第51話「作戦概要とD-day前夜」
というわけで、俺が説明した作戦概要はこうだった。
まず、人数の把握から。
ちなみに奴隷連合の数に関してはあくまでもヴォルフの目算で、確実ではないことを考慮する。
敵軍(奴隷連合戦闘員)
・初級モンスター約100匹
・中級モンスター約30匹
・人族戦闘員500名
・亜人族戦闘員約700名
計1430名 だいたい1個連隊程度の戦力。
それに対して、こっちはというと
・獣人族 300名(男134名女166名そのうち子供100名)
・獣人族守備兵 50名
・ヴォルフ
・カイト
・ユミ
計353名(戦闘員53名) だいたい1個小隊程度の戦力。
まさに兵力差は約30倍。
戦闘員以外も含めたとしても5倍ほどの開きがある。
しかし、今回の戦闘は模擬でもないため戦ったことのない獣人族はあまり戦力に加えたくはない。実際に先頭に加わるのは守備兵と俺たち三人、そして自ら手をあげた獣人族の70名となる。
正面でやりやっても勝てない。
圧倒的不条理な戦力差に正直なところ俺は逃げたいくらいだ。
しかし、生憎とこの里の未来を任されちゃそうもいかない。
真剣に考えて導き出した答えはこれだった。
ひとまず、この村の外周を計算すると縦横それぞれ200メートルの小さな村であり、
ただ、幸か不幸か村の東側と西側には断崖絶壁の崖と足場の悪い地形が存在するのでおそらく敵軍は北側から一直線で展開する。
また、こっちに遠距離攻撃があるとも考えていないので真っ直ぐつっきて来るのが妥当だ。弓矢程度じゃたかが知れてるからな。
そこで、俺たちは10人程度の分隊に別れることにした。
俺とユミが率いるα分隊とβ分隊(15,15)。
守備兵長率いるγ分隊(20)。
守備兵含む突撃分隊(15)
ヴォルフ率いる最終防衛線班(5)
の大きく分けて計5個。
全体的に陣地は3つに分け、第一防衛線、第二防衛線、最終防衛線としている。
第一防衛線はβ、γ分隊が最前線として守る位置。
第二防衛線はα分隊が補給路兼第一が突破されたときの予備防衛線
最終防衛線は突撃分隊と最終防衛線班が守る獣人族がいる最後の砦。
この構成になっている。
俺のα分隊は第二防衛線にした凹凸がある木々に潜み、ユミと守備兵長率いるβ、γ分隊が100メートルほど離れて逆ハの字で迎え撃つ。これにより十字砲火で敵を正面におびき寄せる。
また、ユミの土魔法「
もしもそこから抜け出し、突撃してきた固体がいればα分隊で対処し、突撃分隊は村の側面と内部を守る。最後のヴォルフ率いる最終防衛線班でその他諸々を担当する。
簡単に言えばこんな感じだ。
そして、銃の種類についてだが弾薬も多くの種類を使いたいわけではないのでなるべく同じ種類にとどめている。
まず、α分隊の装備として
12名-HK416、M1911(5.56mm×45mmNATO弾120発、.45ACP弾42発)
2名-MG42(二人一組)、M1911(7.92mm×57mmモーゼル弾1000発、以下略)
1名-M24SWS、HK416(カイト)(7.92mm×56mmNATO弾50発、以下略)
α分隊は最終的に動いたり指示をしたりしなくてはいけないのでなるべく身軽な構成にしておいた。最悪大群が突破されたときのためのMG42も装備させた。
β、γ分隊は第一防衛線で敵殲滅に従事してもらうため火力にぶっぱしている。
20名-MG42(二人一組)、M1911(以下略)
4名-RPG(二人ずつ)、M1911(RPG砲弾5発ずつ)
6名-HK416、M1911(以下略)
3名-M3グリース(210発)
2名-M24SWS(以下略)
守備兵突撃分隊はゼロ距離戦闘をメインとするため身軽に。
5名-HK416、M1911(以下略)
10名-M1911、特製バトルナイフ(以下略)
ヴォルフ班は各々の使い慣れた武器に俺の作ったM1911を装備させている。ちなみにヴォルフは九四式拳銃を愛用している。
