第6話



「うーおーー! ちょーハッピーエンドじゃん!」

 航たちが映画館に入った後、映画館の屋根にある看板の上に腰掛けたリースが叫ぶ。

『だねー』

 リースの横に座るフウ、さらにその横のサンが揃って頷いた。

「結局、私たちは何にも出来なかったけどね」

「まー、でも、笑顔は見れたし、幸せそうだったし、綺麗な青い空を見せることにも成功したからよかったよ」

「だねっ。幸せそうだったよね」

「うん。だから大成功だ。なんとかなった」

 言って、フウは嬉しそうに微笑む。

「うん。なんとかなったね」

 頷いた、サンからも笑みがこぼれた。

「あれだ。終わりよければすべてよしってやつだな」

 リースも満足そうに笑う。

「それに、よく考えたら、散歩に行かせたのは私たちだし、交番に行かせたのもそうだから、大活躍といっても過言ではないのかも」

「確かに。そうなると今日のMVPは、五千円を拾わせて、交番に行くきっかけを作ったリースかな」

「うん。天使の私たちも真っ青な大活躍だったね」

「えと、これは、喜ぶ……ところ?」

 リースが小首を傾げ尋ねた。

『もちろん』

 二人揃って頷いて、さらにサンが付け加える。

「だって、航の笑顔が見れて嬉しかったでしょ?」

「まぁ……そうか。そうだな……うむ。じゃ!」

 気合一発。羽を一度大きくはためかせて立ち上がると、リースは二人のほうにビシッと人差し指を向け、歓喜の叫び声を上げた。

「さぁ~すぅ~がっ、大悪魔リース様! へっぽこ天使見習い共、俺様の実力に恐れ慄いただろっ」

「うん。凄い。流石リース様。ぱちぱちぱち」

 ぱちぱちと口で言いながらフウは拍手する。

「リースちゃん、ちょー凄い! かっこいい。ぱちぱちぱち」

 サンもぱちぱち言いながら拍手をする。

「実はちょっと馬鹿にしてるだろ?」

 言って、リースはその場に寝転がった。

「そんなことないよ」

 フウも横になる。

 そんな二人に釣られるように、サンも寝転がった。

 三人は一緒に空を仰ぐ。

 空を眺める三人はとても幸せそうな笑顔を咲かせていた。

 幸せだった。とても幸せだった。

 三人は航を幸せにして、それ以上の幸せを航から貰った。

 だから……

 誰よりも美しい空を眺めながらフウが言う。

「じゃあ、そろそろ次のお仕事に行こうか」

「うん。幸せの押し売りをして、青い空の作り方を教えてあげよう」

 サンが笑顔のまま頷く。

「じゃ、俺様もくっついていって、お仕事しよっと」

 リースも楽しそうに笑った。

 そして三人はそれぞれの翼を広げて、飛び立つ。

 新しい幸せを届け、青い空の作り方を教えるために。

 それは誰のためでもなく、自分たちの幸せのため。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る