第14話 僕を呼ぶ誰か
「次は貴方が狩られる番だ。楽には殺さないよ!」
そう告げてやったザナドの顔は怯えるどころか、まだ心が折れておらず今にも僕を射殺さんばかりの怒気を露わにしていた。
「調子にのるな! クソガキが! 火球」
後ろから火の玉が迫ってくるのに気付き横に転がり回避する。なかなか大きい火球だった。さすがに三階位といったところか。やはり階位が上がると魔法の力も強くなるようだな…まぁ想像の範囲内だけど。
「これでもくらえ、
おおっ、なかなか凶悪な…ぐつぐつと沸騰しているバレーボールぐらいの水球を僕めがけて打ち出し、体に触れる瞬間に弾け飛ばして火傷を広範囲に量産するという、地味に嫌な魔法だな…絶対性格悪いだろうなこいつという一品でした。
もちろん“命素”でコーティングしているので僕には熱湯は届かない。
「さっきから何だその膜は…いったい何の…。」
熱湯が僕にまで届かなかったことで“命素”の存在に気づいたようだ。しかし攻守ともに便利に活用できる万能な“命素”さんは僕だけにしか視認できないのだ。気づいたところで対処のしようはない。
「やっぱり三階位ともなれば平民の生活魔法とは比べるもなく、殺傷能力が高いんだ…なっと」
プシュッ
僕はザナドに向けて豆粒ぐらいの火球を打ち出す。7歳の平民が打ち出す魔法なんてこんなもんだ。それを鼻で笑って軽々と避けたザナドだったが…
ドガッ
「ぐああっ、な、なんだと、避けたはずなのにオレの腹に石をぶつけられたような衝撃が。き、貴様か〜〜、クソガキが何かしてるのか!」
はい、してます。火球の魔法発動と同時に、こぶし大の“命素”を石硬度に変換し遅れて腹目掛けて打ち出す。目には見えない攻撃なのでやりたい放題だ。
「いったい何のことです〜〜〜〜か?」
と、とぼけながらも何発も何発もザナドに打ち出す。もちろんなすすべもなく受けまくっていますけどね。
「ぐあっ、ごばああ、ふが、だぼおお、ぐ、ぐぞ。汚い真似しやがって。」
さすがに三階位だ。あんだけ食らってもまだ倒れない。まぁまだ手加減してるんですけどね。あと、汚い真似とかどの口が言ってるんだこいつは…と突っ込んだほうがいいですか?
「さて、あなたの攻撃…打撃は効かない、魔法も効かない。打つ手無しですか? まだ有りますか? 無いですよね? じゃあこれでお仕舞にしちゃいましょう。三階位の力も思ったよりたいした事なかったんでもういいです。あなたにはがっかりですよ。弱いものを痛ぶるのに
「お前は…一体何者だ?」
「…今から生を終えるあなたに言うだけ無駄だから言いません。そんな事よりあなたを生きたまま切り刻んでいきますので、今まで無下に殺してきた人たちにちゃんと懺悔してくださいね…楽には死なせませんから。ふふふのふ。」
夜も深まり、高いところから見下ろす僕に降り注いだ月明かりはザナドにとっては眩しかったに違いない。そして夜は更けていった。
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次の日、警戒が解かれた狩人達が森に入ると無残に切り裂かれたザナドの死体が見つかった。正確には死体なのだろうが…細かく刻まれたたくさんの肉塊と血だまりの中に首だけが綺麗な状態で残されていたので、かろうじてザナドだとわかったのだ。
状況をみるに、魔物に襲われて倒された後に森の獣達に食い荒らされたのだろうという結論になった。
ザナドの死はアスナル様の領地はもちろん、バッコスさんの領地にも知らされて、ザナドによって滅ぼされた村にゆかりのある者や、子供や妻など近しい者が殺された人たちは涙を流して喜んだ。
やっとこの辺りも前のような平穏な日常が戻ってきた。
このような田舎では、ザナドのようなイレギュラーな出来事は早々起こらないであろう。ラノベにありがちな僕の大切な日常を壊すような荒事は起きてほしく無いなと思いながら、また前のように7歳の穏やかな生活のルーティーンを過ごす。
ある日夢を見た。
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……………………………………イ
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誰かが僕を遠くから呼んでいる声がする
……………………イ
……………イ
とても耳障りの良い声だ。心が落ち着く
………イ
…カイ
カイよ。
いや、僕セイですけど! カイって! 誰かと間違えている?
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……………………………………イ
………………………………イ
えっまたやり直してる?
……………………イ
……………イ
さっきと全く一緒だけど大丈夫?
………イ
…セイ
セイよ。
そう、僕を呼んで何やら女性のようなモヤがかったシルエットが浮かんだ。
“やっと会えましたねセイ。この日をどれほど待ちわびたか”
待ちわびてた割には名前間違えてましたけど…その本人に指摘されても堂々とやり直す度胸に免じて許しますけど。
“この世界はあなたにとっては序章にすぎません。”
まぁ物語も序章だしね。
“そしてあなたにはハーレムもありません。”
…………………
“そしてあなたにはハーレムは絶対にありません。”
なぜ2回も言った? 聞こえてるし! あと絶対にって言い切った!
“大事な事なので2回言いました。それではあなたに直接会える日を楽しみにしていますよ、カイ”
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー目が覚めた。
夢にしてはリアルな…それでいて内容については現実的でないというか…これが俗に言う“前振り”なのであろうか…そんな血で血を洗う荒ぶる日常ではなくて、平穏な毎日を過ごしたいと思う今日この頃です。
…あと最後にまた名前間違えたのが、本当なのかボケなのか分かりづらいな…ツッコンだら負けのような気がする。
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