と、作戦概要はこんな感じとなる。
正直なところ軍隊の教育を受けているわけでもない一般人の出が捻りだした作戦なのであまり完ぺきとは言えないだろう。
無論、それは俺も自覚している。
ただ、この世界にはおそらくだが銃器に対する理解がない。それならば今回のような作戦でも大丈夫だろう。
それにしても指揮官としての初陣は初めて魔物と戦った日を思い出す。
ユミと協力して倒した初級モンスター。最初に使ったのは確かライフルだったか。
今考えると感慨深い。
「カイト、食べないの?」
俺が明日への不安を抱きながら燃え盛る炎を眺めていると隣に座るユミがそんな風に訊ねてきた。
「あ、あぁ……食べるよ」
「うん」
手元持ってある角魔猪の油揚げ。簡単に言えばブタの唐揚げみたいなものだろうか。獣人族の郷土料理らしく、味もかなり美味い。
ただ、明日への緊張がその味をなくしていた。
「——怖い?」
「ん、まぁな」
「カイトにもそんなことがあるんだね」
不思議そうに尋ねてくるユミ。
いつものようにローブを着たフル装備で特製スープとサラダを食べる姿を見ると女の子なんだなと再認識させられる。
ユミは俺の事を大きく評価してくれるが実際、俺はそこまで強くはない。
ユミの成長ぶりに毎日を驚かされている。
「そりゃ。ユミこそ怖いことはないだろ?」
「私はあるよ……ほら、ここの村に来た時にあんなことされて正直死んじゃうのかなって泣いちゃったし、初めてこんな辺境の地に飛ばされた時なんて怖くて寝れなかった」
「それは俺が不甲斐ないからだよ。もっと機転を利かせていたら別だったかもしれない」
「ううん。そんなことない。カイトはいっつも私の事を考えてくれたじゃない。最初に話しかけてくれた時から、そうでしょ?」
「そうかな……」
今思えばユミに声を掛けたのはミリアさんに諭されてだった気がする。
はじめは確かにおかしな子だなとも思ったけど、話せば話すほど頭も良くて、素直で、無口ではあるけどいい子だった。
そんな彼女に頼りっ切りな節があったし、甘えていたとも俺は思う。
「うん。私、カイトといると安心するし……その、なんでか、逞しいと言うかたよっれると言うか、さ。カイトと一緒ならうまく話せるんだよねっ」
ニコッと笑みを漏らすユミ。
その顔が少し眩しくて俺は目を背けてしまった。
明日の戦い。
俺はユミを信じて前衛に配置したが——大丈夫なのか不安だ。
まだ、信じ切れていない。
できれば後方から魔法を打ち込むだけにしてほしいとまで思っている。
そんな俺が安心を与えられているのかは不安だった。
「だから、私もカイトを安心させたいな」
「っ」
「怖かったら言ってもいいし、自分一人で抱え込まなくても大丈夫なんだから」
「そう、か」
「うん。ほら、指」
「え」
「出して」
そう言ってユミは小指と小指を結ばせる。
「指切りげんまん嘘ついたらはりせんぼんのーます、指きった♪」
「なんだよ、それ」
「私の故郷の歌、らしいわよ?」
どうやら、ユミの故郷にも日本人がいるらしいな。
☆ステータス☆
名前:カイト・フォン・ツィンベルグ(旧姓:カイト・ストルベ・クロスべリア)
年齢:13歳
職業:孤児
経緯:転生
スキル:博識(銃器のみ)Lv4、格闘術Lv3、思い切りLv2、性欲Lv2、妄想Lv1、脚力Lv1
魔法属性:無し
魔法レベル:1(闇魔法のみ)
魔法:
名前:ユミ・フォン・ツィンベルグ
年齢:12歳
職業:孤児
経緯:貴族の捨て子
スキル:博識Lv2、潜伏Lv2、攻撃魔法向上Lv3、属性外魔法適性Lv2、思い切りLv2、探知Lv1、防御魔法向上Lv1
魔法属性:光、火
魔法レベル:3(光、火魔法)
魔法:初級【
中級【
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