第23話
優和は空を仰いでいた。
心を刺すように冷たい世界。色褪せてしまった空。
そんな世界と空に包まれて、優和は独り思う。
以前は世界の温かさを知っていた。空の美しさを知っていた。
それだけではない。それをみんなにも気付いてほしいとさえ思っていた。
そのために小説を詩を書きたいと思っていた。
それが夢だった。
それなのに、たった一人……
たった一人を失っただけで、世界は凍りついてしまった。空は色褪せてしまった。
そして今、優和はただ独り、その凍った世界の中で体を震わせ、色褪せてしまった空を仰ぐ。
彼女がずっと独りでそうしていたように。
優和は今日も、空を眺めながら記憶の彼方へと逃げ場所を求めた。
それはまだ、世界を温かいと感じていた頃。まだ、空を美しいと感じることが出来た頃のこと。
そう……それはまだ彼女がこの世界の中、この空の下で生きていたときのことだった。
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