第10話「銃の紹介、そして家庭教師」
「よし、撃つぞ」
「うんっ」
カチャリとスライドを引き、弾を込める。前回同様、構えるが今回の相手は動く的だ。何度か撃っているし、この半年間での筋トレのおかげで銃の反動にも多少耐えれるようになっているので怖がらずにしっかりと構えた。
「っ————いくよ」
俺がそう呟くとやや後ろにスタンバっているユミがギュッと目を閉じながら身構えた。
ふぅ――と息を吐き、引き金を引く。
———————バンっ‼‼
乾いた単発音がその場に鳴り響き、スライドがグインっと手元に引かれながら排莢され、気づいたときにはボブリンが一匹その場に倒れていた。
「お、当たったな」
「……すごい」
何度も撃っているので感動がやや半減されているがやはり銃を撃つのはかなり楽しいな。とはいえ、ユミの方はまだ慣れていないのか撃つ度撃つ度に目をキラキラさせてくる。
早くユミの射撃訓練もやっていく必要があるかもしれない。それに、撃つ瞬間に目を閉じる癖はやめた方がいいし。
「よし……ゾクゾクやっていこうぜ」
そうして、周りのボブリンたちが何が何だか分からずその場でくるくるしているうちに俺たちは残りの銃も試し撃ちしていくことにした。
それぞれほぼ一発で残りの9匹のボブリンたちも倒すことができ、俺の肩が若干傷んでくると同時に試射が終わった。
最初に撃ったUSM9(ベレッタ92)(
グロック19(自動拳銃)
グロック17(自動拳銃)
トンプソン
M3グリース(短機関銃)
九九式短小銃(ボルトアクションライフル)
M1ガーランド(
M1カービン(
ワルサーp38(自動拳銃)
デザートイーグル(自動拳銃)の10種類。
ちなみに最後の一つに関しては手への負担が大きいのでなるべく撃たないようにしたいが————いずれ使わなければならないときも来るだろう。
とはいえ、この1年間の研究によってさらに分かったこともある。前回、俺にはまだ創造レベルが低いので高性能で高機能な銃は作れないと言ったのだが、あの頃は創造レベルが1だった。
そのため、俺に作れたのは拳銃、つまりはハンドガンとボルトアクション式の簡単な単発ライフルだけだった。あれから創造スキルを使いこむことでレベルも2に上がったのかサブマシンガンやセミオートの軍用小銃なら作れるようになっていた。
とはいえ、この異世界ではその程度でも十分制圧能力も破壊力もあるので今のところは大丈夫だがいずれは大きなモンスターにも対抗できるようにアサルトライフルも開発していきたいところだ。
「————よし、こいつらも一気に持って帰るか」
「全部入るかな……」
「収納?」
「うん、まだ初級だし……私属性違うから銃も入れたら無理そうかなって」
「あぁ——別に全部持たせる気はないから安心しろよ。担げる銃とボブリンの数匹は俺が持ってくよ」
「あ、ありがと……」
いくら収納魔法があるとは言っても、どれだけ入れても疲れないってわけではない。収納魔法を展開時は常に魔力を消費しているので多少の疲労感は感じるし、ユミの言う通り広さや重さも限界がある。
魔法の使えない俺としては彼女がいてくれると助かるがずっと頼るわけにもいかないため、俺は創造スキルで人力車を作り出してそこに乗っけることにした。
「すごぃ……やっぱり、カイトって頭いいね」
何気なく作り出すとユミは興味津々に木製の車輪の付いた人力車を見つめる。まぁ、俺の精神年齢は43だし……そう言われると少しだけむず痒い。
ただ、そっくりそのままいうわけにもいかないため——
「勉強はしてたからな」
「私も頑張らないとっ」
嘘ではない。大学はそれなりにいい大学に行っていたし、中退はしたがあの頃の知識は生きている。センター試験……いや、今は共通テストか。まぁ俺の時は前者でかなり頑張ったのが今でも鮮烈に覚えている。勉強は一生やりたくないね。
そんな俺を見ながら、彼女は頬を赤くしながら手をぎゅっと握り締めた。
「——あぁ、ユミならできるよ」
「えへへ……そう言われると嬉しいわね」
そうして俺たちは帰路に着いた。
銃の試射とボブリンたちの討伐を終えた俺たち二人は孤児院に戻り、ミリアさんに今日の成果を報告することにした。
一応、俺たちのパーティのリーダーはもちろん俺が主体のため俺になっているのだが、まだ成人もしていなく冒険者登録もしていないのでミリアさんが面倒を見てくれることになっている。それ以降はもちろん俺が主体になることになっている。
