第18話 オーガ襲来
「グオオオオオオオオオオオオオオオ」
「なっ、まさか…オーガだと! なぜこんな
あのアスナル様が驚いているだと…いついかなる時もポーカーフェイスをくずさないアスナル様が…どんなに若い
オーガか…異世界物定番といえば定番だが…実物は圧がすごいよ。100mぐらい離れているのに誰もが感じる只者ではない気配。筋肉ムキムキどころではないムッッッッッキムキな逆三角形の体躯。
顔は…離れててもわかる正に鬼の形相! こわっ。一本角が額から生えてる。あんなので刺されたら…僕の耳に簡単にピアスの穴が開けられちゃうよ…意外に女子には便利かも。
あっ、こっちに気づいた。たぶんアスナル様の気配を辿ったんじゃないかな。某格闘ゲームのキャッチコピーのように“強い奴に会いに行く”みたいな感覚で。
うわっあああ、こっちに走ってきた! めちゃくちゃ速い! 100m5秒くらいの速さ(体感・目視)。村人達は襲い来るオーガを見て逃げ惑った。しかしアスナル様はどうやら迎え撃つようだ。アスナル様の護衛2人は少し離れていつでも加勢できるように待ち構えている…顔に死相がでてるやん、顔ま紫色やん!
ドガアアアアアアア
「ぐっうううう…ああああああ」
ズザザザザザアアア
オーガは走ってきた勢いそのままで、アスナル様にぶち当たった。アスナル様もそれを受け止めようとガードしたのだが、あえなく吹き飛ばされる。無理に受け止めようとしなくても…と思ったが、避ければ村人達に被害が出るのは確実だろう。少しでも逃げる時間を稼ぐために無駄と思っていても受け止めにいったのかな…さすがアスナル様だ。略してさす様! あっアスナル入れ忘れた。
「フシューーッ」
ぶち当たった後にオーガは息を吐き、周りを威圧する。やっぱり間近で見ると、3m近い強靭な肉体は迫力がありすぎる。これはもう見ためからして敵わないと本能的に察してしまう程に圧倒的な生物だ。
そして、やっぱりオーガの目はスカイブルー…鋭く光る水色の眼に睨まれて僕はちびりそうになった。
五階位…だと。初めて見た。あの森深くには強くても三階位までしかいないとされていた。それよりも2つも上の階位だ。
アスナル様は三階位だ、やはり本能的に勝てないと感じているのだろう。まだ戦う前だというのにすごい汗をかいている。だけれども、こんな化け物と対峙できるだけアスナル様はすごいと思う。
僕たちは動物を狩る側だと思っていたら、いきなり目の前に圧倒的強者が現れて本当は僕たちが狩られる側だと気づかされてしまったのにも関わらず、気持ちを強く保てるなんて。
アスナル様が魔法を繰り出す。コブシ大の火球をオーガに向けて3発放つ。それを避けようともせずに手で制すオーガ。その隙をついてアスナル様が剣で体を穿つ。
「ぐぐぐっ、くそ!」
突き立てた剣はオーガの体に傷ひとつつける事ができなかった。
それでもアスナル様は諦めずに何度も剣技を繰り出す。体が柔軟なアスナル様からは、しなるように重たい一撃一撃をオーガめがけて繰り出す。何度も何度も繰り出すが…
オーガはそれをなんなく躱してしまう。たまに入る一撃もたいしたダメージが入っていないようだ。
「グアッ」
オーガの力任せの一撃がアスナル様のガードをかすった。
「っがあああ」
ほんの少し肩にかすっただけなのに3mぐらい後ろにとばされ、アスナル様が苦悶の表情をみせた。
しかしすぐに魔法を繰り出し、ドッヂボールぐらいの水球…よく見るとグツグツと煮えたぎっている。ザナドも使っていた
「みんな逃げろー。こいつに勝つ事はできん! 少しでも俺が足止めをするからその間にみんな逃げてくれ!」
アスナル様が叫んでみんなに伝える。皆その意を汲んで無言で走り出した。護衛達もだ。
「何をしているセイ、君もだ早く…。」
ブオオオオオオオン!
アスナル様がオーガの大振りパンチをとっさに右に避けて難を逃れた。
今この場にはアスナル様と僕の2人のみ。オーガを挟み込んでいる状況だ。もちろんオーガはアスナル様と対峙し向き合っている。
つまり僕に背を向けている状態だ。まぁ当然だろう7歳の子どもなんてオーガにとって、いや五階位の者にとって取るに足らなさ過ぎる存在なのだから、認識されているかどうかも怪しい。なぜならさっきから僕は近くに突っ立っているのに全く意に介してなどいない。
好都合すぎる!
僕にとってはまたとない絶好のアピールの場だ。この地区最強であるアスナル様をかませ犬にさせて、一躍僕がこの村のスターダムに躍り出るチャンスなのだ!
…いや、ごめん本当はそんな小さいステージは望んでない。もっと大きなステージの方が目立ち甲斐があるのだけれども、そうもいっていられなくなったというのが本音かな。
オーガを倒す有効な手立てがないこのままでは、アスナル様が犠牲になってしまう。アスナル様が亡くなれば、それを皮切りにこの村、いやこの辺り全てがオーガによって破壊尽くされてしまうかもしれない。
実力を隠してまで、1人生き残っても全然嬉しくない。
だからスタンピードの代わりというわけではないけど、オーガ来襲というイベントを僕の糧にさせてもらう事にするよ。
「だからオーガには死んでもらうよ。」
誰に聞かせるでもなくつぶやいた。
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