第44話 リーダリア華麗に登場

パアアアアアアアアアーーーーーンンン


 僕の前髪が揺れる…ていうか前髪どころじゃないよ。本当ならものすごい衝撃で僕が消滅してもおかしくない威力だったよ。


 だけど体の芯から支えられているような感じ? 自分でもよく分からないのだけど、とにかく微動だにしなかったのだ。…ごめん前髪は動いたから微動はしてたわ。比喩ね、比喩。


 《なんだ? この手は…私の一撃を止めるだと…》

 「くはははは、おもしろい、おもしろいぞ。やっとレイの居場所を突き止めたかと思えば…絶体絶命のピンチじゃったな。」


 僕のお腹から突き出した右腕が、アスナル様の正拳突きを止めた状態のまま、ぬるっと上半身が出てきた。それは…なんとリーダリアだった。


 ちなみに自分には全く痛みなどはない。


 ………痛みなどは全くないのだが…イタい。


 僕はものすごいイタい奴だ。お腹から少女の半身が出てきてるのだから、側から見たらイタい奴の何者でも無い…ホラーでもある。


 「リーダリア!ってリーダリア、いったいどこから出てきてるんだよ!」

 「くっくくく、驚くのも無理はないのう、セイ。」


 「リーダリアが出てきた驚きと、出てきた場所の驚きの相乗効果がすごすぎるよ!」

 「絶体絶命のピンチだったから急いで現れてやったのだが、一応配慮してやったんだぞ! 本当に配慮なしで間に合わせるならば、セイの股間から現れるしかなかったのじゃが、それは我も嫌だからな。」


 「確かにそれは僕も嫌だ。」

 「そうじゃろう、そうじゃろう、もっと我を褒め称え祀ってもいいのだぞ、クフフフフ。」


 いくら僕を助けるためとはいえ…もし股間から現れて助けられたならそれで良かったのか? そのまま助けられずに死んだ方が良かったか?と延々と悩み続ける十字架を背負う事を考えたら、お腹から出てきてくれた事を盛大に褒めておいたほうがいいか。


 と思い直して、上半身出ているリーダリアの頭をナデナデしてあげた。


 「なでなで」

 「やめーい! 我は容姿は幼子おさなごじゃが、そんな事をされて喜ぶほど幼なくはないぞ!」


 リーダリアは嫌がるそぶりを見せたが、ナデナデする僕の手を払う事はなかった。なでなで。


 《どういう事だ…貴様は…この空間に干渉出来る力を持つとは…いったい何者だ!》

 

 今まで渾身の一撃を止められたショックでフリーズしていた奴がやっと声をあげた。遅いよ、だいぶ待ってたよ、なでなで。


 「ふん、お前の真名は…ウルというのか。ひよっこ風情が我の事を知る必要はない。」

 《なっ…なぜ…私の真名を…》


 ウルはものすごく驚いている顔をしている。顔はアスナル様なんだけど。そのひよっこ風情というのは僕も入ってるのか? リーダリアよ、なでなで…


 「あああああああああ〜〜〜」

 

 僕は大声をあげた。今まで頭をなでなでされていたリーダリアはいきなり大声をだされた事でびくっとなっていた。


 「な、なんじゃ、いきなり大きな声をあげて。ちんちんが蛇にでも噛まれたのか?」

 「いや、何その具体的な描写は。大声ソムリエ? 大声のあげ方で症状が分かるの?」


 「ふむ、確かに我は大声ソムリエの資格を持ってはいるが…本当に蛇に噛まれでもしたのか?」

 「そんな資格はどは無い! 自分で言ったのだけれどもそんな資格など存在し無い! ってそんな事はどうでもいいんだよ。それよりリーダリアに会ったらガツンと言ってやらければ気が済まない事を思い出したんだよ。」


 「ほう、ではもうガツンと言えたから良かったのう、さてウルよ…。」

 「聞け〜〜〜い。俺の話を聞け〜〜い! とりあえずウルの事は置いておいて。」


 「…今一番重要な事はウルの事じゃと思うのだが…。そこまで我に言いたい事があるのならしょうがないのう、先に聞いてやるわ。話してみい。」


 やれやれ、しょうがないな〜利かん坊はこれだから…みたいな幼子おさなごの姿をしたリーダリアの顔が何かムカつくが…ここはぐっとこらえてガツンと言ってやらねば。


 「何で僕を素っ裸で外に放っておいたんだよ! しかも1週間も! せめて服を着せて中に入れようとかの配慮はないのか〜〜〜〜」

 「ん〜っ? ああ、セイが自分の中の熱いパトス(情念)をぶっかけて疲れて寝てしまった時の事か? いや我にも色々と事情があって放置したわけじゃあ…。」


 「言い方! 何かいやらしい言い方だな…そんな事より何で小さい葉っぱだったんだよ…ボソっ」

 「えっ? 最後の方声が小さくて何言ってるのか分からんのじゃが…」


 僕は再度大きな声で内なるパトス(情念)をぶちまけた!


 「なんで僕のあそこを小さい葉っぱで隠したんだよ。大は小を兼ねるんだから大きい葉っぱをかけておいてくれれば良かったじゃないかよおおおおおお、僕を侮辱してるのか? 哀れみか?」

 「…ものすごい被害妄想じゃな。それは全く我の預かり知らん事だぞ。たまたま、偶然に裸に寝ているセイの上に、ちょこんと葉っぱが載っただけじゃと思うぞ。ちょこんと、クフフ。」


 「…“ちょこんと”という言葉のチョイスに悪意を感じる。」

 「悪意など…コイツからしか感じんじゃろう…よっと。」


パアアアアアアアアアーーーーーンンン


 僕のカラダの前で大きな音が反響する。


 再度ウルが僕の体に死に至る攻撃を仕掛けたのをリーダリアが軽くあしらって僕を助けてくれたのだ。話に夢中でウルの事忘れてたよ…僕。


 《いつまでくだらない話をしているのだ! こうなったら貴様もついでに消滅させてやる!》

 「やれやれ煽り耐性も身につけておらんとは…いいかげん貴様の攻撃など我には通用せんという事を気づかせてやらねばな…クフフフフ。」


 二人は主人公の僕をそっちのけで対立しあった。この主人公の僕を無視するとわ…許せん! 主人公を無視するだなんて言語道断! 誰が主人公なのか思い知らせてやる!


 だから頼んだぞ! リーダリア! (他人任せ)


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セイントフォー~僕にしか見えない“命素”が万能なので、この世界で穏やかに成りあがって生きたい~ 大口真神 @MAKORUN

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