第20話 アスナル視点①
一体…今私自分の目の前で起きているこれは…現実なのか? それとも夢なのか?
私が生まれて早18年。小さい頃から神童と呼ばれて、10歳の頃にはもう大人に混じって狩りに出かけていた。初めてリフラン、猿の魔物と戦ったのもこの頃だった。
それからも毎日毎日、森に入っては魔物の討伐に励み14歳になった時には二階位へと上がった。魔物を何十、何100匹倒そうが自分に階位の素養がなければ上がらない。
自分よりも年上だが一階位から上がれない人たちも大勢いた。そんな年上を
三階位ともなると本当に1000人に1人ぐらいだろうか。自分の居た領地では3人ぐらいしかいなかった。そこで領主のガイゼル様に見込まれて、最年少ながら新たな領主としてこのアーセン地方を任されることになったのだった。
アーセン地方は僻地で何もないところを一から開拓していかなければいけなかったのだが、新しく領地を作り上げていく楽しさがあった。村人たちも素朴で善人が多く、不出来な領主であるにも関わらず自分を慕ってくれた。領民のためにも、もっとこの地を発展させなければと心に誓った。
アーセン地方の森はそれほど危険度は高くなく、ほとんどの魔物は二階位程度で三階位も居るにはいるが、年に10回あるかないかの遭遇率だ。
それに僻地だが食料となる獣や植物、果実が豊富で気候的にも実に過ごしやすいのだ。
アーセン地方ではない他の危険度が高い森では、魔物の階位も高いので、そこに住む領民にとっては命の危険性が有り住みづらい。しかし階位の高みを目指す者達には階位を上げる環境が整っているので、住みやすい環境なのだという。
正直自分もまだ18歳なのでもっと階位の高みを目指したい気持ちはある。が、今の生活に満足している自分も居る。
三階位でもこの領地では人々を守る戦力としては十分なのだ。
だからといってこの地に赴任してきてから、努力を怠ったことなど一度もない。定期的に森へ入り魔物を間引きしたり、他の才能のありそうな志願者を集めて階位を上げる手助けをしたりしている。
この領地では、そこまでの戦力は必要ないかもしれないが、自分に何かあった場合の為にも戦力は必要だと思ったのだ。
その点では隣の領主であるバッコスさんも話のわかるおやっさんで、共同で訓練をしたり森へ討伐の連携をしたりして、お互いの戦力を高めあっている。
何かあった時のための協力関係もとっている。もちろん自分には侵略する気はないが、不可侵の約束も交わしてある。
ある日この村の村長との雑談でセイという変わった子供の話が出た。今年で7歳になるのだが、元は捨て子だったのを村で他の親なし子と一緒に育てているのだが…何か変わっている子だと。
その時はそれとなく見守ってやっておいてあげてくれと言っただけなのだが、この村に視察に訪れるたびに村長が報告をしてくれていた。
セイはどうやら皆が寝静まった後に森へ出かけているようだと…7歳なのに。
ある時その後をこっそりつけた者が言うには、森の浅瀬の川で体を清め何やら訓練をしているとの事。小さいのに感心だ。階位の才能があるかもしれないなら出来れば村人の狩りに同行させてみてはと提案しておいた。本当なら自分が暇な時にでも直接教えてやりたいが…。
しかし、ある時事件が起きた。セイがザナドに襲われたと言うのだ。
ザナドは残忍な奴で狡猾な殺人享楽者だ。奴に弄ばれて殺された人々は数しれず、時には小さな村だが村ごと皆殺しに合った事があった。
女子供でも容赦はなく、むしろ子供をいたぶる事に執着していたクソ野郎だ。何度も奴の討伐隊が組まれ森へ捜索に入るのだが、その度に行方をくらます。そしてほとぼりが冷めるとまた襲いだすという、こちらを
そんな時にセイがザナドに襲われたと聞いた。しかも多少怪我はしたものの生還したと…今までザナドに襲われて生き残った子供は一人もいない。
しかし、嘘ではないようだ。ザナドが好んでつける脚傷があったし、敢えて子供達にはザナドの名前を知らせずに守るようにしていたのだが、セイは教えていないザナドの名前を告げたと言う。
直にセイに話を聞いてみたかったが、詳しい話は村人に頼んですぐに討伐隊を組み、襲われた地点を中心にザナドを探した。
結果、今回も奴に翻弄されてしまった。くそ! 一体いつになったらアイツをこの手で…。このままでは、またいつものようにアイツは行方をくらまして、ほとぼりが冷めた頃に同じように…何も対策が打てていない自分にとても歯がゆい思いだ。
一刻も早くザナドを止めなければ…絶対にこの手で奴に止めをさしてやる!
ところが事態は急変する。討伐を諦めた2日後にザナドの死体が見つかったのだ。血溜まりの跡に原型も留めないほどの肉塊と、頭だけポツンと取り残された無残な状態で。
多分死んだ後に獣に食い散らかされたのだろうと推測された。それにしては顔だけがなぜキレイな状態で残っていたかは謎なのだが…
今まで好き勝手に罪なのない善良な人々を殺し続けた、残虐なザナドにはふさわしい死に方だと皆が言い合った。正直に言えば、自分が奴に直接苦しみを与えれなかった点だけは残念だったのだが…。
願わくば殺された人々の何倍もの苦しみを得て死んでいて欲しいものだ。そう
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