第36話 シドVSアリス
「じゃあやるか」
「おう!」
―補助魔法デバフ 火耐性低下―
―補助魔法バフ 思考加速―
―結界魔法 全面障壁―
―幻影魔法 夢の国ネズミーランド―
―収納魔法 四、五次元ポケット―
―錬成魔法×付与魔法×変身魔法×呪術魔法 えげつないソード―
やっぱアリスは天才だ。一瞬でこんなに複数の魔法を使える奴なんていないだろう。てかそれとは別に魔法の名前一つ一つもヤバい。
とりあえず火耐性下げられたから炎を纏ったらすぐに丸焦げになるし、全方向に結界を張ってるからそう簡単にはダメージを与えられないし、多分幻なんだけど辺り一面ではファンシーなネズミたちがパレードを繰り広げていて完全にアリスを見失った。
アリスを探していると上から声が聞こえた。
「ここだぜ!シド!!!」
あ、自分で言っちゃうんだ。あのネズミたちの頑張りは?まあそんなことよりアリスが持っている剣がヤバい。収納魔法に溜め込んでいた無数の鉱物を組み合わせそこにいろんな魔法をかけ合わせて即興で作り上げたらしいが、出来がえぐい。これ魔王どころか邪神とかが持ってるレベルの剣じゃね?
さてどうしよう。大きな炎は使えない。火耐性が低下してる今じゃすぐに丸焦げになっちまう。
「シド!覚悟!」
だったら魔法に左右されない力を使うしかない。
―闘気―
深紅のオーラを全身に纏い俺はアリスの剣を避ける。
「それが闘気かよ!忌々しいぜ!」
アリスのヤバそうな剣が纏っていた禍々しいオーラがさらに膨れ上がった。
「やっぱお前はすげーよ、アリス」
「そうだぜ!シド!」
闘気が使えなきゃ一太刀目を避けることはできなかった。アリスの身体能力はその辺の女の子と変わらない。だから振り下ろす剣の速度なんて大したことない。だが剣を避けるだけじゃあの攻撃は避けられない。剣自体はほとんど飾りだ。纏っているオーラがヤバすぎる。そしてそれは広範囲に及ぶ。
「ぐっ!」
「オラオラ!」
正直勝てない。これは俺の完敗だ。アリスがここまで強くなっているとは。予想外だ。だからここで降参するのが正解だろう。だがそれはできない。セレスとの契約があるからじゃない。それはもうどうでもよくなっていた。
俺が退けない理由。それはアリスの目だ。
「オラオラオラオラ!!!」
絶対的に優勢な癖に諦めてない。俺を諦めてないんだ。アリスは心の底から俺が勝つと信じてる。信じ切ってる。妄信に近い。だが俺はこの妄信を裏切れない。
「どうした!シド!」
全く、楽しそうにしやがって。俺がどうやって自分を倒すのか楽しみにしてるって感じだ。本当に大変な女に惚れられたもんだ。好きになったもんだ。
アリスの期待を裏切るってことは俺にとって死よりも重い。今で勝てないなら限界を超えるだけだ。アリスのためなら限界なんて燃やし尽くしてやる。
シド
魔力総量 ∞
有効魔法範囲 0
属性 火
スキル
火耐性 強→弱
エクストラスキル
不死鳥の炎
”#地$%獄%の$炎#”
日輪の炎
闘気
闘炎気←NEW
闘気に炎をゆっくりとブレンドする。そして闘気は鮮やかに燃え上がっていく。
「す、すげぇ!やっぱシドはすげぇよ!」
「アリス安心しろ。今日も俺の勝ちだ」
俺はアリスの剣を叩き折る。
「へへへ、さすが俺のシドだぜ。降参だ」
アリスと勝負するときは昔から絶対に負けられなかった。アリスが俺の勝利を疑わないから。だから毎回死ぬ寸前まで丸焦げになっていたのを思い出した。
『Sクラス戦闘不能により―
「まだだ!」
きれいに試合が終わろうとしていたところで、空気の読めないセレスは声を張り上げながらが立ち上がる。そしてその手には魔石が握られていた。普通の魔石とは違って黒ずんだ不気味な色をしたものだ。
「お前だけには絶対に負けない!アリスは俺のものだ―!」
魔石は鈍い光を放ちセレスの身体に取り込まれていく。
「うがああああ!!!!」
セレスの身体は黒く染まっていき、角と羽根、そして尻尾が現れる。その姿は伝承の悪魔そのものだった。まあ見た目はいいとして、溢れ出す魔力が半端なかった。いや、魔力なのかこれ。
