第55話「戦争終結」



 ユミの魔法が空では炸裂し、ヴォルフが森の端に悪魔を追いやっている中。俺はその合間を抜けて一気に懐に入る。


 背後まで回り込み、防御魔法の穴を見つけ内部に入り、俺は闇魔法『煙幕スモーク』を発動させた。


「なに⁉」

「敵が入ってきたぞ!!」

「周りが見えん!!」



 中にいた負傷した戦闘員や魔法士たちがあたふたしている中で俺はレミントンをぶっ放す。


 カチャッ、ドバンッ!!


 一発で三人を持って行き、煙幕に隠れながら再びリロード。そして撃ち込んで煙幕の中に隠れる。


 これを繰り返していく。


 しかし、そんなあからさまな作戦も長くは続かない。俺を見つけた戦闘員たちが何人か襲い掛かってきて、俺はレミントンを最後までぶっ放して腰に携えたグロックに持ち替える。


「たぁ!!!!」


 左手に持ったナイフと右手のグロック。

 それで突撃を仕掛けてはらわたに銃弾を連射。


 バババババババババババ!!!!!!!


 控えめな連射音が鳴り、一気に数人が倒れる。合間を縫って右足で薙ぎ倒し、ナイフでとどめを刺して、背後の敵を射撃。


 くるっと反転してリロードして、突っ込んできた素手の戦闘員をグロックとナイフでなぶり殺しにする。


 返り血が飛んできてふと我に返りそうになったが、俺はすぐに立ちあがって距離を取ろうとしてくる魔法士に銃を乱射した。


 防御魔法を行使しようとする寸前に弾が3発到達し、魔法使いを3人倒した。


 軽い身のこなしを生かして、戦闘員を100人と魔法士を7人ほど屠ったところで俺はユミに通信する。


『ユミ、魔法使いを7人やった! このまま火力で防御ごと貫通できるか⁉』


 やってくる一人の脳天をぶち抜く。


『うん、できる!! 10秒後に放つわ!』


 横からやってきた亜人の攻撃をくるりと交わして、足で打撃を食らわせた後ナイフを喉元に突き刺す。


 怯んだところで奥にいる三人に連射。

 

 距離が取り、俺は一気に走り出して離れる。


 そうして、10秒後。


 ユミがもともと溜めていた中級魔法「炎天ファイアーホール」に、「炎線ファイアーヒート」を重ね掛けした範囲魔法を放ち、防御魔法を貫いた。


 ギィィィィィィィィィィィィンンンンッ!!!! 


 と防御魔法が避ける音がして一気に火の海が襲う。

 咄嗟に出したと思われる水魔法で火自体はかき消されたが被害は甚大で、残りの戦闘員も300人を切る勢いだった。


 そして、ラストはとどめ。


 俺はすぐさまβ、γ、そしてα部隊に通信する。


『防御魔法を破ったぞ!! 10秒後に全員で一斉砲火だ!!! それとスナイパー班は白いハットを被った指揮官を狙え!!』


 そうして再び、MG42とRPG、さらにHK416の銃弾の雨が降り注ぐ。






 そうして、突き刺さる俺の作戦。


 奴隷連合側の被害は見たら分かるが悲惨なものだった。しかし、それに対してこっちの死者はゼロ。俺とヴォルフの切り傷程度。


 まさに、圧倒的な戦力差を無きするほどの圧倒的な結果となった。


「ふぅ……ヴォルフさん、ありがとうございます」


 戦いが終わり、獣人族の皆と共に奴隷連合の戦闘員の亡骸を確認しているところにさっきまで下級悪魔と思しき魔物と戦っていたヴォルフが帰ってくる。


 服装は少しボロボロになっていて、頬や足にもやや切り傷が出来ているも顔はいつも通りに凛々しく堂々としていた。


 さすが、余裕そうだな。

 そう思いつつも俺は訊ねることにした。


「大丈夫ですか? ヴォルフさん」

「ん、俺か?」

「えぇ、それはもう、いかにも強そうな相手と戦っていたので」


 ニヤッと笑みを受かべて俺の肩を叩いてきた。


「余裕だよっ。生憎と、絶級レベルまでならタイマン張れるって覚えておいてくれ」

「さすがですね」

「あぁ。カイト、お前もな。お前の考えた作戦のおかげだ。完璧な奇襲に、重ね掛けの作戦、奴らよりも先を歩いていた。良い指揮官になれそうだな」

「お世辞はやめてくださいよ、俺なんてまだまだです」

「いや、二人ともだがその年でよくやってる。子供二人でやってきて生きているんだからそれでもう及第点だと思うぞ」

「ははは……」


 まぁ、正確には大人一人と子供一人なんだけど。

 

「ほとんどヴォルフさんのおかげです」

「ははっ、やっぱりカイトは謙虚だな。親父と似てるよ」

「っ——そう、ですか」


 日本人ってことか。

 良くも悪くも、でもなんかそう言われると胸が熱くなるな。


「よし、ひとまずこいつらの亡骸はモンスターに食わせるとして、ひとまずは捕虜に尋問ってところかな」

「モンスターに……?」

「あぁ、死体の処理は大抵自然任せだ」


 なんかめっちゃ普通に怖いこと言ってるけど……周りの獣人族もすでに死体を移動し始めてるし、どうやら本当の様だ。


 俺の常識が全く通用しないのがこの世界のいいところなのかな。



「カイトっ!」


 ヴォルフが獣人族の皆の方に歩いて行ったあと、後ろからどさっと柔らかいものがぶつかった。


「ってて……ゆ、ユミか」

「大丈夫?」

「ん、あぁ」


 背中に抱き着かれて、感じる不思議な柔らかさに俺は少しドキッとした。見た目からはあんまり気づけなかったが服の下はしっかり膨らんでいて、柔らかい。


 前回の人生では一度も触れてこなかったものがこうも簡単に……

 俺は幸せな奴だな、と自覚する。


「凄かったね、カイト。やっぱり私よりも全然凄いよ」

「そうかな……ほとんどヴォルフさんとユミの魔法ありきだったし」

「それを使えこなせたのはカイトの力だよ」


 そう言われると流石に嬉しかった。

 俺も成長できたということだろうか。


「ね、ねぇ、カイト」

「ん?」


 すると、正面を向いて俺の両手を包むように握ってくるユミ。

 いきなりのことでやや動揺してしまったが、正面に来たユミの顔が真っ赤になっているのに気づく。


 真っ赤、りんごよりも赤い。

 恥ずかしい――のかな、多分。


 頷いて待っていると彼女の方から思いっきりこう告げられる。


「きょ、今日のこと……なんだけど。い、一緒に……ね、寝ない?」

「え、あ、えと……したいのか?」

「ん、えぇと……分からないけど、うん。し、してみたい」

「わ、分かった」


 どうやら俺は、二度目の大人になるみたいです。











【あとがき】

 ちょっと明日は投稿できなさそうです。

 2日に1回投稿になってしまってすみません! カクコンに向けた作品も書いていきたいのでご容赦願います!


 次回から閑話になります!

 ミリアさんのお話描いてなかったのでここらで描いちゃいます!

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