エピローグ「誰よりも幸せな僕ら」

第40話


「いえーーい。リース様参上!」

 約束の時間。人間の時間で午前の十二時。その約五分前にリースは目的地に辿り着く。

 目的地ではすでに、フウとサンが待っていた。

「で、結局何なんだ?」

 ここに呼び出されたくわしい理由を知らないリースは、自分を呼び出した張本人たちに聞いてみる。

「んと、僕らも実はよくわからないんだよ。なんかルフレ先輩にリースとポチも呼んで、今日の十二時にここに集合。んで、ここのマンションから彩って女の人が出てくるから、その人にくっついて来いって言われたんだ」

「ほう。じゃあ、ポチも呼んだほうがいいの?」

「うん」

「そうか……でも、ポチはまだ新しいキャラ作りの途中で、いまだに決め台詞を最後まで完全に言えたことがないわけですよ。それでもいいのか?」

「うん」

「じゃあ、呼ぼう。ポチ」

 リースがポチの名前を呼ぶと、ポンという音と、少しの煙と共にポチが現れた。

 ポチは静かに、ゆっくりと辺りを見回すと、右手で口元を隠しながら上品に言う。

「あら、皆さんお揃いで、ポチになにか御用ですか?」

「えと……今回の設定は?」

 苦笑いにすらなっていない微妙な笑みを浮かべ、フウが言う。

「今回はね、モデルがいるんだ。クラスメイトのベル」

「そうですの。私、ベルさんがリース様のお部屋に遊びに来ました際、思いましたですの。これですわって。どうですこと? 高貴な感じがしますでしょう? おーほっほっほっ…ほごっ、げほげほっ……」

「……むせてるけど?」

「うん。まだ決め台詞の、高笑いが完全にマスター出来ていないんだよ」

「あ……出てきた! あれ、彩でしょ」

 リースとフウの会話に参加しないで、じっとマンションの玄関を見つめていたサンが声を上げた。

「お、そうだね」

 出てきたのは、二十代中盤くらいの女性。白地に大きさの異なる黒のドットプリントを施したワンピース。そのワンピースから覗く細い足を覆う赤のソックスと黒いエナメルのパンプス。お洒落な、超が付くほどの美人。

 その整った顔が、嬉しそうにふにゃりと歪んでいる。とても幸せそうな表情。

「じゃあ、彼女にくっついていこう」

「うむ。どうせだから心の中も覗いとこう」

「そうだね。じゃあ共感してみよう」

『おーー!』


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