第50話「作戦会議2」


 急に興味を持ち出した獣人族の皆さん。

 方言なのか、それとも獣人族特有の感嘆符なのか分からなかった各々の動物の鳴き声でその興奮度合いを表してくれていた。


 そんな彼らを横目にユミがボソッと呟く。


「カイトは凄いんだから、最初から見極めなさいよ」

「まぁまぁ、みたことない世界だってあるんだから」

「……」


 言い返すと黙り込み、ヴォルフと俺の間に腰を据える。

 とはいえ、ユミの言う通りどうやら俺のスキルは違う種族見ても凄いらしいな。


「はっはっはっ。こりゃすごいわいっ、カイト殿、是非是非作戦とやらを決めてはくれないか!」


 年にも関わらず重い腰を上げて拍手する村長、その横でニヒッと頼れる笑顔を見せてくれる大柄な獣人族守備兵長。どうやら、俺はようやくこの村で受け入れられたようだ。


「はいっ! ありがとうございます!」

「さすがだな、カイト」

「まぁ、そうですね……このスキルを与えてくれた忌々しい神様に感謝ですかね」


 思えば初めてこの世界に来た日。

 俺の話を聞いてくれなかったおかしな神様に授かった最弱スキル。


 それが今となって本当の意味で花を咲かせるとは俺も思っていなかったな。


「よしっ、では作戦概要を説明します!」














 一方、東大陸の最西端に位置する小島にて。


 とある男が長ったらしい髭を伸ばしながら側近の悪魔にこう告げる。


「なぁ、お前はこの状況をどう思う?」

「この状況と言いますと?」

「いやなに、あの無能クロスベリアが一人の禁忌人類を解き放ったじゃないか?」

「あ、あぁ……そのこと。でしたら今現在能力を調べるためにクロスベリア大帝国の国王に圧力をかけ、奴隷連合を動かしています」

「ほう、まぁ偵察ってわけだな」

「さようでございます」


 ふむと頷き、とある男は高らかに笑った。


「はははははっ!!!!!! いやはや、あいつが意外と能がなくて笑ってしまってのぉ。昔、私が告げた言葉を聞いていなかったのか……かかっ」

「まぁまぁ、あなた様と23世では地力が違います故」

「ははっ、それもそうか。いやぁ、22世は機転の利くいいやつだったがいい子種を持っていなかった故に他が全員死亡するわするわで残ったのが第10皇子のあいつともなったわけだ。おかげで最近は法国からも妨害を受けているとか?」

「さようでございます。無能に国は統治できませぬ。神に背くことが出来れば、禁忌人類でなんとかできるとは思いますが」

「神の天敵、ねぇ。それは報告が許しそうもない。あやつら、歴史上では消されているが前身のストレチアリ神国の時代から続いているし無視はできないところだと言うもない」

「えぇ、それが見抜けていない今のクロスベリア大帝国では今後うまくいきませんねぇ」


 首を垂れる悪魔の後ろから二人目の男が姿を現す。

 鉄十字のマークを首に据え、堂堂と歩くもう一人の男。


「あぁ、シュナイツァー様」

「ご苦労、悪魔」

「悪魔とは呼ばず、デスロードとお呼びください」

「ははっ。嫌だね。総統はそのような言葉は使わん」

「まだ前の国の事を思っているんですか?」

「あぁ、当たり前だ。我が崇高なるドイツ帝国を我が眼前に作り上げたいからな」

「はぁ、いかようですか?」

「ははっ。いいだろう。それで、提案があります閣下」

「ほう、述べて見よ」

「先日、クロスベリア大帝国で大規模な天災が起きたというのは本当か?」

「あぁ、そうだ」

「そのことで、御身に危険がございます」

「なんだ、私に危険があるのか。それは興味深い」

「えぇ、最近西大陸の最南端に潜伏している聖剣が動いたと連絡を受けて」

「あいつが動いた! これは……何とも興味深いっ」

「そこでご提案ですが、私に軍隊を送っていただけないでしょうか?」

「うむ、いいだろう。貴様の強さを見せつけるいい機会ではないか」

「ありがとうごさいます。この身、御身に捧げて精進して参ります」

「あぁ、頼んだぞ」

 

 そう言って去っていく男。

 それを後ろから眺める玉座に座ったとある男。


「いやぁ、あいつも育てた甲斐があったなぁ。私の超越スキルで覗ける奴の弱み。あいつも使えるだけ使って、最終的には神への昇華を試す糧にできるわ。これで、禁忌人類もあと3人ってとこだな」

「さようですね。流石です」


「あぁ、ようやくだ。2000年と時を生きてようやく、たどり着いた叡智だ。お前にも幸せの一つをくれてやりたい」

「この身は自らが定めた人にしか捧げません。それに、あなた様の喜びが好みの喜びでもあります」

「ははっ、面白いなお前は」

「どうでしょうね……きっと、あなた様の方が」


「ひとまず、私は例の禁忌人類の監視とその保護へ向けて策を作り上げます。では」


 そうして消えていく悪魔。


「私も老けたものだな……奴らとの戦い、再び始めたいなクロスベリア1世よ」






〇シュナイツァー曹長

 ドイツ帝国の元軍人。

 無き総統のために尽力するSランク冒険者。

 禁忌人類の一人。


〇大悪魔デスロード

 下級悪魔、上位悪魔の存在を優に超える最も神と反対である性質を持つ悪魔の一種。悪魔の中では最上位種であり、自分が認めた主に尽くすのを本望とする魔界の使い。

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