第19話「エランゲル」


「身体を見せなっ」


「何にも持ってないんだよ~~、おうっ! ちょっと、私は女なんだよ! あんまり触るなって!」


「触ってねぇだろ……だいたい、俺は亜人にしか興味がねえんだっ。わりぃな人間のねぇちゃん」


「ちぇ~~、これで金でもとってやろうかと思ったのによぉ」


「馬鹿言え、ほらっ、いいから後ろ!!」


 まずは塀の外で兵士数人による身体調査チェックが始まった。


 毎分数人くらいは出入りしているらしく、その度に身体のチェックだけはしているらしい。


 昔らしいチェックの方法って気がするが、こんなものでしっかりできているのかは考えたくもない。


 言うまでもなく、敵国の兵士がのうのうと入れているからな。


 

 一応、システナさん曰く俺たちの素性は冒険者のお姉さんと冒険者になりたい子供っていう設定らしい。


 俺たちの年齢的にも丁度いいが嘘ついてもいいのだろうかと不安だ。とはいえ、ここでミスったら死刑になるらしいから死ぬ気で演技をしなくちゃいけない。


「ほい、それじゃあ坊ちゃんと嬢ちゃんもするからなぁ~~」


「は~い」

「うんっ」


 ユミは少しだけ嫌そうにしているが無理もないだろう。


 とりあえず、数分だけ兵士に身体を触らせて痴漢されている気分を多少なり味わってから俺たちは中に入ることができた。




「うぉ……っ!‼」


「わぁ……っ‼‼」


 塀の内側に入ると絶景も絶景だった。


 絶景という言い方だと悪いかもしれないが、あまり外の世界に出ていなかった俺たちにとっては最高な景色だった。


 孤児院があった一面草原と山に囲まれた景色ではなく、言うなれば工業地帯のような熱気と活気に包まれている街だった。


「知らない種族がたくさんっ……」


「だなっ……エルフとかも初めて見たよ」


 ぷりっぷりのお尻を左右に揺らしながら、もはや服なんてないかのようなうっすい羽織りしか来ていないエチエチエルフや背が低いけど体が鋼で出来ているかのようなゴリゴリドワーフ。


 頭が馬の亜人だったり、まさに最高にゃんにゃん猫耳ちゃんだってたくさんいる!!


「ぐへへへぇ……」


「っ‼」


「うがっ‼‼ な、何するんだよ!!」


「いや、間抜けな顔してたし……腹立つ」


 いやはや、ユミは俺が何かを見つめる度に足を踏んでくるがこれっばかりは許してほしいんだ。俺の世界にはいなかった亜人がいるのだからっ‼‼


 ていうか、エルフってマジでエロいな。俺たちの世界でもこんな風に出てきていたが……こう、近くで見るのではまったく感じ方が違う。


 筆おろし……いい!! めっちゃいい‼ 今の俺はなんて言ったって中学1年生の歳だからな! もはやシステナさんのような20代後半に差し掛かったエルフでもいいからやられたいものだ!!


「ほら、二人とも! まずは部屋を借りに行くぞ~~」


「っもう行くんですか!」


「もうって、まずはそこからしていかないと始まらんだろう?」


「まだ、エルフのお姉さんがっ」


「っん!!!」


「うがっ——い、いきまず……」


 結局、両足を潰された俺はユミに首根っこを掴まれて嫌々行くことになってしまった。


 くそぉ、俺のお姉さんがぁ‼‼






 入り口から歩いて十分ちょっと。

 中心にある領主城がよく見える旅館に入った俺たち、システナさんが受付のおばちゃんと話していた。



「えーっと、子供二人と私ねっ。一応、冒険者だから割り引いてくれ」


「二人はもってるのかい?」


「んーと、今日この後作るつもりなんだ」


「おぉ! これは新人さんかいなっ。なら新人割引もつけておくよぉ!」


「ありがと! おばちゃん!」


 聞き耳を立てていたが、どうやらこの街では冒険者は優遇されているらしい。言うまでもないが、ロビーの椅子に座っているが周りには多くの冒険者が血糊を付けた剣を見せびらかしながら今日の成果を話している。


