第35話
「でも、私はそのまま死んじゃった。手術は成功したみたいなんだけど、体力がもたなかった……」
詩菜は悲しい笑みを浮かべていった。
「それで、あなたはどうしたいの? どんな未練を残して霊になったの?」
ルフレが問う。
「優和に幸せになってほしい。優和に私と出会ったせいで不幸になってほしくない。」
「どうしたら彼を幸せに出来ると思う?」
「私は最後にもう一度だけ、話がしたい。それで今度こそちゃんと、さようならを伝えたい」
「そう……」
ルフレは優しい笑顔を浮かべて頷き、言葉を続ける。
「じゃあ、そんな感じで作戦を考えてみましょう」
『あーーい』
フウとサンは元気に返事をした。
「ぐすっ……俺様たちも手伝うよ」
「ポチも、手伝うですにゃ」
声のした方にルフレが顔を向けると、そこには号泣している悪魔とぬいぐるみがいた。ぬいぐるみの真っ白な目からも冗談のようにどばどばと水が流れている。
なにやら、いたく感動しているようだ。
ルフレはどうして悪魔が一緒にいるのか少し気にはなったが、今はめんどくさいので気にしないでおくことにした。
「では、作戦会議です。詩菜ちゃんは優和くんと直接お話したいんだよね?」
「はい」
詩菜はこくんと頷く。
「んと、今までは、詩菜ちゃんが優和くんの近くにいてもまったく気付いてもらえなかったの?」
「いろいろやってみたんですけど、ぜんぜん気付いてもらえませんでした」
「うむ。エーテルの濃度が低くて霊感はないみたいね。じゃあ、いっぱいちょっかいを出して、詩菜ちゃんに気付いてもらおう」
「そうすると、どうなるの?」
サンが聞いた。
「優和くんに詩菜ちゃんに気が付いてもらう方法は二つあるの。一つは優和くんに霊感があれば簡単に気付くんだけど、なさそうだからこれは無理。で、もう一つは、詩菜ちゃんに会いたいと強く思ってもらうことと、詩菜ちゃんがここにいると確信を持ってもらうこと。その二つを同時に満たせば、霊感がなくても見えるはず」
「おお~。じゃあ、会いたいと思っているのは間違いなさそうだから。詩菜が幽霊になってここにいるんじゃないかって思わせればいいわけだね」
フウが言う。
「その通り、だから、いっぱいちょっかいを出して気付いてもらうのよ。では、作戦開始~~」
『おおーーーー!』
その掛け声と共に、天使と悪魔と幽霊とぬいぐるみ(?)の想いが一つになった。
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