第38話 キューブ実食
バリボリボリボリボリボリボリボリポリ
「んー大きさ、味、共にくっ〜〜〜そマズイのじゃ。じゃけど我慢するしかないのだ。今は起きたばかりで、いくらまずくても空腹過ぎて文句も言える立場じゃないしのう…はーマズイ。マズ過ぎるのじゃああああ、ボリボリ」
「…いや、貴方さっきから文句ばかり言ってますよね?ってか文句しか言ってないですよね?」
僕は今まで魔物を倒した後に残るキューブを全て持ち帰って秘密基地に置いておいたのだ。全然使い道がなかったので溜め込むだけだったキューブをリーダリアは惜しげも無く平らげていく…キューブも小さいのでスナック感覚で食べ続けていく。
マズイマズイといいながらも6畳一間くらいの部屋の持ち物の大半がキューブだったのだが、それが今では半分以上がリーダリアのお腹の中だ。全然食べる勢いが衰えない。
「えっ、まだ食べられるの?まぁ全部食べてもらってもいいんだけど…。」
「今ここにあるのだけでは全然足りんぞ。なにしろ量はあるが、質が全〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜然無いからのう、ボリボリ。」
「えっ? 質? 量食べればお腹が膨れるんじゃ無いの?」
「いや、我らは量は関係ないぞ。例えばこの小さなキューブじゃが…色が薄いじゃろう? この色が濃ければ濃いほどに旨みが“ギュ〜〜〜”っと詰まってうまいのじゃ!」
…カワイイ。
“ギュ〜〜〜”の部分は目をつむって体全体で詰まったリアクションをしてくれたので、普通の6歳の幼子だと思えばめちゃくちゃカワイイ。
しかし1000年を生きいている幼女だと思えば“あざとい”としか見えなくなってしまうのは僕の心が汚れているからだろうか? まだ汚れの無い純真無垢な体だと思いたい。
リーダリアがキューブの山を食べ進めていくと、中から1つ大きなキューブがゴロンと転がってきた。それを見るなりリーダリアは明らかにテンションが高くなった。
「なんじゃ〜〜〜! 有るではないか、こんな極上のキューブが! クズの山に隠しておいてサプライズとはニクイ演出じゃなお主! 褒めてやるぞ! それでは早速いただくとするか、かなり美味そうなキューブじゃ、ジュルリ。」
ああ、そうだった。以前アスナル様と一緒に襲われた時のオーガのキューブがあったんだった。あれが僕が倒した中で一番階位が高かった魔物だったわ。ずっとほったらかしにしていたから忘れてたわ。
五階位のオーガだったから結構大きいし、色も濃い。宝石としても結構な価値があるんじゃないかなと思うけど、こんな田舎では大金があっても使い道がないのでそのへんに置いておいた。
本当ならアスナル様がオーガのキューブを僕から取り上げて売ってしまえば、領地的には大金が入って潤ったと思うのだが、取り上げるようなことはしなかった。まぁ僕に倒させてもらったという感覚だろうから、律儀に譲ってくれたのだと思う。
リーダリアはその魔石を大きな口を開けてひと呑みした。
「んんん〜〜〜〜、おいしいいいいいい〜〜〜〜」
…カワイイ。
“おいしいいいいいい〜〜〜〜”の部分は目をつむって体全体で詰まったリアクションをしてくれた。
さっきの“ギュ〜〜〜”のリアクションと寸分違わず全く同じ動きだったのだが、おいしさの表現が伝わってカワイかった。あまりにも美味しそうにたべるので聞いてみた。
「へ〜やっぱり五階位のキューブだったから美味しかったのかな?」
「バカじゃのう、五階位だから美味しいという訳では無いわ。キューブの色の濃さが味に直結すると先ほども言ったが、その色の濃さというはいかに魔物が多くの人間を殺し、魂を奪ったかによるのじゃ。まぁ五階位になるには、それなりの人間を糧にしていた証拠じゃから、階位が高いと美味いというのは、あながち間違ってはいないのじゃがな。」
「…なんだって?」
僕は一瞬何を言われたかわからなくなって止まってしまった。
そしてリーダリアの話をもう一度反芻して理解した時、胸から湧き上がる感情を抑えきれずに眉間にシワを寄せ、リーダリヤを睨んでしまった。
「ほう、今までは
お前達人間も魔物を殺せば殺すほど、階位の高い魔物を殺せば殺すほどに階位が上がるのじゃろう? それと一緒じゃないのか? 魔物と人間なにが違うのじゃ? なぜ自分たちだけが奪う側だと思い込むでいるのか我は不思議じゃぞ。」
今でも魔物の生態などは謎とされている。どこから来て、なぜキューブを残して消えていくのか。
確かに人間は魔物を倒すと階位を上げることができる。階位が高い魔物を殺した時にも階位が上がることはアスナル様が僕の目の前で立証済みだ。
魔物だから人間を襲い、人間を襲うから魔物を倒す。それが当たり前の日常で“なぜ?”などと考えた事もなかった。そういうものだと思い込み考えようともしなかった。確かに僕達は、自分たちだけが奪う側だと思い込んでいたかもしれない。
考え込む僕をよそにリーダリアはさらっとこの世の真理を口にした。
「この世界は我らを中心として構築されているのじゃ。それが心理であり、
そう言って笑うリーダリアは見た目通りの6歳の幼子ではなく、1000年を生きて来た妖艶な…人間の姿カタチをした何か別のものに見えたのだった。
「バタンキュ〜〜うううう」
その後、彼女はまたあざとい言葉を残して体を大の字にして眠りについた。今度のバタンキュ〜〜は、久しぶりのキューブでお腹が満たされて眠くなったバタンキュ〜〜だそうです。
大の字で眠る彼女は漫画で表現するのなら、鼻ちょうちんが膨らみ“すぴー、すぴー”と寝息が聞こえるような、6歳の幼子として年相応の姿を見せていた。
彼女が1000年以上も生きているのに幼子のままでいるのは、こういったあざとい姿が人間には害の無い、無垢な生き物にみえるからではないのかなと考察しながら、僕も彼女の隣で眠りにつくのであった。
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