セ%”レ#ス
$力#量 -*/
#&魔!”範#’ +$-
属性 魔魔魔魔魔魔魔
スキル
&’&”#”)
()#
”&’(”
「ごごごごろすぅぅぅ!ジドぉぉぉぉ!!!」
セレスは目を真っ赤に染め、涎を垂れ流しながら叫んでいる。
「文字化けしてんじゃねーか。極端なんだよ」
セレスが放つ禍々しいオーラには見覚えがあった。見覚えというか俺が放った黒い炎と同じ類のものだ。
「シド!そいつやべえ!デバフを解いてバフをかける!回復も任せとけ!だから思う存分燃えろ!」
「ありがとな、アリス。やっぱ俺はお前がいないとダメみたいだ」
「、、、だ、だろ!シドは俺がいないとダメなんだ!絶対ダメなんだ!」
嬉しそうなアリスを見て少し落ち着いた。多分ここからは試合とかじゃない。あれは排除しなきゃいけないものだ。
「ごろしてやるぅぅぅ!!!」
―燃えろ 日輪の火―
―回復魔法 メガヒール―
アリスがいてくれるなら俺はただ燃えればいい。
「魔力の底がつくまで回復魔法かけまくってやるから安心しろ、シド!思いっきりやれ!」
「ああ、任せろ!」
「ごろじでやるぅぅぅ!!!」
「それはもう聞き飽きた。少し黙れよ」
「うがあああ!!!」
セレスはただの獣のようになって襲い掛かってくる。どう見ても正気じゃない。放っておけば対戦相手とか関係なく無差別に襲い掛かるだろう。そして俺にセレスを正気に戻すすべはない。
しょうがない。殺そう。
―無限炎上 炎炎炎炎―
アリスに回復を任せた俺は遠慮なく燃え上がり、ひたすらセレスを殴り続ける。
「おのれぇぇぇぇええ!!!!」
―悪魔の
「うるさい!」
―悪の
「さっさと死ね!」
―魔王の
「オラ!消し炭になれ!」
セレスは一生懸命何かをやろうとしていたが、やらせるとめんどくさそうだったのでひたすら炎の拳で殴りまくった。ひとしきり殴ったところでセレスただの炭になっていた。
「悪魔のやつ一つぐらいやりたかった」
それがセレスの最後の言葉だった。さらばセレス。
こうしてひどく後味の悪い対抗戦は終わりを告げた。
*
貴族を殺したんだから本来なら死刑だが、衆人環視の元で行われていたために俺は罪に問われなかった。異形の姿になったセレスはどう見ても悪魔にしか見えなかったからだ。
この事は大きな事件として調査が進められた。それによりしばらく学園は休校となった。
特にやることもなく寮に籠っていると、1人の客人が訪れた。
「セレスについて伝えておきたいことがある」
彼はセレスの側付きだった男ゴウズだ。
「俺を恨んでないのか?お前のご主人様の命を奪った男だぞ」
「あれを主人だと思ったことはない。護衛が役目だっただけだ。でも貴族とはああいうものだ。たいして気にしたこともなかった。だがここ最近は目に余る横暴さを見せだした。アリス殿に執心しだしてからだ。そしてちょうどその頃、セレスに会いに来た男がいる」
「その男がセレスを変えた元凶だと?」
「ああ。お前もわかるだろう。魔石に頼ったところでセレスにあんなことができるわけない」
「確かに。だが何で俺に伝えに来たんだ?」
「癪だからだ。確かに敬意など払ってはいなかったが、それでも俺の任務は護衛だった。仕事を全うできなかったのなら仇ぐらいは取ってやろうと思ってな。そしてお前ならそれができると思った」
「そうか。セレスを尋ねてきた男について教えてくれ」
「名前は分からない。ただ右目に傷を負った隻眼の男だった。そしてフードを被っていたがおそらく獣人だと思う」
「なんでだ?」
「隠していたが言葉の中に獣人訛りがあった」
「それでどうやってセレスに言い寄ったんだ?」
「学園に入学してからセレスは荒れていた。自分の元に置きたいと思ったアリスが一向に自分に興味を示さず、Dクラスのお前にばかり構っているのがプライドに触ったんだろう。そんな時に奴は現れた」
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