第31話「2度目の再会②」
そうだ、こいつは変なやつだ。
神様を自称する変な声の男。いや男か? どことなく高いし、中性的で女の声でもおかしくないけど。
まぁ、こいつの性別はどっちでもいいか。
【変な奴呼ばわりはさすがにひどくないかね……僕だって生きてるんだよ? 考えてほしいくらいだよぉ】
誰が考えるか。あの時、真面目にビビったんだからな。お前にはゴミスキルをやるからとか言われて……創造スキルだったから良かったけどな。
それに、あのスキルだって俺が銃について詳しくなかった大した武器を作れなかったし。
【いいじゃないか、実銃は最高だろう?】
あぁ最高だな!
あの重量感と薬莢が排筴される音、リロードの心地もガスガンやモデルガンと違っていて心の奥底を貪ってくる!
って、バカ言え。
俺が言いたいのはそこじゃねえよ。
【あれま、美女もつけてあげたのに】
俺の人脈だ。
コミュ力は自信あるからな。
だいたい、捨て子だろ俺。よくはない。
【うーん、まぁかもしれないけどね。慢心は良くないよ? ほら、最近銃も進化してないでしょ?】
慢心なんてするかよ。
俺の魔法適性ゴミ過ぎだしな、馬鹿神様め!!
【ははははっ、だってねぇ。ちょっとウザかったからね!】
おい、テンション上げながら言うなよ。
それにな、銃に関しては一応構想は練ってる。今のところロマンで自衛隊が使ってる89式5.56ミリ小銃と20式小銃も考えてるけど、それよりロケットランチャーとか重機関銃だって考えてるんだ。
弾さえあればドイツのMG42とか、その改良の後継機だってありだろう。
グレネードやスモークグレネードも含めてな。
【結構考えてるんだね、さすがさすが】
褒められたくないね。あんたには散々だったから。
【またまた、うざいこと言うネェ。これだからおっさんは】
おい、俺だって傷つくんだぞ。
【はははっ……おじさんは心が腐ってるから傷つくとは思わなかったよ……】
否定はしないがそう言われると腹が立つな。
【いいじゃないか、おじさんで間違いはないからね!】
はいはい、そうだな。分かったからその話はやめてくれ。
【あいよぉ……って、そうだね、今顔を出したのはそう言う話じゃなかったか】
話、何の話だ?
俺は死んだんじゃないのか?
【死んだ? 誰が?】
俺だって、俺。
あの裏切者のシステナさんに殺されたんじゃなかったのか?
【……っぷぷ、はははははは‼‼‼】
俺がそう訊くと奴はそのモザイク面を横に傾けながら、数秒して噴き出して笑い出した。俺の周りを数周ほど転がり、お腹を抑えながら爆笑している。
何笑ってやがるんだ、こいつ。
【ははははっ‼‼‼‼ あはははははっ‼‼‼ ほ、ほんと面白いなぁ、人間ってのはさぁ!!】
おい、早く答えろ。笑ってないで。
俺が死んだのかどうかを聞いてんだよ。
【はははっ……いやぁ、すまんすまん。馬鹿なこと聞いてくるからねっ。ていうかよびだす度こんなこと聞かれるのは想像しちゃうと笑えてきてっ】
はぁ?
何も面白くないけど。
どうやら、人間と神様では価値観が違うようだ。
【まぁまぁ、そうつまらん顔はやめてくれ……とにかく、そうだな。話さないとな。まずはなんでこの世界に呼び出したかと言うと、特に理由はないんだ。たまたま面白そうな場面が見えて、ついついちょっかい出しちゃって感じだ。だから心配しないでくれ。君は死んでないよ】
ちょっかいって……随分としょうもない用で呼ぶんだな、神様は。
【気まぐれだからねぇ】
奴はにこやかな口調でそう言った。
とはいえ、俺は生きているのか。どうやら俺はまだあの世界で冒険ができるらしい。
正直、システナさんの閃光が見えた時、死んだと思ったからな。お別れしなきゃと思ったから、今は少し安心した。
いや、待て、ユミは生きてるのか?
【ユミちゃんは生きてるよ。ピンピンだ。元気に斬られそうな君を見てるしね。すごく動悸が上がってるけど】
そ、そうか……ユミも無事か。ならユミとの結婚も諦めないでいいらしいな。
【まぁ、君次第だけどね?】
君次第?
どういうことだ?
【まんまだよ。君次第さ。今後生きるも死ぬのも、ユミちゃんが生きるか死ぬかも、あとはまぁ……結婚できるかどうかもね】
そのまんま……?
俺って生きてるんだよな、今。
ユミもだけど。
【君たちは今、生きている。ただ、それは現在進行形の話。今は僕が人間世界の時間の数億、数兆、数京分の1にしているから止まっているわけではない。君の意識だけをこの何もない精神世界に連れてきているだけなんだ……。分かりやすく言うとまぁ、つまり……幽体離脱? みたいなものだよ】
幽体離脱?
時間が数億分の一?
時間でも操作してるのか?
意味が分からねぇ……助けてくれたんじゃないのか?
あの
【助けてない。解除したらあとは生きるかどうかは君次第ってことさ。あと、時間を操作できるとは言ってない。時の流れには神すらも抗えないからね】
そういうことなのか……でも、それじゃあ俺は死ぬしかないじゃないか。
死ぬのが遅れてるだけでよぉ。何のための呼び出したのか、見当がつかねえぞそれじゃあ。
【……それはまぁ、君にはもう少し頑張ってもらいたいからだよ】
俺に?
何をだよ。
【まぁ、なんでかをは言えないけど……とにかく生き延びたいだろ?】
生き延びたい。そりゃな。死ぬのは痛いし、銃弾であれだったなら剣ならもっとだ。それに、ユミだっている。俺が死んだら、あとはユミが絞殺されるだけだ。
【そうそう、それ! それを聞きたかったんだよぉ~~】
すると、急に声を変えて喜びをあらわにする。どうやら神様にも喜怒哀楽があるらしい。
でも、さ。
何ができるんだ、神様には。
孤児院で読んだ書籍には神様は世界に干渉できないって書いてたけど、それはお前にもあてはまるわけだろ?
【まぁね、神様だし】
……じゃあ、どうすんだよ。
【どうするか? そら、助言を託すのさ。君が守ると誓ってね】
まさに、目から鱗だった。
いや、猫に小判か。
神様も能力がなければ意味がない。さすがに、助言って馬鹿馬鹿しいだろ。
【いやぁ、それはそれは】
褒めてないわ。
【そうとも言うねぇ~~】
はぁ、頼むよ、まじでよぉ。
【とにかくさ、聞いてくれ。守るか守らないかは君次第、委ねるよ……えっとなぁ、それでぇ……目が覚めたらすぐに右にずれて窓を撃つんだ。窓をな。正確には窓の外にある黒々とした空に向かって】
窓に? なぜ?
【何故かは言わないけど、生きたいのならそうしてくれればいいさ。あとはなんとかなるだけだから】
でも、撃った後どうすればいいんだ?
【撃った後は最初に出会った男に連れて行ってもらえ。奴には仕事がある。その仕事を手伝い、その次に出会った女を仲間に入れろ】
今度は随分と具体的だな。
【おまけさ】
お人よしなのか、どっちなんだよ。
いやまぁ、本当かどうかは分からないけど。
【まぁ、後は頼んだ……そろそろ時間だ。目が覚めそうだから、また会える時に会おうではないか、君】
は、え?
俺が次に何かを言おうとした時には、その世界は消え去っていた。
おい、いきなり……なのか。
意識が遠のいていく。
どうやらここまでのよう……だな。
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