最初の方はどうやらミリアさんの引き継ぎもあって一緒に旅に出れないらしい。その間どうなっても面倒を見れないと言っていたが……俺の運の悪さは化け物級だから少し怖い。
とにかくだ。ユミを守るためにしっかりと強くなる必要がある。頑張らなくては。
「—————ありがとぉおおおおお‼‼‼」
ミリアさんの部屋に入り、今日の成果を報告し、さらにボブリンの群れをすべて討伐して持ち帰ってきたと言うと鼻息をぶしぶしと鳴らしながら駆け寄り、そう言われた。
あまりにも嬉しそうな表情とその迫力から思わず「うげっ」と声が出てしまった。
「……カイト」
「ん、あぁ、ユミちゃんごめんね!」
ユミがジト目をやや向けながら俺の袖を引っ張り、気づいたミリアさんがテヘペロっと舌を出して手を引いた。最近はよくジト目を向けられたり、袖を掴まれることが多いけど何があったのだろうか。
「でも——とにかくです! 本当にありがとう! 市場でボブリンのお肉を買うとかなりかさばっちゃうし、私シスターで収納魔法使えないから本当にうれしいわ! 他のシスターにも伝えておくわね!」
「あぁ……ありがとうございます」
「ん」
他のシスターさんには結構気味悪がられているため今更気にしないが、ミリアさんにこうも褒められるのは久方ぶりで少しだけ恥ずかしい気もする。
しかし、俺がそんな風に顔を赤くして照れていると————もちろん、ユミがムッとした顔で俺を睨んでいた。
まぁ、さすがに俺も鈍感ではない。
今日は一緒にお風呂でもどうかと誘ってみるのも悪くはない。
「——よしっ。そっかそっか、色々分かってきたみたいだし、ユミちゃんもかなり上達してきたからそろそろ家庭教師でも雇いましょうか!」
「か、家庭教師……ですか?」
「えぇ、そうよ!」
元気に言い放つミリアさん。
そんな言葉を聞いた俺たち二人はチラリとお互いを見つめる。この人は所謂天然だが、さすがに言っていることがてんやわんやすぎる。
お金がないのよねぇ……とここシスターはよく言っているのに、家庭教師なんて雇えるんだろうか、と疑問に思う。
そこで、俺は手をあげる。
「あの——」
「ん、どうしたの?」
「いや、その……ここの孤児院お金ないんじゃ……」
「え、お金? まぁ、ないわよ!」
はて、どういうことだろうか。疑問符が増える。
「——実はね、私。結構お金持っているのよ?」
ニヤリと笑みを浮かべ、人差し指を俺たちの方に向ける。
「だから、お金の事は良いの! 言うてもあと2年だしっ、そうすればカイトくんは成人になって晴れて冒険者になれるんだから……かかっても金貨1枚か2枚程度よ」
「いや、それって大金じゃ……」
「大丈夫だって! 私の全財産は金貨5枚なんだし!」
「ほぼ半分じゃないですか」
「いいからっ! ほら、とにかく今日はご飯を食べて寝なさい! 来週あたりには手配してみるわね!」
そう言われて、背中を押されるがままどたどたと部屋を出された俺たち。結局、何を言っても変わることがなさそうだったため、食堂に向かうことにする。
すると、途中。
「ねぇ、今日さ」
「ん、どうしたユミ?」
「カイトの部屋に行ってもいい?」
「俺の部屋? どうして?」
「いや……その、この前言っていた数学を勉強したいなって」
「数学……あぁ、そうか、分かった」
「うん、それだけ」
もじもじっと膝をくねらせるユミ。
そこで俺は確信した。どうやら、彼女は何かを狙っているらしい。
もしかして、やってもいいのか⁉
いやいや、落ち着け俺。さすがに精神年齢42歳が12歳の女子を狙うのはどうだろうか。最近はよくエロい目で見ちゃいがちだし……というか、この前盗んできたミリアさんのブラジャーどうしよう。
☆ステータス☆
名前:カイト・フォン・ツィンベルグ(旧姓:カイト・ストルベ・クロスべリア)
年齢:13歳
職業:孤児
経緯:転生
固有スキル:創造レベル2
スキル:博識(銃器のみ)、格闘術
魔法属性:無し
魔法レベル:0
名前:ユミ・フォン・ツィンベルグ
年齢:12歳
職業:孤児
経緯:貴族の捨て子
固有スキル:無詠唱レベル1
スキル:博識、潜伏、攻撃魔法+3、属性外魔法適性
魔法属性:光、火(光魔法は中級、火魔法もほぼ中級まで)
魔法レベル:2
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