふふふ、なかなか出てこれないようだ。まぁまだ不思議がっている段階だろうけど、空気穴から覗いてやろうかなと顔を寄せたら、ザナドもちょうどその空気穴から覗いてきたから、こっちから煽って這いずり出てくるようにしてやろうかな。
「み〜〜〜つけた!」
大きな声で無邪気に叫んでやった。びっくりしてるびっくりしてる。んじゃあザナドが早く穴から出てくるように挑発でもしてやりますかね。
「こんな姑息な隠れ方してたんだね〜。極悪非道と粋がっている割には…小物感がすごいね〜ハハハハ。」
ものすんごいムカつく顔で言ってやった。あっよく考えたらこっちは逆光だから向こうからしたら真っ暗で見えないな。せっかく今までで一番ムカつく顔をしているのに…見て欲しかったな。そう思いながら少しその場から離れる。
ドゴーーーーーーン!
轟音とともに上に盛っていた土が大量に空中に舞い上がる。そこからキレッキレにキレたザナドが姿を表した。正に鬼の形相! 僕を見るなり恫喝する。
「子どもだからって容赦はしねえ。この昂りが収まるまでいたぶっていたぶって、最後はバラバラにしてこの穴に埋めてやるぞクソガキが! ひゃあああああはっはっは〜〜〜」
お決まりの残酷宣言に僕は全く動じずに逆に煽ってやる。
「確かにお前は子どもや女性などの弱者にだけは強いですもんね。だって強者であるアスナル様やバッコスさんが来ると、尻尾を巻いてこんな土の中に隠れているんですもんね〜プププっ」
おお〜〜怒ってる怒ってる憤怒の顔ってこういう顔なんだな〜と僕は冷静にザナドを観察する。
「も、も〜う勘弁ならねぇ。貴様は一撃で頭を打ち抜いてやるぞ! 覚悟し…あん?……どういう事だ…この間殺してやった、確かセイっていう奴の顔に。」
「おお〜殺人鬼のくせして良く覚えてたね。人の名前を記憶する脳みそなんて無いぐらい小さいかと思っていたのに。」
僕を見て多少驚きはしたものの、すぐに気色悪い笑顔に戻った
「そうかぁ…あの時、槍が突き刺さって興味を失っちまったから、止めを確認しなかったが、生きていたのか。くくく、それでたまたま生き残ったというのに勘違いして粋がって、自分が哀れな弱者だという事も忘れるぐらい気が狂ってしまったのかよ、くははははは。」
まぁ前回は雑魚い歳相当の7歳を演じてたからそういう感想になっちゃうよね。自分が逆でも何トチ狂ってだって思うもんね。だけど、いつまで笑っていられるかな…こっちには秘策があるんだ、それは…
「あっ、アスナル様こっちですよ、こっち!」
「何! まさか!」
僕が居もしないアスナル様の名前を大声で呼んで、こちらに呼ぶジェスチャーをすると、ザナドはつられてそちらの方を向いた。空きあり!
ドガッ
「うぐああああ」
ザナドは声をあげて後方に吹っ飛んで転がった。ものすごい無警戒の脇腹に3倍くらいの大きさにコーティングした石硬度の“命素”を7歳の腕に巻きつけて、おもいきり殴りつけてやったよ。
「うそ〜〜〜〜〜っ! アスナル様は来ませんよ。びびってやんの~ゲラゲラうける〜」
「クッソガキがああああああああああ」
よっぽど僕の嘘に頭にきたのだろう。血管バッキバキで、瞬時に起き上がって僕の顔にめがけてパンチを入れてきた。
バチーーーーーン
「なに? お前の頭が吹っ飛ぶくらいの威力を出したのに…ビクとも…」
「えっ、何かしました? 虫が止まったのかと思いましたよ。」
何か当たりました?ぐらいの表情で軽く払う。ふふっもちろん“命素”で顔付近を石硬度でぶ厚めにコーティングしているので、僕の顔には届かないのだ。逆にこの硬さを思いっきり殴って、手が痛くならないザナドがすごいな、さすが三階位。
「く、クソ、どういう事、だ! なんでオレの攻撃、が!」
ドガドガドガドガドガガーーーー
ザナドは気が狂ったようにパンチやキックの連打を僕に浴びせる。息もつかせぬ連続攻撃だ。ま、その場から一歩も動いてませんけどね、僕。
「ぜー、ぜー、嘘だろうこのオレ様がこんな…クソガキに…ふざけるな!」
ザナドは自分の全力攻撃が全く効かない事に疲れ果てて地面に尻餅をついて、息を切らす。
僕は“命素”のコーティングを解いて、座り込んだザナドの目線に合わせてしゃがみ話しかける。
「もう十分でしょ、貴方程度では僕の防御をほんの少〜〜〜〜し傷つける事も出来ないほどに脆弱のようだし。」
悲しそうな顔で煽って僕は立ち上がり、ザナドを見下ろした。そして僕がやられたのと同じように逃げ出さないように足を押さえ付けて、ぐりぐりと痛めつけてやった。
「ぐあああ、痛えええ。くそ、離れない…なぜだ!」
痛がるザナドを他所に、言ってやりたかったセリフNo.1を言ってやった。
「次は貴方が狩られる番だ。楽には殺さないよ!」
嗜虐的な笑みを浮かべて元気よく告げてやった。
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