黄金島編

第56話「ミリアの転移」


☆ミリア・フォン・ツィンベルク


 目を覚ますとそこは知らない場所だった。


「……どこ、ここ?」


 ハッとしてすぐさま自分の体を確認する。するとしっかりと制服を着ていて、特に外傷はないし、たまたま持っていた魔導書が胸の間にすっぽりと挟まっていた。


「うぉ、良かったっ」


 ぷぬっと跳ねて空に舞った魔導書をキャッチする。

 うん、今日も私の胸は大きい。縮む魔法に怯える日々はもうない。私の光魔法はそのためにあるんだから。


 ——って何をしているんだか、違う違うそうじゃないわ。

 

 まずは確認。

 覚えている記憶は――ない。

 いや、正確にはあるのかな。


 確か、ユミちゃんとカイトくんについての風のうわさを聞いて私もどうかできないかと思っていて、あ。


 そうだ、システナが裏切ったとか何とかも話があった。

 あの後、数週間してからボロボロの聖騎士がやってきたんだった。


『どうしても……これだけ伝えた、くてっ……私、私はこんなことしたくなかった……だけどっ…………聖騎士団を止めって……くださ』


 そう告げて彼女は息を引き取った。

 名前はそう、ニーナ・フランシスカ。冒険者時代の私の後輩で最終的にはBランク冒険者まで伸びり詰めた一般的には実力者にあたる。


 そんな力を持ちながら正義と信念を持ち、心優しき一面もあった彼女はシステナの影を追って聖騎士軍に入隊した。最高階級は少尉。さすがニーナだ。


 でも、この感じを見るに尾上の正義感で良かれと脱出してくれたんだろうか。


 ——そんなことを死後考えた。

 システナが憎かった。

 私との友情も全てうそあったのかと燃え滾るものがあった。しかし、冷静に思えばこの国の構造が悪いのだ。


 だからこそ、私も何かできないかと一から基礎を学び直そうとした瞬間だった。


 この街を包む一瞬の光線。

 視界が真っ白になって気が付けばこんなところに。


 辺りは岩場と木々と小川。

 自然あふれる場所にぽつんと一人座っていて、服も着ていて持ち物も携帯しているものならすべてある。


 盗賊に襲われてレイプされたわけじゃないんだと安心したのも束の間、次の疑念がやってくる。


 ここは一体どこなのか。

 

 それを把握しないと私はどこにも行けない。

 冒険者をやっていたときの教訓で場所が分からなくなっても決してその場から動くな。というものがある。分からないのに動いて状況が悪化するのを避けるためだ。


 森は魔物でいっぱいで、もしかしたら叶わない上級以上のモンスターが軽々と出てくるかもしれない。


 とにかく現状把握と位置確認に専念せよ、それが師匠の教えでもあった。


「師匠……懐かしいですね」


 ふと思い出した師匠の顔で思いに更けながらハッとして、意味の分からない現状を一つずつ洗い流していく。


 まず、さっきまでの出来事は覚えていた。

 次に、おそらく私は知らない場所へ転移したと思っていいこと。


 そして、場所。自然があると言うこと、そして川がある、水があると言うことは少なくとも砂漠や乾燥地帯ではない。察するに東や西にしろ中央付近ではないはず。


 東大陸のどこかなのか、クロスベリア大帝国の近くの魔物の森なのか、はたまた大陸を渡ったところなのか。


 考えれるのは三つほど。


 しかし、魔物の森ならよく分かっているので現実的なのは1つ目か2つ目か。


 そして転移したという事実。

 転移というのは本来ランダムだけれど、もしもこれが大規模での転移なら——あるのは確実に大陸を渡った移動か。


 基本的に転移というのは必ずと言ってもいいくらい遠くに飛ばされる。どの文献にもそうとしか書かれていなかったはずだ。転移は遠方、されど転生は無法。そんなことわざがあるくらいだ。


 じゃあ、私がいるのは——西大陸か、もしくは中央大陸、それでもなければ他の島々。自然が豊かで行くならば、今は聖剣と呼ばれる誠剣「ゲルニカ」の弟子が統治している黄金島もあり得る。


「って、これ以上は分からないわよね……ひとまず、人を見つけてからかなぁ」


 久々の冒険。

 誰もいない中を進み、雑踏と森を超えていく。


 そうして――――――。


「ま、まじですか……ちょっと流石にヤバいわね……っ」



 ——私は敗走した強そうな兵士に出会いました。


「姉ちゃん、ちょっとこっち来てくれねえか?」



【あとがき】


 遅れてしまって申し訳ございません!

 ということで、今回から「黄金島編」がスタートです!!


 こっちはもっとだきぼな戦争がメインになってくるのと、二人の成長も見れるかなと思うのでお楽しみに!


 ちょっとだけ投稿頻度減ると思うのでそこはご容赦ください!

 

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