第8話 アスナル様

 僕の住んでいる村には名前などないが、村長みたいな役割の人はいる。まとめ役みたいなおじさんだが、特に強くはないと思う。40〜50歳ぐらいの平凡なおじさんだ。


 村のトップがそんなおじさんだと世紀末的なひゃっは〜な奴に目をつけられたら、骨の髄まで寄生されてせっかく良い感じの村がめちゃくちゃに崩壊してしまうのではないか?と心配されるかもしれませんが、心配ご無用です。


 なぜならアスナル様がいるからだ。


 アスナル様はこの辺りを統治というか縄張りにしている2大勢力の1人で三階位の力を持つ人なんだ。階位というのは魔物であるリフランを倒し続けると稀にパワーアップする現象の事だ。だけど誰もがリフランを倒せば強くなれるわけではない。倒しても自分の中にパワーアップする素質がなければ階位は上がらないのだ。


 ほとんどの人がゼロ階位の中、3段階もアップした三階位者というのはとんでもない強さだ。今の所三階位が一番上らしい。それ以上の強者がいるのかは僕が聞いた中だけではわからないor見たことがないとの事だった。


 領地といってもこの村から出たことはないのでどのぐらいの大きさなにかは全くわからないが、僕たちの村以外にもいろいろな村があるらしい。イメージ的には昔(戦国時代くらい?)の日本の殿様とその領地のようなものなのかな。そういう事で僕たちの村は力こそ全て、アスナル様の庇護下にあるのだ。



 アスナル様は2月に1度くらいは村を訪れる。間近でお話をした事はない。いつも遠くから見ているだけだ。


 なんというか…見るからに強そうだ。歳は17、18歳ぐらいでやんちゃそうな顔つきに見えるが横暴だとか横柄だという事はなく、とても村人思いで優しいらしい。うん、そういうギャップはポイント高いよね。


 あっそうそう、僕たち村人の髪の色は白色なのだが、階位が上がるにつれて髪の毛の色も変化していくらしい。だからアスナル様の髪はクリームイエローだ。光の当たり具合によっては金髪にも見えるのでよけいにヤンキーぽいんだけど淡い黄色って感じかな。


 ムキムキのごっつい力押しっていうタイプではなく、細マッチョな技巧派って感じに見える…戦ってるところ見ていないから知らんけど。アスナル様の護衛はみんなゴリマッチョだ。たぶん一階位か二階位くらいの強さだと思う。


 例えるなら…日本でいうところの武井 壮さんぐらいの強さだと思う(個人の感想です)。


 という事で今日も仕事の空き時間に秘密基地に来ております。今日は狩りではなくて訓練に来ました。“命素”を操作出来るようになったのだが、まだまだ分からない事も多く検証が必要なのだ。


 まずは“命素”を大気から吸収して体内で生成し、体に纏わす練習だ。これがなかなか難しい。まず均等に覆えない。分厚かったり、穴が空いていたり。だからまずは体全体を覆う事を目標に頑張った。


 最初は手とか足、頭からゆっくり押し出すように“命素”を出していき全体を覆っていたのだが、これだとどうしても完全に覆えなくて隙間や穴が出来てしまうので諦めた。精密な操作が必要すぎてまだ幼い自分には早かったのかな。


 次に“命素”を袋を広げるようにぶわっと空中に出して、ちょっとずつ体に収縮していく方法。布団を被るようなイメージだ。これは成功したのだが…“命素”の無駄が多すぎてすぐに疲れてしまうのだ。


 試行錯誤した結果、今は体全体から満遍なくニュッと“命素”を押し出す形式にしたら、素早く纏える事に成功した。“命素”は別に手や足などの先端から出るものではないので、“やれば出来る”精神でイメージしてやってみたら出来るようになったのだ。


 次に硬度の問題だ。“命素”はイメージによって柔らかくする事も出来るし、固くする事も出来る。その硬さも訓練次第では固くできると思うのだが…一度硬さの確認のためにオオカミのような獣にわざと噛まれにいったら簡単に噛み砕かれた(もちろん木剣にまとわした“命素”をだ。腕とかではない)。


 それから余裕ブッこいた態度を改めてマジメに訓練して再度硬度を高めたので、今では石ぐらいの硬さはあると思う。固ければ固いほど自分の身を守るのに良いのでこれからもいろいろと試したいと思う。


 が、1つ難点があって“命素”が硬くなれば硬くなるほど、体に纏うと…カッチカチやねん! 体がカッチカチで動きません。そりゃそうだな…石の全身タイツを着ているのをイメージすればわかりやすいかも。


 可動部分や一部分だけ柔らかくすればいいんじゃないか?とすぐ思いつくも…めちゃめちゃ高等技術すぎて今の僕のレベルでは出来ません! 固いところと柔らかいところを同時に制御、しかも1箇所のみならず何箇所も…中学時代音楽のテストで15点を取った俺には無理だ(50点満点)。


 という事でそんな高等技術は僕が並列思考のスキルを取ったらやってみようと思う(無理)。なので今はエポキシパテぐらいの固さでやらしてもらっています。もっと分かりやすく言うと粘度の高い粘土ぐらいの固さだ。


 まぁそれでも動きは少し阻害されて動きづらいのだが…丸腰よりは防御力も格段に高くなっているし、“命素”をぶ厚目に纏えば衝撃も吸収してくれるかなと。


 という事でまだまだ僕は“命素”を操作出来るだけで、完全に使いこなせる練度にはなっていないので、こうして人知れず影で努力を続けているのです。


誰か褒めて!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る