第27話 バーシュ来訪

「お前か? セイっていうガキは。チッ」


 ある日、農作業中に現れた舌打ち三白眼の少年? 歳は14〜16歳かな。目つきの悪い髪の毛がグレーの男が僕の前に立ちふさがった。


 髪の毛がグレー…という事は二階位という事だ。その歳で二階位ってすごいな。エリートだ。そんな庶民を見下すエリート様が僕に何の用事だろう…ていうか誰?


 「いいえ、違います。」


 僕はそう彼に伝えて、また農作業へと戻った。


 違うと聞いた男は舌打ちをしてその場を去っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「セイっていうガキは、お前じゃねーかよ! チッ、ゼーゼー」


 他の村人達からまた、僕の事を聞いたのだろう。五階位のオーガも真っ青な勢いで迫ってきて僕に毒づいた。 


 「いいえ、違います。」


 再度僕はそう彼に伝えて、また農作業へと戻った。

 

 違うと聞いた男は舌打ちをしてその場を去っていった。


 



…………………………………

…………………………………

 純粋か! 見かけに反して純粋か! すぐに人の話信じる純粋な彼の将来が心配になったので、さすがに3回目に怒鳴りこんできた時は素直に名乗った。


 「僕の名前はセイ!です。僕に何か用ですか?」


 とりあえずイントネーションが違ったから今まで僕はセイでは無いと言い張ったのだと、無理やり無茶苦茶な理論で納得させた。それで僕に何の用なのかを聞いた。


 「チッ、アスナルさんからお前を鍛えてやれと言われてきてやったんだよ。」

 「えっアスナル様が…ですか? なぜ僕を。」

 

 「知らね〜よ。オレはただ強いけど基礎がめちゃくちゃな子どもがいるから教えてやってくれって言われて来てやっただけだからよ。チッ…しかし、本当に何もない辺鄙なところだよなこの村は。」

 「何をいってるんですか目付き悪夫さん。この村の主食はじゃがいもなんですよ! めちゃめちゃオシャレでハイソな食べ物じゃないですか。それのどこが田舎なんですか!」


 「いや、じゃがいもって全然オシャレじゃねーから! 領地では普通パンが主食なんだよ! あと勝手に目付き悪夫って悪口言ってるんじゃねーよ。俺の名前はバーシュだ。チッ」

 「何を言ってるんですか角刈り夫さん、オシャレなじゃがいもにバターを塗るのがこの村一番流行りなんですよ!」


 「うおっ! バターなんて高級品じゃねーか。それがこんな田舎で手軽に…確かにオシャレなのかも…って角刈りじゃねーのに角刈り夫って悪口言ってるんじゃねーよ。俺の事はバーシュ様って呼べよ。チッ」


 そうなんだ、都会ではバターは高級品なんだ。いい事を聞いたのでバーシュさんにはバターを乗せてじゃがいもを焼いてあげて振る舞った。


 文句を言いながらもハフハフさせて食べる姿は、口は悪いが年相応の少年っぽさを見せた。

 

 「じゃあ、お腹も膨れたところだしバーシュさん! さっそく…寝ましょうか!」

 「いや、まだ昼過ぎだし! 寝る時間じゃ…子どもは昼寝した方がいいか。まぁいい、じゃあセイは少しだけ寝てこい。待っててやるから…チッ」



 …………………………………

 …………………………………

 がっつり二人とも寝てしまいました…起きたら夕方でした。


 気まずそうに起きたバーシュさんは、また明日出直してくると告げて帰って行きました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「よし、じゃあまずは魔力操作からだ、やってみろ。」


 今日は朝早くからバーシュさんが僕を迎えに来た。アスナル様の指示という事で畑仕事などを免除されて休み、村の広場に来た。当分バーシュさんからの指導が僕の仕事のようだ。


 まず簡単な生活魔法であるロウソクぐらいの火を出す。僕の人差し指で小さい火がゆらゆらと揺らめいている。


 「チッ、まあそんなもんだろうな。じゃあ次に俺のを見せてやる。」


 バーシュさんの人差指からは拳大の火魔法が披露された。


 「魔法は自分の体内で生成される量以上は打てない。これが基本だ。」


 そうなのだ。昔自分もいろいろと検証したのだが魔力は体の大きさと比例するようで、子どもの僕では容量が小さすぎてあまり魔法を行使する事が出来なかったのだ。


 「大人が10だとすれば、セイは4〜5ぐらいしかない。これは体が大きければ増えるというものではない。大人は一部の例外を除いてほぼ10なのだ。」


 バーシュさんの人差指からは拳大の火魔法が出続けている。顔に近すぎて髪の毛がチリチリしてるようだ…早く気づいて欲しい。


 「魔力量を増やす方法はただ1つ、階位を上げる事だ。階位を上げると魔力量も自動で増える。基本的には一階位ごとに10%アップするようだが、これには個人差があるよう…アチッ」


 バーシュさんはやっと気づいた。すぐに水魔法で熱くなった部分を冷やす。良かったそんなに髪の毛がチリチリにならずに。チリッぐらいだ。気づいていいたなら早く言え!とでも言いたそうに僕を睨む。


 いや、自分不器用なもんで…。

 

 「そこで、まだ魔力の少ないセイでも使える身体強化魔法を教える。それが出来るようになれば格闘術や剣の使い方など、実戦を交えて教えていくつもりだ。」


 そうかぁ、この間のオーガの時は確かに全然戦う基礎などなく適当に棒を振り回してただけなのをアスナル様は覚えていてくれて、バーシュさんを派遣してくれたんだな。


 この先、戦いの中に身を置くかどうかわからないけれども、自分の可能性を広げてくれようとしてくれるアスナル様に大感謝。もちろんついでにバーシュさんにも感謝してますですよ。


 よし、かんばるぞ〜〜!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る