第40話「勘違いが過ぎる」
エルーダ村。
神聖な御神木を中心として、円状に建物が作られている緑の綺麗な獣人族たちが住む村。
子供たちの声が響き、家の外に出ているお母さんらしき獣人族の女性が集まってお話をしている。
甲冑を付けている獣人族の男は剣を振り回し鍛錬に励み、見張り台に立っている獣人兵士はそとの景色に目を光らせている。
村と言っても住民の人数はかなりいるようで外に出ているのだけでおそらく100人近くいるように思える。
もはや、小さな街と言っても過言ではないが、技術はハッ呈していないようで少し貧相だった。
ただ、賑わい具合は負けていない。
とても楽しそうな街である。
しかし、そんな街にも牢獄があり、俺とユミはその牢獄に収監されている。
「×◎X1=*+`<<*>`PL`<MPM>*+>*>P`L`PM`!?」
「>P``P>+**>‘PL~+*>*+<+<+*`{LP==*+*>*<!?」
見張りの兵士二人が俺たちに向かって意味の分からない怒号を吐き、睨みつけてくる。
おそらく獣人語だろう。
しかしまぁなんて怖い顔だ。俺たちはこれでも13歳と12歳。もう少しで14歳と13歳になるがそれでもまだまだ子供だ。多少は優しくしてくれてもいい年齢だぞ。
まったく、いささかひどい扱いだ。
「ね、ねぇ……こ、こっち見ないでよっ」
「え、あぁ、分かってるって」
「。>+<‘。;。p@、;。:@‼‼‼‼‼」
「す、すみませんっ」
ユミに何か返答するだけでも怒鳴られるし、監視されるのはどうも慣れない。
それに、お股がすーすーする。
なぜ、すーすーするか。その理由は俺が全裸だからだ。
もちろん、ユミも丸裸にされている。
この村の掟なのか、罪人が牢獄に入れられる時には着ているものを脱がされるようだ。
生憎、実年齢は43歳のおじさんには羞恥心がほぼ皆無だし、銭湯だと思えばそこまで恥ずかしくはない。
しかし、ユミにとっては酷なもので、泣きはしていないがさっきから俺の視線をチラチラ確認してくる。
背中合わせだから見えていないから安心してほしい。俺だって、見たいんだからあまり刺激してくれるなって話だ。
「(っど、どうしたらいいのよ!)」
ユミがごそごそしながら小声で言った。
確かにその通りだ。
どうしたらいいか皆目見当もつかない。
――数時間前。
奴隷商人を倒した後、奴らの残骸をこのままにしておくと魔物が増えたりする原因になるのでヴォルフさんが片づけてくれることになった。
「あの、この子はどうします?」
涙目で俺たちを見つめる少女。奴隷として売られようとしていた獣人族の女の子だ。
「あぁ、そうだな。こっちは俺が片づけるから二人で届けていってくれないか?」
「村までですか?」
「そうだ。頼めるか?」
「大丈夫ですけど……その、場所とかは」
「道なりに沿って歩いて行けば着く。それに、分からなくなったらその娘に聞くといいさ」
という流れで、俺たち二人で三日ほどかけながら彼女を村まで運んだのだ。しかし、村に着いたとたんに大騒ぎになり、無抵抗を貫いていたらいつのまにか身ぐるみ剥がされて牢獄に入れられたってわけだ。
いれられてからかれこれ数時間。
ここに来るまでかかった時間は三日と二時間弱。ヴォルフさんが来てくれるのは確実だが、ここに着くまではあと三日間かかるはずだ。
一応、牢獄に居ても毎日2食はご飯を出してくれるから飢えは凌げるが、出てくるのは残飯みたいで少し臭う。少なくとも人間が食べるものではない。
それに、牢獄もあまり広くはない。俺とユミが川の字で足を広げて寝たらいっぱいいっぱいになるほど。
とは言っても足を広げたいとは思えない。ツルや木で出来ているためにカビも生えていて、ウジも沸いている。蜘蛛の巣なんかはり放題でまったくと言っていいほどに気が休まらない。
もしかしたら、俺たちが人間だからと言う可能性もあるが……それにしてもだ。
簡単に言って、刑務所よりも酷かった。
待つのも選択肢だがこんな悪い空間で待つわけにもいかないが、見張りが四六時中ついている。逃げたくても逃げれない状況だし、収納魔法で銃を取り出してもいいが……さすがに音でバレる。
村全員が終結したら殺せる自信もない。というか、ヴォルフの村を虐殺するなんて言語道断だ。
つまり、どんな状態かというと詰みである。
「(どうもできないかな……)」
「(そ、そんな! ヴォルフは来るんだよね?)」
「(多分来るとは思うけど……俺たちがここまでたどり着くのに三日もかかったんだから、少なくともあと三日耐えないと)」
「(そ、そんなの無理よ! 私、む、虫とか苦手で……もう、吐きそう)」
「(我慢してくれ……)」
開放してもらったら、これはもうヴォルフに怒らないとな。
ひとまず、色々と観察して模索しよう。自衛隊の人からは捕虜になったら終わりだと教わったが、俺たちは捕虜ってわけでもない。こういう時こそ冷静に。
俺のモットーだ。
薄暗くなり、夕暮れ。二度目のご飯が出てきて、俺たちは嫌々ながらも腹に詰め込む。
腐っているのかすっぱくて臭い。味わうことなんてできるわけもなく、口に入れてすぐに飲み込んだ。
食べてからの一服、と行きたいところだが……とそう思った瞬間だった。
「<‘P‘P<$%!&T((’)+>+>!!!!!」
「うあっぁああああああああああああああああああああ‼‼‼‼」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼」
向こう側のから炎が燃え上がり、住民たちの叫び声が鳴り響いた。
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