 ムキムキの亜人の兄さんに、魔女の帽子を被ったタバコを吸うお姉さん。

 どんなに顔が良くてもやっぱり冒険者らしくだらしない感じがとても俺の男心を擽らせる。


「ねぇ、あの魔女さんの格好……」


 システナさんが話している中、俺の隣で水を飲んでいるユミが肩をトントンと叩いて指をさす。


「ん?」


「あれ、ローブ」


「あぁ、あれか」


 指していたのはたばこを吸っているお姉さんではなく、その隣の隣、胸の大きなエルフの魔法士だった。4人パーティで、リーダーらしき剣士が首から「C」と書かれてあるカードを下げている。


 おそらく、そこそこの実力を持った冒険者なのだろう。


 ユミはどうやら魔法士の服に興味があるようだった。まぁ、職業としては彼女は魔法士に当たるし、格好から入るのも悪くないかも知れない。


 あと数カ月もすればユミも誕生日で13歳になるし、この前奪われたお金で買ってあげるのもいいかもしれない。


「どうせ、冒険者って言う設定だし、あとで買うか?」


「うんっ……カイトが選んで」


「俺が、いいのか?」


「うん。お願い」


「お、おう……」


 頷くと受付にいたシステナさんがとことこと歩いてきて——


「んぅ~~どうしたの二人とも、顔が赤いけど?」


「な、なんでもないです……」


「ほ~~う、言ってくれるねぇ。ユミちゃんの方が赤いけど……?」


「っ——」


 システナさんの勘は鋭い。

 嘘はしっかり隠さなければ。


「それに、カイト? あなたもお姉さんに興奮してるわよ?」


「え」


 すぐにバッと両手で股間を隠すとそれを見たシステナさんは声をあげながら笑った。


「ははははっ‼‼ ほんと、二人は似てるよねっ‼‼ ほら、部屋が取れたから行くよぉ~~!」


「は、はいっ」

「っ」


 別に、興奮してたわけじゃないんだからね!!








「んで、二人には冒険者カードを作ってもらいます」


「え?」

「はい?」



 部屋に入って早々、俺たちはシステナさんにそんなことを告げられていた。








☆ステータス☆


名前:カイト・フォン・ツィンベルグ(旧姓:カイト・ストルベ・クロスべリア)

年齢:13歳

職業:孤児

経緯:転生

固有スキル:創造レベル3

スキル:博識(銃器のみ)、格闘術、思い切り、

魔法属性:無し

魔法レベル:1→闇魔法(煙幕、収納)



名前:ユミ・フォン・ツィンベルグ

年齢:12歳

職業:孤児

経緯:貴族の捨て子

固有スキル:無詠唱レベル2

スキル:博識、潜伏、攻撃魔法+3、属性外魔法適性、思い切り、探知

魔法属性:光、火(中級すべて)

魔法レベル:3






☆カイトが作った武器☆


・AK-74

 種類:自動小銃アサルトライフル

 設計、製造:ミハイル・カラシニコフ、カラシニコフ・コンツェルン等

 弾:5.45mm×39mm弾

 装弾数:30発/45発(箱型弾倉)

 全長:943mm

 重量:3,300g

 説明:1974年にソビエト連邦軍がAK47やAKMの後継として採用した自動小銃である。小口径弾薬を用いていて、命中率も上がり、それでいて弾を体内部に残すことで殺傷能力をあげた。銃剣を付けられる。



・HK416

 種類:自動小銃アサルトライフル

 設計、製造:H&K社

 弾:5.56mm×45mmNATO弾

 装弾数:30発

 全長:560~940mm、690mm-1,037mm(銃身長などによって異なる)

 重量:3,100~4,100g

 説明:M4カービンの改修を依頼して開発された独自改良版であるカービン型のアサルトライフル。多くのオプション装備が付けられて、過酷な状況でも信頼性がある。2007年よりアメリカ軍で正式発注を開始した。日本の海上自衛隊などでも少しだが使われている。ガス圧作動方式。



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